東京・立川のPLAY! MUSEUMにて、『ONE PIECE ONLY』展という攻めた趣向の展覧会が開催されている。タイトルだけ聞くと、マンガやアニメで誰もがその名前を知る『ONE PIECE』の原画を展示し、名場面の再現フォトスポットがあったり、カフェで作品のコラボメニューを楽しんだりする展覧会を想像するかもしれない。でもこれが違うのである。
本展は、ゼロからマンガが生まれて読者に届くまでの間にある作業、仕事の数々を壮大なスケールで来場者に伝えるものだ。作家がネームを切って原稿を完成させて……そこまではイメージできても、多くの人にとって、その先にある「印刷」「製本」「週刊誌からのコミックス化」といったステージは未知に近いのではないだろうか。もちろん、作家によるネームや原画の実物展示も用意されており、見応えがある。でも会場には我々が想像するような「物語世界の解説」や「キャラごとの名シーン集」などは一切ない。作者・尾田栄一郎の紹介パネルすらない。ただ粛々と、いや、揚々と行われてゆくヒトの仕事があり、回り続ける印刷機がある。言うなれば、これは『ONE PIECE』という船に乗り込んだクルー(関係者一同)たちの航海記録なのだ。
けれどマンガ冊子のメイキングを見せるなら、それは別に何の作品でもよかったのではないか? 敢えてそうひねくれて考えてみた。いや、もし仮に自分が世界中の全マンガの版権を持っていたとしても、きっと『ONE PIECE』を選ぶ。というより、『ONE PIECE』でなければ始まらない。なぜならそれは、同作が世界中で5億冊以上売れている「世界一」のマンガであり、人間の熱い冒険そのものだからだ。
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