この10月、東京・代官山を舞台に『DEFOAMAT』という新たな都市型フェスが産声を上げる。代官山の6か所のべニューで開催されるこのフェスのステートメントには、こんな言葉が掲げられている――「アジアの文化的連帯の中で、新しい社会のありかたを模索する -alternative asian life-」。ここに宣言されているように、『DEFOAMAT』はアジアのコンテンポラリーカルチャーを通じ、来るべき未来像を考えようという意欲的なフェスだ。
韓国のLEENALCHI、タイのYONLAPA、日本の民謡クルセイダーズなどのライブやDJに加え、世界最大級の現代アートの祭典『ドクメンタ』でアジア人として初めて芸術監督を務めたルアンルパやSIDE COREなどアートコレクティブも参加する『DEFOAMAT』がめざす「アジアの文化的連帯」とはどのようなものなのだろうか。同フェス実行委員会の発言を引用しながら、このフェスの魅力に迫ってみたい。
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世界が注目する東南アジアや東アジアのインディーカルチャー
アジアのコンテンポラリーカルチャー / ポップカルチャーを取り巻く状況はここ10年で激変した。BTSがビルボードのアルバムチャートでアジア圏出身者としては初の1位を獲得したのは2018年。2023年にはBLACKPINKが『Coachella』のヘッドライナーを飾り、TWICEは北南米やヨーロッパを回る大規模なスタジアムツアーを成功させた。K-POPのファンダムが世界規模のものまで拡張していることは、あえてここで強調するまでもないだろう。
その一方で、アジア各地のインディーアーティストも各国で活発な活動を展開している。台湾の落日飛車Sunset RollercoasterやElephant Gym、韓国のSE SO NEON(セソニョン)などは国外でのツアーを積極的に行っており、欧米の大型フェスでアジアからやってきたインディーアーティストがラインナップされるのは当たり前のことになった。かつてアジア出身のアーティストが欧米のマーケットに進出する際、「エスニック=民族的」な領域に押し込められることが多かったが、文化のグローバル化が進む現代、アジアやアフリカの音楽も欧米のものと同じ「音楽のひとつ」として扱われるようになってきたのだ。
アジアインディーに対する世界的な注目の背景には、東南アジアや東アジアの経済発展による余暇の拡大に加え、2000年代以降、国を超えた関係者間の地道な交流が重ねられてきたこと、それを経てアンダーグラウンドなネットワークが形成されてきたことがある。「アジアンカルチャー」がトレンドになる遥か前からアジア各地の関係者はオンライン / オフラインで繋がり、ボーダレスな「シーン」を形成してきたのだ。そこで行われてきたのは「アジア」という大風呂敷を広げた交流ではなく、あくまでも人と人のシンプルなコミュニケーションである。そうした長年の交流が浮かび上がってくる点もまた『DEFOAMAT』のポイントのひとつだ。
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アジアシーンの今を見渡すラインナップ
『DEFOAMAT』のラインナップを駆け足でご紹介しよう。まず注目したいのが韓国のLEENALCHI(イナルチ)である。朝鮮半島の口承文芸 / 民俗芸能であるパンソリをモチーフとしながら、ニューウェイブ / ディスコ的なバンドアレンジを聴かせる、韓国インディーのトップランナーだ。彼らは昨年も来日公演を行い、大きな話題を集めたが、待望の再来日となる。
チェンマイ出身のYONLAPA(ヨンラパ)、バンコクのSoft Pine(ソフトパイン)という、近年活況を呈するタイのインディーシーンを代表する2バンドも出演。彼らはたびたび来日公演を行なっており、日本にも熱心なファンが存在する。洗練されたインディーポップからはタイインディーシーンの充実ぶりも伝わるはずだ。
日本勢もなかなか豪華な顔ぶれだ。いまや欧米でも高い人気を誇る民謡クルセイダーズ、台湾や中国、韓国でもライブを重ねる寺尾紗穂、バリ島の伝統音楽や影絵をモチーフにしながら他に類を見ない土着音楽を奏でる滞空時間、台湾やシンガポールのフェスも賑わせる沖縄のHOME、注目の若手レゲエバンドであるASOUND、湘南育ちのシンガーソングライターのさらさ、そしてアジア各地のアーティストと交流を重ねるVIDEOTAPEMUSIC。まさにアジアの「オルタナティブ」を体現する顔ぶれといえるだろう。
また、韓国と日本のインディーシーンの架け橋となる活動を続けてきたDJ YESYESことパク・ダハムも出演する。韓国インディーの伝説的ドキュメンタリー映画『Party 51』(2013年)でも重要人物のひとりとして描かれ、近年はDJとしても活動の幅を広げている彼の破天荒なプレイは必見だ。
そのパク・ダハムとも交流の深いSOI48率いるOMK、バンコクに長年住んだ経験を持つMOOLA、そして筆者もDJとして出演させていただく。いずれも何らかの形でアジア各地のシーンと関わってきた人物ばかりである。
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「考える」ことと「楽しむ」ことが一体化したフェス
『DEFOAMAT』実行委員会の母体となるCCCアートラボでは、渋谷を舞台にインスタレーションとトークセッション、DJパーティーを融合した展示企画『Might Be Classics』を開催し、東京・渋谷の「これまで」と「これから」について考えてきた。『DEFOAMAT』にもそうした流れが持ち込まれている。今回は、ドイツの芸術祭『ドクメンタ』でアジア人として初めて芸術監督を務めたインドネシアのルアンルパ、エコ・ヌグロホ、日本のSIDE COREなどアートコレクティブによる展示のほか、ウスビ・サコ(京都精華大学教授)らによるトークセッションも行われる。音楽を楽しむだけでなく、アートやトークを通じて「考えるきっかけ」も与えてくれるはずだ。
なお、『DEFOAMAT』というイベントタイトルは「Daikanyama Edutainment Festival Of Art, Music And Technology」の略称でもあるのだという。DEFOAMAT実行委員会の木村直大(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社アートラボ事業本部)はこう話す。
木村:フェスの根本的な性格としてはEdutainmentです。現代アートは社会に問いを投げかけるという役割を持っていますが、音楽を楽しみながらこういった作品に触れてもらうことで、我々が生きる社会について考えるきっかけになったり、トークセッションがその問題意識についてのヒントを得られる場になるといいと思っています。近年、アジアのコンテンポラリーなカルチャーが欧米社会の中でトレンドになっていますが、こういったカルチャーに象徴されるオルタナティブなアジア像が新しい社会のあり方のヒントのひとつになるはずです。また、そういったことを模索するムードというものを作りたいと思っています。
CCCアートラボが開催してきた『Might Be Classics』が再開発の進む渋谷の地を舞台とすること自体に意味を見い出してきたように、『DEFOAMAT』もまた、代官山という場所で行われることの意義が見つめられている。木村はこう話す。
木村:代官山は渋谷という大都会に隣接しながら、低層の建物が中心の街並みで抜けもよく、ヒルサイドテラスや蔦屋書店などの文化的施設、UNITや晴れたら空に豆まいてなどのライブハウスがあり、カルチャー色の強いショップや飲食店も点在しています。代官山であればストリートカルチャーからファインアートまでのグラデーションが表現できるのではないかと考えていました。代官山の街全体を使ったカルチャーイベントが構想の原点にあります。
ただし、『DEFOAMAT』は決して堅苦しいイベントではない。秋の一日、各地からやってきたアーティストの表現を気軽に楽しみ、その場を共有する人々と語り合い、理想とする社会のあり方を共に考える。そんな有意義な時間を過ごすことができるのではないだろうか。
『DEFOAMAT』
日時|2024年10月19日(土)、20日(日)OPEN 14:00、START 15:00
会場|以下4会場にて開催。タイムスケジュール等、詳細は決定次第公式サイト等で告知します。
代官山T-SITE:東京都渋谷区猿楽町16-15
フォレストゲート代官山:東京都渋谷区代官山町20
代官山UNIT/SALOON:東京都渋谷区恵比寿西1-34-17 ZaHOUSE
晴れたら空に豆まいて:東京都渋谷区代官山町20-20,B2
参加アート作家
ruangrupa
SIDE CORE
エコ・ヌグロホ(ART FRONT GALLERY連携プログラム)
出演ミュージシャン(19日)
LEENALCHI
YONLAPA
Soft Pine
寺尾紗穂
VIDEOTAPEMUSIC
滞空時間 TAIKUH JIKANG
さらさ
OMK(Soi48,MMM,YOUNG-G)
HOME
民謡クルセイダーズ
DJ YESYES
大石始
MOOLA
ASOUND
映画上映(19日)「Bring Minyo Back!」
日時|2024年10月19日(土)、20日(日)
音楽プログラム時間|OPEN14:00、START 15:00
その他のプログラム時間|会場の営業時間に準拠
チケット販売(音楽/映画プログラムのみ有料)|7,500円
主催・企画制作・運営|DEFOAMAT実行委員会
協賛|東急不動産株式会社
制作協力|microAction LLC.
お問い合わせ|DEFOAMAT実行委員会 info@defoamat.com
※音楽ライブは10月19日(土)のみの開催です。
※今回イープラスで販売するチケットの対象は音楽/映画プログラムのみであり、その他アート展示、トークイベント、マーケット等の催しは無料でご入場いただけます。
イープラス|https://eplus.jp/defoamat/
公式サイト|https://www.defoamat.com
公式Instagram|https://www.instagram.com/defoamat/