12月15日(金)より東京・渋谷のユーロスペースほか全国で公開される映画『枯れ葉』のオルタナティブポスターと、先行視聴した著名人からのコメントが解禁された。
2017年に引退宣言したアキ・カウリスマキ監督の最新作にして復帰作である『枯れ葉』は、労働者3部作『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』に連なる4作目として発表された。孤独を抱えながら生きる女と男が、人生で最初で最後のかけがえのないパートナーを見つけようとする心優しいラブストーリーが描かれている。
『TOVE/トーベ』でムーミンの作者トーベ・ヤンソンを演じたアルマ・ポウスティがヒロインのアンサ役、『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』で高い評価を得たユッシ・ヴァタネンがどこか憎めない男のホラッパ役を務めている。2人はカウリスマキの映画には初出演となる。また、カウリスマキ映画には欠かせない「名優犬」も登場する。
同作は『第76回カンヌ国際映画祭』の審査員賞を受賞、『2023年国際映画批評家連盟賞』の年間グランプリを獲得したほか、『第81回ゴールデングローブ賞』の非英語映画賞と主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされるなど、大きな注目を集めている。
この度、解禁されたオルタナティブポスターは、イラストレーターの木内達朗とデザイナーの大島依提亜によって手掛けられたもの。それぞれから制作意図が綴られたコメントも到着した。
最初に本作を観ている最中もうすでに、すっかり魅了された主人公アンサがなぜか木内さんの絵で脳内変換されていて、試写室出てすぐに、オルタナティブポスターを作りたい旨を配給の方にお伝えし、木内さんにもご快諾いただきました。そして、木内さんから上がってきた絵は、とうぜんながら自分のちっぽけな脳みそで考えていた想像の絵を遥かに凌駕していて、ポスターのデザイン中もドキドキしてました。
大島依提亜(デザイン)
大島さんから室内のシーン、犬もというヒントをいただきましたので、それならばやはり主人公の部屋しかないだろうと思い構成しました。カウリスマキ監督が大事にされている、家具や内装や服装などの色が最大限に生きるように照明と配色とを考えました。
木内達朗(イラスト)
合わせて、同作を先行視聴した著名人からのコメントも公開。各界から15名ものクリエイターたちが称賛のコメントを寄せている。
人間てなんてバカな生き物なんだろうという現実の中、それでもやっぱり人間て美しいよなあ、それは俺も含めなんだよなあ。と、カウリスマキ監督の作品を観たらいつも自己肯定感が爆上がりして活力がみなぎる。今回も。
足立 紳(脚本家・映画監督)
アキ・カウリスマキの新作を観ることは、現在の世界の映画界ではめったにできない、真の宝物です。カウリスマキの映画を見るという経験を逃すべきではありません。カウリスマキは詩人であり、独創的で、独特のユーモアと魅力を持った映画監督です。彼の作品は、小津安二郎、ロベール・ブレッソン、ルイス・ブニュエル、映画史に残る偉大な映画作家の作品と肩を並べることができるでしょう。
アミール・ナデリ(映画監督)
わたしたちの希望は枯葉のようにとても軽く、ささやかな日々の幸福は奪われやすい。
植本一子(写真家)
今も続く戦禍に胸をいため、自分には何ができるんだろうと考える。
だから隣の人と手を繋ぐ、小さな抵抗のために。
ユーモアと悲哀がたゆたう物語を運ぶ映像が、現代の社会を描きながら古い時代の絵画のように美しく懐かしいのは、恋する不器用な二人を通じて、誰のなかにもあるみじめさや挫折もひっくるめて人間を抱擁し肯定しようとするカウリスマキの愛ゆえなのだ。
小野正嗣(作家、フランス文学者)
こんなに優しい映画に巡り会ったのは何時以来だろう。世の中は悲惨だし救いようがないし、人々はみんな不器用で壊れていてどうしようもない。でも人々の心の中には力と優しさがたっぷりとあって、それは様々な音楽が饒舌に物語ってくれている。犬もいる。アンサがちょっとだけ笑う。だからきっと大丈夫。
小野瀬 雅生(クレイジーケンバンド ギタリスト)
生活困窮者を救って店をクビになった女とアルコール依存の男のもどかしい関係。電話番号を渡すが使われない。次に住所、最後にようやく名前を知るふたり。スーパーで買う安い皿、もてなしのための小さなボトル、町の花屋の出来合いのブーケ……。つましい生活の背後にはあの侵略戦がある。不器用で繊細な「距離感」の映画だ。そこかしこにカウリスマキの映画愛が溢れ出している。
鴻巣友季子(翻訳家/文芸評論家)
「働き、生きよう。どんなに孤独でも、いつか出会う同じ魂も、この暗闇を生きている。」
週末北欧部 chika
そんな余韻を感じた、フィンランドの愛と孤独の無表情ロマンス。
どうしようもなく痛く困難な人生で、愛がもたらす希望を最低限の会話と美しい音楽で描き切る。
そのミニマルさが観る人の感情が入り込む余地を作り出し、きっと一人ひとりに異なる余韻を残す。
生活に困窮しながらも、アンサとホラッパの日常には音楽や衣服といった文化が存在する。そんなささやかで豊かな事実に、何度もハッとさせられた。
岨手由貴子(映画監督)*フィガロジャポン 2024年1月号より抜粋
世界がおかしな方向に行こうとしてる時にカウリスマキは帰ってくる。
高橋ヨーコ(写真家)
あの独特の悲哀と、可笑しみを携え、溢れる映画愛をちりばめて。真実とは、喜びとは何なのかを問われながらも、心が軽やかになるのです。
この監督の作品のなかでだけ捉えられる人間の佇まいがある。
滝口悠生(小説家)
強い意志や意味のないまま、まるでただ死の反対側にあるだけのような生が続いてしまうとしても、続いていくことで人生は必ず美しくなってしまうものなのだ。
切れそうな糸を、それでもまっすぐ伸ばそうとする。
武田砂鉄(ライター)
その脆さと強さに引き込まれた。
ふとした所で出逢い、不運にもすれ違い、なぜか惹かれ合う2人。
中田クルミ(俳優)
描かれていること自体はとてもシンプルで無駄なものが一つもない。独特な空気と流れる時間、そして印象的な色彩描写が脳と心をじんわりと温めてくれる。
映画という芸術の愛おしい部分を再確認させてくれる至福の81分。
連日ラジオから淡々と流れるウクライナの絶望的なニュースを背景に、運に恵まれない2人の話が鮮やかな色彩と美しい画面構成で展開します。最後の小さな希望には思わず感動しました。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
滑りを繰り返す曇天の現代。
甫木元 空(映画監督、ミュージシャン)
どこか乗り物は全て宙に浮いているようで、地に足がつかない浮遊した社会をそこに見る。
労働と移動を繰り返す毎日に、音楽や映画は一瞬の足止めを与える。
「また明日」
また明日がやってくる安堵と共に、どんな闇にも木漏れ日が差す事を
枯れ葉は知らせてくれる。
何よりアキ・カウリスマキがまた映画を撮ってくれたことが只々嬉しい。
たっぷりのユーモアとわずかな表情の機微の積み重ねで、最大級の「シネマ」へ昇華された世界。ポジティブなオーラに包まれた全てのショットは、どの瞬間も美しく、直球で心に沁みる。カウリスマキの老練な「真の花」によって、私の心に花が開いた。世の中は少しも良くならないが、前向きに生きるしかない。
山村浩二(アニメーション作家)
映画『枯れ葉』
監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ
配給:ユーロスペース
2023年12月15日(金) ユーロスペースほか全国ロードショー
公式サイト:https://kareha-movie.com/
<ストーリー>
北欧の街ヘルシンキ。アンサは理不尽な理由から仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらもどうにか工事現場で働いている。ある夜、ふたりはカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれ合う。だが、不運な偶然と現実の過酷さが、彼らをささやかな幸福から遠ざける。果たしてふたりは、無事に再会を果たし想いを通じ合わせることができるのだろうか?