『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が10月4日(金)より劇場公開中だ。『ムーンライト』『関心領域』などアカデミー賞受賞作品を世に送り出す製作会社A24史上、最大の予算が投じられた本作は、2週にわたり全米1位の興行成績を記録するなど大ヒットを遂げている。
映画の舞台は、連邦政府から19の州が離脱したという近未来のアメリカ。国内で大規模な分断が進み、カリフォルニア州とテキサス州が同盟した西部勢力と政府軍による内戦が勃発していた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストチームは、ニューヨークから約1300km、戦場と化した道を走り、大統領がホワイトハウスに立てこもる首都・ワシントンDCへと向かう。
設定だけを聞くと荒唐無稽に思われるかもしれないが、実際に観ればこそ「起こりうる未来を予見している」要素は多い。何より、小難しさはない「体感型」の作品であることも、強く推しておきたい。
※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
予備知識なしで体感できる内戦の恐怖
タイトルの「シビル・ウォー(Civil War)」は「内戦」の意味。「もしもアメリカで新たに内戦が起きたらどうなるのか?」という、一種の「IF」を描く戦争映画だ。
その触れ込みから予備知識が必要だと思う方もいるかもしれないが、心配は不要。あらすじは「4人のジャーナリスたちが大統領への単独取材のためにワシントンD.C.へと向かう」とシンプルで、暴力的または不条理な状況でのサスペンスが展開する、わかりやすい内容なのだから。アーティスティックな印象も強いA24の作品の中では、比較的観る人を選ばない内容だろう。
注意点をあげるとすれば、「銃砲による戦闘と市民に対する暴力の描写がみられる」という理由でPG12指定がされていることだ。露悪的な残酷描写はごく少ないが、テレビのニュース映像で観ているかのような「銃で撃たれた人間がただ倒れる」淡白さがむしろリアルに思えるし、鼓膜をつんざくような銃撃の「音」もまた恐ろしいので、ある程度の覚悟は必要だろう。
昨今の大作映画が2時間超え、あるいはそれ以上の上映時間になりがちな中で、109分というタイトな尺に収まっているのも美点だ。ロードムービーという「型」のあるジャンルらしさとエンタメ性を貫きながら、悪夢的な描写にはいっさいの遠慮ナシ、というのは同じくアレックス・ガーランド監督が手がけたSF映画『アナイアレイション -全滅領域-』(2018年)や、脚本を執筆したゾンビ映画『28日後…』(2002年)にも通じている。
総じて、「映画館で観るべき映画」であることは間違いない。スケール感のある画、その場にいるかのようなカメラワーク、そして「逃れられない状況」の恐ろしさなどは、他の観客と一緒にスクリーンの前にいてこそ、真の体感があるはずだ。