今年で開催3年目を迎えた『J-WAVE presents INSPIRE TOKYO 2024 -Best Music & Market- supported by TimeTree』は、都市型カルチャーフェスとしてユニークな、チャーミングな存在だ。インバウンドでにぎわう原宿と再開発で活気づく渋谷の真ん中、代々木公園イベント広場とケヤキ並木に、雑貨、ファッション、アートなど多様なショップが集結し、世界各国のグルメを揃えたキッチンカーがずらりと並ぶ。野外ステージではフリーライブが開催され、隣の国立代々木競技場第一体育館では「LIVE FIELD」と題して、J-WAVE一押しのアーティストが熱いパフォーマンスを繰り広げる。7月13〜15日の3日間にわたって開催された、フリーダムな活気に満ちたフェスの模様を、興奮がさめないうちに書き残しておこう。
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都市型で気軽に参加できるカルチャーフェス
『INSPIRE TOKYO』のチャームポイントその1は、なんたって立地と環境の良さだ。原宿からも渋谷からも歩いてすぐ、広大な緑に囲まれた代々木公園の一角に出現した「MARKET FIELD」は、縁日やフリマを思わせるにぎやかさで、そぞろ歩きしているだけで気分がいい。子供連れの親子、年配のカップル、外国人観光客等、たまたま通りがかったであろう人たちが、田名網敬一描き下ろし絵柄の無料配布うちわをパタパタ扇ぎながら、フリーライブを観たり、気に入った店を覗いたりしている姿も楽しい。フェス=若者向けというだけではない、出入り自由の開かれた雰囲気が『INSPIRE TOKYO』のチャームポイントだ。
もちろん音楽のクオリティの高さと、パフォーマンスの充実度は折り紙付きだ。初日の7月13日、「LIVE FIELD」にラインナップされたアーティストは、シンガーソングライター、ダンサー、俳優としても活躍するNOA、「メインダンサー+バックボーカル」のスタイルで絶大な人気を集める超特急、2年連続出演となる4人組ボーイズグループのOWV、女性アイドルグループの王道を歩く日向坂46、韓国からやってきたボーイズグループの新星、BOYNEXTDOORの5組。それぞれのファンの声援で盛り上がりつつ、初見のグループに対しても温かい拍手が贈られたと聞く。そんなピースフルな連帯感も、『INSPIRE TOKYO』の大切なチャームポイントの一つだ。
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クラフトに雑貨、アートに触れられるマーケットエリア
渋谷側からケヤキ並木の入口を入ってすぐ、まず現れるのが「TAKUMI BORDERLESS –Outdoor KOGEI-」と題したエリア。「アウトドア×匠の技」をテーマに、全国から集まったクラフトマンたちのショールームだ。キャンプやアウトドアと日本の伝統工芸を結びつけるアイディアが面白い。食器、フライパン、包丁など、料理好きにアピールするアイテムも豊富で、個人的にもとても楽しいエリアだった。
その先に登場するのは、雑貨とアートのエリア。インテリア、アパレル、アクセサリーや輸入雑貨など、オーガニックな質感と無国籍情緒漂うショップが軒を連ね、フリマを覗くような気分で見ているだけでも楽しい。可愛い刺繡の入った猫のハンカチが目に留まる。その先には、美大生などアーティストの卵たちが出店したアートエリアがあり、子供たちが絵を描いたり布を染めたり、親子参加型のワークショップもある。すぐ隣のキッチンカーエリアでは、アイスやドリンク、かき氷が大人気だ。関東の梅雨明けはこの数日後のことだったが、気分はもう夏だ。
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ライブとマーケットを行き来しながら気ままに楽しめる安心感はイマドキ
2日目の「LIVE FIELD」も、それぞれ単独でもこの会場を満員にできるアーティストが大集結。先陣を切った羊文学が、ダークなロマンチシズム溢れるオルタナロックをぶちかます。Nulbarichが、恐ろしく緻密で知的なダンスミュージックで頭と体を刺激する。水曜日のカンパネラは詩羽の天真爛漫な魅力全開、強力な重低音でフロアを踊らせる。Chilli Beans.はとにかくクールでワイルド、ファンキーなバンドサウンドで突っ走る。三浦大知はベテランの貫禄たっぷりに、しかしパフォーマンスは新人並みにフレッシュに、切れ味鋭いダンスと圧巻のボーカルで会場を沸かせる。
そして2日目のステージの最後は、前身の『J-WAVE LIVE』を含めるとこのフェスには8回目の出演となる今市隆二が、1日中フェスを楽しんだファンに感謝の思いを込めて、全力のパフォーマンスを届けた。
全部で6時間の長丁場だが、疲れたら外に出て「MARKET FIELD」をぶらついて、また戻ってきたっていい。気ままに楽しめる安心感が、『INSPIRE TOKYO』にはある。
その「MARKET FIELD」の一番奥、都道413号線にぶつかる手前に展開されていたのが、その名も「TOKYO CURRY CULTURE」エリア。知る人ぞ知る人気カレー店とオフィシャルショップがずらりと軒を連ね、スパイシーな香りに誘われてつい立ち寄ってしまう魅惑のエリアだ。さらに隣接する「世界14カ国のフードが楽しめるエリア」も要注意で、食べ歩き大好き人間を惹きつける魅力がすごい。中華やシンガポール、イタリアンやイギリスを経て、ブラジル、キューバを回って、ベルギー、ウクライナ、スウェーデン、デンマーク料理もある。ランチやディナータイムに合わせて、時間に余裕を持って来ればよかったが、ライブも観たいのでやむなくスルー。来年もここで開催されるなら、必ず来よう。
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3日目のライブ、BE:FIRSTのリクエストで呼ばれたのはUVERworld
初日と2日目、「LIVE FIELD」でのライブは5、6組が出演するフェス形式だったが、最終日は2つのグループのみがエントリーされた対バン形式。それもUVERworldとBE:FIRSTという、なんとも挑戦的でスリリングな組み合わせで、最初から最後までしっかり観た。会場内がどんな空気になるのか? がまったく読めなかったが、結論から言うとこれが大正解。先に出たUVERworldが、TAKUYA∞の鬼気迫るパフォーマンスを中心に、70分にわたってハイテンションが途切れない圧巻のパフォーマンスを見せる。BE:FIRSTの“Mainstream”のカバーで観客を驚かせ、さらにBE:FIRSTを呼び込んで全員でぶち上がるシーンは、もはや音楽を超えた1つの事件。すさまじい歓声と爆音が今も耳に残って離れない。
そもそもUVERworldを呼んだのはBE:FIRST側のリクエストで、特にUVERworldファンを公言しているSHUNTOの熱い思いから実現したと聞く。憧れのバンドに肩を並べた喜びと、さらなる成長への意欲を込めたBE:FIRSTのパフォーマンスは、まさに全身全霊という言葉がよく似合う。アスリートのような鋭い動き、華麗な群舞、7人それぞれの確かな歌唱力。彼らを初めて観るUVERworldファンをも巻き込んだ、全力疾走の70分間に盛大な拍手が鳴りやまない。最後に2つのグループが記念写真に収まる、和気あいあいの空気も忘れがたい。