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鈴木実貴子ズが体現する、怒りと葛藤をないがしろにしない生き方

2024.11.28

鈴木実貴子ズ

#PR #MUSIC

怒るって大変だ。疲れる。だから気づくと、怒りの種があっても見て見ぬフリをする癖がついている。そうやって漫然と日々を過ごしていたときに、このままではいけない、怒るべきときに怒らなくてはと気づかせてくれたライブがあった。2023年6月21日の渋谷La.mama、それが筆者と鈴木実貴子ズの出会いだった。

小柄な身体を爆発させるようにアコギをかき鳴らし歌う鈴木実貴子と、横で一音一音を心臓の鼓動のように叩く“ズ”からなる、名古屋の2ピースバンド。それから1年と少し経ち、鈴木実貴子ズがメジャーデビューすると聞いて意外に思った。既にキャリアは12年、世の中の全てに怒っているように見えたし、誰かと一緒に何かをやることも容易ではないような、強い個の印象を受けていたからだ。しかし話を聞いてみるとその理由は腑に落ちた。

鈴木が持ち続けていたのは「承認されたい」という欲求だった。『FUJI ROCK FESTIVAL’22』出演以降、多少の承認を感じられたことで伸び伸びとライブを楽しめるようになったという鈴木。メジャーデビューはその延長線上にあった。

メジャーデビュー、そして配信シングル“違和感と窮屈”“暁”のリリースに際して、自身も同世代のバンドマンであり、2人と感覚を共有しているであろうライターの張江浩司が話を聞いた。認められた安心があっても、日々の不満や怒りはなくならない。感情に揺さぶられ、精一杯生きる姿には、怒れない私たちが忘れていた人間くささと生きることの本質があった。

バンドは憧れではなく、モヤモヤを吐き出す手段

ー鈴木実貴子ズは鈴木実貴子さんのソロ活動をきっかけに結成されたと思いますが、まずはそれぞれの音楽を始めるきっかけから伺いたいなと。

鈴木:高校のとき、隣の部屋からお兄ちゃんがかけてたSUM-41が聴こえてきて、かっこいいから自分でも弾いてみようと思って。お兄ちゃんのギターでカバーしようと思っても難しくて出来ないから、適当に弾いて自分の気持ちを乗せてみた、そしたらスッキリした。家庭環境のモヤモヤとかを吐き出せる場所がなかったから、ここで消化できるやんと気づいて。その時は人前に立つなんて考えてなかったし、頓服薬みたいな感じだった。

左からズ、鈴木実貴子

ーステージに憧れていたわけではなかったんですね。

鈴木:別世界すぎて、憧れもせんかった。自分がミュージシャンみたいなものになれるとは思ってなかったです。音楽をそこまで聴いてこなかったんで、詳しくもないし。

ー胸の内に溜まったものを解消するための手段が音楽だったという。

鈴木:完全にそうです。でも、今でもSUM-41は好きだし、音楽に対してかっこいいという気持ちは根底にずっとあったんだと思います。その時もバンド組みたいなとは思ってたけど。

ズ:友達がね。

鈴木:いなかったから。みんなでワイワイやるよりも、一人でポツポツやる方が向いてたんかなと思いますね。

鈴木実貴子ズ(すずきみきこず)
鈴木実貴子(Vo. / Gt.)とズ(高橋イサミ)(Dr.)からなる、名古屋を拠点に活動するアコギとドラムの2ピースロックバンド。2012年結成、インディーズでアルバム3枚、EP2枚をリリース。鈴木実貴子の心を揺さぶる圧倒的なボーカルと、ズのエモーショナルなドラムから生み出される、ザクっと心の奥底に突き刺さるうた。そして、ポップセンス溢れるメロディー。一度聴いたら、心を鷲掴みされる、次代の表現者。2022年には『FUJI ROCK FESTIVAL』の「ROOKIE A GO GO」に出演、『RISING SUN ROCK FESTIVAL』の「RISING STAR」に選出された。2021年より開催している自主企画イベント『心臓の騒音』では、竹原ピストル、ヒグチアイ、THA BLUE HERBなどと共演。

ーはじめて人前で演奏したのはいつですか?

鈴木:大学の軽音部のときです。なんかのカバーをやったんですけど、「なんでうちがカバーせないかんのや」みたいな気持ちになったんで、1回で辞めちゃいました。それからmixiでメンバー募集してバンド組んで、そこからは自分の曲を演奏する今と変わらん感じですね。

ー他人の曲を演奏しても気持ちよくなかったんですね。

鈴木:全然違った。だって正解があるから。すごい窮屈と思って、しんどかったです。

ズ:今でもそうだよね。誰かのカバーをしてみようとなっても、コードも歌詞も覚えられない。

鈴木:相当根本が一緒じゃないと共感できないし、共感できないと歌えないし。だから自分の曲しかできないんですよね。結局、自分に一番興味があるし、自分が一番好きなんやなって思います。

ー色々なインタビューでも鈴木さんの承認欲求の強さに言及されてますよね。

鈴木:バンド名からして承認欲求の塊ですからね。どっかに居場所がほしいし、認めてほしいし。そう思っとる自分のことは自分で認めてないから、永遠に孤独なループみたいな。

ーズさんが音楽をはじめるきっかけは?

ズ:ギターがすっごく上手な高校の後輩がいて。それを見て面白そうだなと思ってはじめました。だから最初はギターだったし、高3の文化祭はベースだったし、今はドラムだし、楽器にこだわりはないんですよね。僕が高校のときに聴いてたブランキー(BLANKEY JET CITY)とか、ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)、ナンバガ(NUMBER GIRL)とかは、あんまりメディアに出てなくて。特にナンバガは見た目も普通だったし、そういう人たちがかっこいい音楽をやっているのが自分の中ですごくしっくりきたというか。

ー「自分にも出来るかも」と、音楽を憧れよりも手段として捉えているのが鈴木さんとの共通点に思えます。

ズ:そうですね。きっかけになった後輩が今でも音楽やってるから、自分も続けているみたいなところもあります。

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