SPAC-静岡県舞台芸術センターが、宮城聰演出による『夢幻能「オセロー」(Mugen Noh Othello)』を6月7日(日)、8日(月)にイタリアで開催される『ヴェネツィア・ビエンナーレ』演劇部門のオープニング作品として上演する。
『ヴェネツィア・ビエンナーレ』は、1895年から始まった国際美術展。その演劇部⾨は2026年で第54回を迎え、俳優で芸術監督を務めるウィレム・デフォーのディレクションによる「Alter Native」をテーマに、6月7日(日)から6月21(日)まで開催される。
オープニング作品としての上映が決定した同作は、ウィリアム・シェイクスピア四大悲劇の一つである『オセロー』を、宮城が「夢幻能」の形式を用いて、殺された妻・デズデモーナの亡霊が演じる痛切な「愛の物語」へと昇華させている。比較文化史の大家・平川祐弘が「夢幻能」を、『オセロー』を題材に考察した論⽂に端を発し、宮城が平川に謡曲台本の執筆を依頼。2005年に東京国立博物館で初演され、2018年にはアメリカ・ニューヨークのジャパン・ソサエティと静岡芸術劇場で上演された。宮城演出の代名詞でもある「二人一役」の手法と、俳優たちによるパーカッションの生演奏が取り入れられた「鎮魂のための祝祭劇」となっている。

なおヴェネツィア公演以降は、8月1日(土)、2日(日)に韓国で開催される『居昌国際演劇祭』での上演も予定されている。
宮城聰 演出ノート(2018年)より
⿊い肌の傭兵将軍と、ヴェネツィア貴族の娘の、あまりにも純粋な恋。
愛情こそが肌の⾊と年齢と宗教の壁を超える・・・この完全すぎるカップルが、猜疑と嫉妬の修羅場へと転落してゆくさまを描く『オセロー』は、シェイクスピア四⼤悲劇のうちでも最もダイレクトな「愛の物語」です。
この美しくも残酷な戯曲を、平川祐弘は、オセローに殺された妻デズデモーナの霊が思い出を⽣き続けているという設定で、能の台本に書き直しました。それによって⽣まれたのは、⽬をそむけたくなる嫉妬を観客に突きつけてくる原作とは趣を⼀変させた幽⽞な世界です。不貞を疑われ、その誤解からオセローに⾸を絞められたデズデモーナが、しかし、その殺しの瞬間にこそ最もオセローと近づいていた、この男と⼥のパラドクス。その⼀瞬こそが⼈⽣で最も⼤切な時間となり、デズデモーナの霊はその⼀瞬に⽀えられて存在し続けているのです。
愛情というものをその破綻の側からとらえ返したとき⽴ちあらわれる希望。愛情への希望がおしなべて冷笑される時代に、こうして希望はよみがえり、⾒るものを襲うのです。
1990年以来われわれが⼀貫して探求してきた“⾔動分離”の⼿法、そして俳優たちによる強靭なパーカッション。⼈間が⾔葉と⾁体に引き裂かれる現代でこそ⽣まれ得たこの⽅法によって、「鎮魂のための祝祭」という演劇の淵源が、いま⽬の前にパックリと⼝を開けて皆様をお待ちします。宮城聰
photo by Kato Takashi
宮城聰 夢幻能『オセロー』

※『第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ』演劇部門のオープニング作品として上演。
会期:2026年6⽉7⽇(⽇)20:00・8⽇(⽉)19:00
会場:Teatro Piccolo Arsenale
演出:宮城聰
原作:ウィリアム・シェイクスピア(⼩⽥島雄志訳による)
謡曲台本:平川祐弘
⾳楽:棚川寛⼦
空間構成:⽥中友章|照明デザイン:⼤迫浩⼆|⾐裳デザイン:⾼橋佳代
⾳響デザイン:澤⽥百希乃|ヘアメイクデザイン:梶⽥キョウコ|美術:深沢襟
出演:SPAC-静岡県舞台芸術センター
美加理、阿部⼀徳、池⽥真紀⼦、⼤内⽶治、春⽇井⼀平、加藤幸夫、⽊内琴⼦、桜内結う、⼤道無⾨優也
寺内亜⽮⼦、ながいさやこ、布施安寿⾹*(韓国公演は榊原有美)、本多⿇紀、⼭本実幸、吉植荘⼀郎
助成:国際交流基⾦
製作:SPAC‒静岡県舞台芸術センター
▶ヴェネツィア公演以降の上演予定: 8 ⽉ 1 ⽇(⼟)、2 ⽇(⽇) 居昌国際演劇祭(韓国)
©︎SPAC photo by K.Miura
