メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

青葉市子が八重山でのライブにこだわった理由。歌がうまれた波照間との出会い

2026.8.26

#MUSIC

2026年1月17日(土)、八重山諸島の中心都市・石垣島にて開催された青葉市子の単独公演『Luminescent Creatures World Tour in ISHIGAKI』。

青葉は2020年以降、日本最南端の有人島・波照間島を定期的に訪れ、自然と共にある暮らしに触れる中で、音楽だけでなく価値観そのものに大きな影響を受けてきた。最新アルバム『Luminescent Creatures』には、島での体験が色濃く刻まれている。

ストリングス編成で開催された今回の石垣公演に、彼女はどのような思いを抱いていたのか。八重山との出会い、楽曲制作、そして「里帰り」――公演前後、そしてそれまでの期間に流れていた青葉市子と八重山との時間を、まっすぐなまなざしで見つめてきた橋本倫史が綴った。

青葉市子、八重山との出会い

「この道、好きなんです」。後部座席に座る市子さんが、ふとつぶやいた。南ぬ島石垣空港を出発して、10分が経とうとしていた頃のことだった。

青葉:石垣に着くと、タクシーに乗ることが多いんですよね。私が乗るタクシーの運転手さんは、窓を全開に開けて、おっきな音でラジオを流してることが多くて。風がばさばさ吹き込んでくるなか、私が抱えてる三線を見て、「お姉ちゃん、三線引くの!」とかって話しかけてくれるんですよね。そこから「こんな歌、知ってる?」って、古い歌を歌ってくれたり、島の昔の話を聞かせてくれたり。バスに乗れば550円で離島ターミナルまで行けるんですけど、そうやって話を聞かせてもらうのが好きで、タクシーに乗ることが多いんです。

車窓の向こうにはサトウキビ畑が広がっている。ところどころに防風林があって、木陰の中を車は進んでゆく。そこに防風林として植えられている樹木が「ヤラブ」だと教えてくれたのも、タクシーの運転手さんだった。

「この木は硬くて、火をつけても燃えないし、まっすぐ伸びないんですよ」。いつだか乗り込んだタクシーで、運転手さんがそう語り出したことがあった。「くねくね曲がって、厄介な木です。枝が道路にはみ出てくるから、大型の車がミラーぶつけたりするんです。しかもね、熟れた実がぽたぽた落ちて、そこに虫がたかって、見栄えも悪くてね。それに、防風林があったところで、台風がきたら、とても車なんて走れませんよ」と。

石垣島を含む八重山地方は、台風の通り道になっている。2015年の台風15号では、風速71.0メートルの風が吹き荒れ、2万戸以上に停電の被害が生じた。自然の猛威は、時に人間を圧倒する。そんな自然の力が、市子さんを八重山に引き込んだのだろうか。

2015年

きっかけは、『cocoon』という作品だった。

ひめゆり学徒隊に着想を得て、漫画家の今日マチ子さんが描いた同作は、2013年にマームとジプシーによって舞台化された。市子さんは2013年の上演を観た上で、2015年の再演時には俳優として『cocoon』に出演している。

青葉:私にとっては、『cocoon』の印象があまりにも強かったから――もちろん好きな場所もたくさんあるんですけど――沖縄本島にいると戦争の記憶が強く感じられて、重く、苦しい気持ちになってしまうところがあったんです。でも、八重山に来てみたら、ちょっと頭が開いた感じになったんですね。もちろん八重山にも戦争の記憶はあるんですけど、人間の歴史以上に、自然のほうが圧倒的に大きく、強く感じられたんです。沖縄本島と八重山では、植生も違うし、紫外線の量も違って。コウモリとかも、犬ですかってぐらいのサイズが飛んでたりして。人間じゃとても打ち勝てない生命や自然の強い力があり、そこに安心感をおぼえたのかもしれません。

2020年

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS