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映画監督の空音央は、友人との関係が変化した過去の経験から『HAPPYEND』を構想した

2025.6.6

#MOVIE

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

5月14日は、「肌蹴る光線」主催の井戸沼紀美さんからの紹介で、映像作家 / 映画監督の空音央さんが登場。『HAPPYEND』を作るきっかけになったエピソードや、次回作のアイデアなどについて伺いました。

映画『HAPPYEND』にはコメディ要素もたくさん盛り込んだ

Celeina(MC):空さんといえば、昨年公開の映画『HAPPYEND』が日本はもちろん、海外でも話題になっています。まず、あらすじを紹介しましょう。幼馴染のユウタとコウは高校卒業間近のある晩、こっそり忍び込んだ学校でとんでもないいたずらを仕掛けます。翌日いたずらを発見した校長は、学校に生徒を四六時中監視するAIシステムを導入。この出来事をきっかけに、コウはそれまで蓄積していた、自身のアイデンティティと社会に対する違和感について深く考えるように。その一方で、今までと変わらず仲間と楽しいことだけをしていたいユウタとの関係は、次第にぎくしゃくしはじめ……という作品です。

タカノ(MC):いやあ半端なかったです。めちゃめちゃ面白かったよね。

Celeina:色々な切り口のテーマが描かれていましたよね。

タカノ:震災や人種の問題など、色々ヘビーなテーマも盛り込まれているんですけど、軽やかに見られる部分もありましたね。

Celeina:ギャグみたいな要素も散りばめられていたりとか。

空:そうですね。コメディ要素をたくさん盛り込んだつもりです。日本って映画を観ながら笑わないなと思っていて。

Celeina:劇場でも静かですよね。

空:そうなんです。『HAPPYEND』を観終わった方から、「笑いをこらえるのが大変でした」と言われて、いやちゃんと笑ってほしいよと思ったんです。声を出していいですよ、って。

Celeina:応援上映をしたいですね(笑)。

空:韓国とかインドネシアの方はゲラゲラ笑っていました。

Celeina:実際に現地の劇場に足を運んで、各国の観客の反応も見ていたんですね。

空:はい、ちょくちょく見ていました。

政治観の違いから友達と意見がズレていく、自身の体験が創作の種になった

タカノ:『HAPPYEND』は、構想に何年くらいかけたんですか?

空:公開した段階では7年ですかね。初長編作品だったので、無名の監督が何かを作るとなると、信用がないから時間がかかるんです。だから『HAPPYEND』の第1稿目を書いた後に、短編を2本くらい作りました。

Celeina:空さんが脚本も全部書かれているとのことですが、アイディアの種はどんなところから来ているんでしょうか?

空:自分の体験からですね。自分の気持ちに正直にいる、ということを大切にしました。小中高の友人達とはすごく仲がいいんですが、大学時代に政治のことをより考えるようになってから、大学の友人達とだんだん意見が合わなくなってくるという経験をしたんです。僕にとって友達は本当に大事な存在なんですが、振り返ってみると、地盤のように固かった友情が、政治観の違いでだんだんズレていくのが結構悲しくて。自分の人生の中で、無意識レベルでも意識レベルでも、友情関係に社会が介入してくる、ということがたくさんあったので、そういう経験をベースにしています。

Celeina:なるほど。『HAPPYEND』は高校生が主人公なわけですけど、学校って社会と繋がっているようで繋がっていない部分があったなと思い出しました。当時わかり合えたと思っていた友達たちが私もいたし、映画を観た人みんなにいたと思うんですけど、今振り返ると「あの時の友達たちはどこに行っちゃったんだろう」と思ったりしました。

空:そうですよね。僕の場合は、大人になってから出会う友達は、自分と意見が似ている人であることが多いんです。でも、子供の頃って社会の立場に関係なく同じクラスで過ごすわけですから、仲がいい悪いはあるにしろ、それなりに政治観を超えて仲良くなれたりすると思います。そういうのも素晴らしいけれども、特権的な立場の人の方が政治観の違いを無視しやすかったりするんです。両親が貧しかったり、レイシズムを経験したりした人は否応なく社会の圧力を感じるわけなので。そういった立場の違いが友情に亀裂を生むこともあり得ると思います。

タカノ:10代特有の「何でもできる気がする、でも何もできない気もする」という感覚も表現されていて、めっちゃいいなと思いました。あと未来の話っぽいというか、現実とは違う世界線を思わせるSFチックなところもあるじゃないですか。それは最初から構想としてあったんですか?

空:最初からありましたね。1923年に発生した関東大震災を契機に虐殺が起こったんですけど、その歴史を日本は反省しているだろうか、みたいなところから脚本を考え始めました。また同じタイプの地震が来るとも言われていますけど、もし本当に来てしまったら、災害による被害だけでなく、レイシズムによる差別は広まらないだろうかと考えるようになって。その結果、パラレルワールドと言ってもいいんですが、思考実験としてウン10年後の世界という設定にして、現在を反映した未来の話みたいな感じで書いてみました。大体SFとか未来の話って現在の話なんですよね。

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