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アキ・カウリスマキが営む小さな映画館。共同経営者に聞く「作品の上映」を超えた価値

2024.12.13

#MOVIE

映画館とは何か? フィンランドの小さな町カルッキラにはじめて映画館ができるまでを追ったドキュメンタリー『キノ・ライカ 小さな町の映画館』では、そのような問いが投げかけられる。もちろん映画館とは、映画を上映する場所である。けれども、それ以上の可能性があるのではないか。そんなことを観る者に考えさせる作品なのだ。

鉄鋼の町カルッキラにできた「キノ・ライカ」は、フィンランドを代表する映画監督であるアキ・カウリスマキが仲間たちと作りあげた映画館だ。カウリスマキ作品を愛する人間なら誰しも、そのなかにたびたび映画館が登場したことを知っているだろう。庶民が愛する娯楽としての映画を、彼は今も信じている。カウリスマキにとって、世界的に映画産業が激変する現代に小さな映画館を作ることは、古き良き映画文化を次の世代に伝えていくことでもあるのだ。

しかしながら、町にとってみれば、頑固な映画作家の意地とは別のところで映画館は人々の交流の場になりうるものだ。展示やコンサートを催す場所になるかもしれないし、ひょっとしたら教育現場にだってなるかもしれない。ストリーミングサービスが一般化した時代だからこそ、映画館だけができることが際立ち始めているとも捉えられる。

今回話を聞かせてくれたのは、キノ・ライカをアキ・カウリスマキ監督と共同経営する作家のミカ・ラッティだ。その穏やかな口ぶりからは、自分たちの映画館に対して強い誇りを持っていることが窺えた。映画文化のもとに、人々は現代も集まってくるのだと。今こそ、独立系の映画館の可能性を再考したい。

国内の小さな映画が『007』を動員で上回る。フィンランド国内事情

ミカ・ラッティ:フィンランドのカルッキラにいます、ミカ・ラッティと申します。キノ・ライカの社長として、アキ・カウリスマキ監督と共同で経営しています。

―よろしくお願いします。『キノ・ライカ 小さな町の映画館』、とても興味深く拝見しました。今日は映画館が地域でどのような役割を果たしているかについてもお伺いしたいと思っていますが、まずはアキ・カウリスマキ監督について伺いたいです。

ラッティ:わかりました。

左から、ミカ・ラッティ、アキ・カウリスマキ / Photo:Tomi Wahlroos
ミカ・ラッティ(Mika Lätti)
カルッキラ在住の詩人、作家。アキ・カウリスマキ監督とともに映画館キノ・ライカの共同経営を行う。

―日本にもたくさん熱心なファンがいるのですが、アキ・カウリスマキ監督の存在、作品はフィンランド国内ではどう受け止められているのでしょうか?

ラッティ:アキの存在はフィンランドでもとても大きいです。国を代表する文化遺産と言ってもいいような存在になっていると思います。人気も高いですね。ただもちろん、すべての人に受けているというわけではありません。とくに初期の頃は「変な映画」という捉えられ方もされていました。今ではユーモアがあって面白いね、と多くの人に受け入れられていますけどね。

―ユホ・クオスマネン監督など注目監督も登場していますが、ラッティさんの目から見て、今のフィンランド映画は盛り上がっていると思いますか?

ラッティ:はい、フィンランドは独自性のある映画を多く作っている国だと思います。しかも質の高いものが増えていると感じますね。カウリスマキ監督やクオスマネン監督のように世界に進出している監督もいますけれども、国内の映画の状況もけっこういいんじゃないかなと私は思います。もちろんアキの映画もヒットしていますけど、それ以外のフィンランド映画も盛況ですね。キノ・ライカではクオスマネン監督の『コンパートメントNo.6』(2021年)が上映されたときに、観客動員数は『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)をはるかに上回ったんですよ。それぐらい多くの人が国内の映画に興味を持っています。

『コンパートメントNo.6』予告編

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