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VIDEOTAPEMUSICが語る、ノイズの大切さ。「ホームビデオ」は効率化への抵抗

2026.6.10

VIDEOTAPEMUSIC『NOISE FACE LANDSCAPE』

#PR #MUSIC

2020年代のこの6年間は、世界的に見ても激動の時代だった。新型コロナウイルスの感染拡大、安倍元首相の銃撃事件、ロシアのウクライナ侵攻、第2次トランプ政権のスタート、中東情勢の緊迫、レイシズムの拡大と物価高騰。たった6年間に世界を揺るがす出来事が頻発し、日本社会もその影響を受けた。

VIDEOTAPEMUSICの最新作『NOISE FACE LANDSCAPE』は、その激動の6年間に作られた楽曲をまとめた音源集だ。2024年6月にリリースされた前作『Revisit』は日本各地で行われたフィールドワークを手がかりにしながら、特定の土地から新たな音の風景を立ち上がらせようと試みた作品だった。その『Revisit』と並行して制作された楽曲も含む『NOISE FACE LANDSCAPE』には、近年彼が取り組んできたものが記録されている。

VIDEOTAPEMUSICはこのアルバムに関するコメントのなかで「街のようにうるさい音楽」と説明している。彼は世界をどのように見つめ、街のざわめきをどのように表現しようとしているのだろうか? 晩春の夕方、VIDEOTAPEMUSICに話を聞いた。

『NOISE FACE LANDSCAPE』はライブでよく演奏する楽曲を収録

今回の『NOISE FACE LANDSCAPE』には、2020年から2026年にかけて作った楽曲が収録されています。一番古い曲はどれなのでしょうか。

VIDEOTAPEMUSIC:“1990年のカッコーオーケストラ”は2009年のCD-Rにも入れていた古い曲なんですよ。2020年ぐらいからあらためてライブでやるようになって、今回入れてみました。

それを除くと、一番古いのは“Funny Meal”ですかね。コロナ禍に入った直後、ceroがやった配信ライブに2曲だけゲスト参加したことがあって、そのとき初めてライブでやりました。2020年の3月だったと思います。

VIDEOTAPEMUSIC(ビデオテープミュージック)
ミュージシャンであり、映像作家。失われつつある映像メディアともいえるVHSテープを各地で収集し、それを素材にして音楽や映像の作品を作ることが多い。VHSの映像とピアニカを使ったライブパフォーマンスをするほか、映像ディレクターとしても数々のミュージシャンのMVやVJなども手掛ける。近年では日本国内の様々な土地でフィールドワークを行いながらの作品制作や、個人宅に眠るプライベートなホームビデオのみを用いたプロジェクト「湖底」名義でのパフォーマンスも行っている。2015年の2ndアルバム『世界各国の夜』以降はカクバリズムから音源作品リリースをするほか、国内外のレーベルからも多数の作品をリリースしている。日本各地で行ってきた滞在制作の記録をカセットテープと160Pの書籍にまとめたカセットブック作品『Revisit』を2024年6月にリリースした。

コロナの感染がじわじわと広がっていた時期ですね。

VIDEOTAPEMUSIC:そうですね。コロナ禍にライブができなくなって、その代わりにさまざまなアートプロジェクトに関わりながら制作するようになったんですよ。そのころのマインドが出たのが前作の『Revisit』だと思います。

VIDEOTAPEMUSIC:その後、コロナが収束するなかで海外のフェスに出たり、来日アーティストの前座が増えてきて。バンドでやる機会もあったので、徐々にレパートリーも増えてきました。そのなかで音源化していないものも溜まってきたので、一回まとめてみようかと。

―VIDEOさんのアルバムはこれまでテーマやコンセプトが作品をまとめている印象がありましたが、今回は割と編集盤的な位置づけでもあるわけですか。

VIDEOTAPEMUSIC:そういう側面も強いかもしれない。ただ、過去のものも最初からコンセプトを決めてそこに突き進むというより、その時期にやってたものを俯瞰したとき、どういう名前でまとめられるか考えていくなかでテーマが浮かび上がってくることが多くて。今回はそういったテーマもあまりなかった。たくさんの候補曲からライブでやる頻度が高いものを優先して8曲選びました。

イベント『ぽんぽこ山』からの影響で見つけた新しいダンスミュージック

ここ数年、VIDEOさんは別名義の「湖底」でもアンビエント的なライブをやってきたわけですが、その反面、バンドセットではバンドのグルーヴを軸にしたすごくダイナミックなライブをやってきましたよね。

VIDEOTAPEMUSIC:そうですね。今回のアルバムではここ数年、湖底でやってきたものが混ざり合っているところもあります。たとえば“1000年前”は湖底のライブでやってきた曲だし。

あと、海外フェスや各地のライブで僕の曲を知らないオーディエンスが盛り上がってくれる場面を目の当たりにすると、ライブでやってるけど音源化していなかった曲もちゃんとリリースしたほうがいいなと思って。ライブを想定してメンバーの見せ場を作った曲もあるし、アルバム自体、バンドセットでやってきたことの記録という面はあるかもしれないですね。2023年に韓国のイ・ヒムンさんや250(イオゴン)の前座を立て続けにやったんですけど、2組ともすごいエネルギーなので、そのエネルギーに負けないバンド編成用の曲を作らなきゃと思って“Neon God”という曲ができたり。

フェスの反応や対バンのエネルギーのような外的要因によって引き出された部分もあったと。

VIDEOTAPEMUSIC:そうですね。“Moonlight Cha Cha”も近年自分の中でも大ヒットだったイベント『ぽんぽこ山』からだいぶ影響を受けてます。

『ぽんぽこ山』はテンテンコさんたちがやってるDJイベントですよね。

VIDEOTAPEMUSIC:「たぬきが踊る山奥のお祭りで流れていそうな曲」っていうコンセプトのイベントで、たぬきの気持ちで踊ると、人間に向けて作られたダンスミュージックじゃない音楽も全然ダンスミュージックになってくるんです(笑)。“Moonlight Cha Cha”もずっと着地点が見えなかったんですけど、『ぽんぽこ山』を経て急に落としどころが見つかった感覚があって。

それはどんな感覚なんでしょうか。

VIDEOTAPEMUSIC:言葉にするのは難しいけど、情緒の部分で踊らせるというか、イマジネーションで踊らせるというか。自分の頭の中の想像上のたぬきが踊り出すような曲というか……。

わかるような、わからないような(笑)。

VIDEOTAPEMUSIC:オーネット・コールマンの『Dancing in Your Head』のことも考えていました。自分のなかで「フィジカルに身体が動く音楽っていいよね」っていう気持ちのある反面、ダンスミュージックのセオリーや人間の身体性に寄りかからない、頭の中のイマジネーションで踊れる音楽も大事なんじゃないかという思いがあるんですよ。

人間の身体ってすごく限定的で、僕らが踊れる音楽って限られていると思うんですよ。鼓動のリズムに近いほうが踊りやすいわけで、そうなると最終的に四つ打ちに落ち着く。でも、そういった限定的な身体性に縛られることなく、「踊れる音楽」を拡張させていくという発想はおもしろいですね。

VIDEOTAPEMUSIC:そう、『ぽんぽこ山』で自分のダンスミュージック観は拡張されたんですよ。“Moonlight Cha Cha”にはその感覚が入っていると思います。このアルバム自体はビートが強調された曲も多いと思うけど、近年「無理にビートを入れなくてもいいんだ」と思うようになったのは、湖底の活動も影響していると思いますし、ここ数年のいろんな経験が今回の作品には入っているんです。

アジアのアーティストたちとの交流によって生まれた楽曲

新作およびこの6年間に関するいくつかのトピックでいうと、前々作にあたる『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』(2019年)以降、アジア各地のアーティストと活発に交流してきました。今回は韓国の民謡歌手、イ・ヒムンさんを迎えたフンタリョンが入っていますが、作品リリースだけでも韓国のCHS2023年)や香港のScience Noodles2024年)、シンガポールのHoug2022年)とのコラボがあったし、ライブでは先ほど名前が出た250CADEJOなど、数多くのアーティストとも共演してきました。

https://open.spotify.com/album/2nGuD4M0Ux1bAPONgZSR4o?si=NO_HtSbhQN-CsDY_pgxHqg

VIDEOTAPEMUSIC:ありがたいことに、声をかけてもらう機会が多くて。僕はもともと積極的に旅行するようなタイプじゃなかったんですけど、音楽をやってるからこそ、いろんなところに呼んでもらったり、いろんな人たちと出会うことができたわけで。そういう声に応えていくのが自分なりの筋の通し方だとは思ってます。

イ・ヒムンさんとは2023年にも『MINYOLOGY Pt.2』という両名名義の作品集を出していますよね。

https://open.spotify.com/album/6XNzuQOgwPIXOVW0PWF6Ul?si=NtA71d4tRLWmCX02BUtoqQ

VIDEOTAPEMUSIC:あれは韓国の民謡を現代のアーティストがアレンジする企画で、ヒムンさんから誘ってもらって。オンライン上である程度アレンジを練り、データのやりとりで構成を固めたあと、向こう(韓国)でレコーディングしました。

ヒムンさんはなかなかユニークな方ですが、一緒にやってみてどうでした?

VIDEOTAPEMUSIC:民謡をずっと歌い続けてきた人ならではの説得力がありますよね。あと、どんな場所にも自分の大事にしているものを変えずに持っていける強さがあると思います。レコーディングもめちゃくちゃ早くて、一発OKでした。どの曲も身体に染み込んでいるというか、常日頃から歌い込まれているんでしょうね。

今回収録されたフンタリョンはどんな曲なんでしょうか。

VIDEOTAPEMUSIC:これも元々は韓国民謡のプロジェクトの際にレコーディングしたもので、ヒムンさんから提案された曲だったのですが、とても有名でいろんな地域で歌われている民謡だと聞きました。ちょうどこのレコードも持ってきていて……。

フォーシュリークのリムジン江 / フンタリョン1960年代後半に活動した日本のフォークグループですね。

VIDEOTAPEMUSIC:ザ・フォーク・クルセダーズの“イムジン河”よりもこちらのほうが原曲に近いという話を聞いたことがあります。偶然にも自分はこのレコードをすでに持っていて、このレコードのインナーに「フンタリョン」の説明や譜面が書いてあるんですよ。かつてこの曲に向き合った日本人の記録や痕跡がしっかりと自分の手元にあったことは大きかったです。

VIDEOTAPEMUSIC:「フンタリョン」の「フン」という言葉にここでは「興」という漢字があてられているんですけど、ヒムンさんに聞いたところ、この歌の中で繰り返される「フン」は漢字の「興」の意味だけに収まらない感嘆詞みたいな意味があるみたいで。悲しいとき、嬉しいときに使う擬音らしいんですね。日本語に翻訳できないニュアンスがそこにある気がして、音楽として聴かせる意味があるように思えたんです。

ヒムンさんとレコーディングの時に話したのは、民謡というのは歌い継がれれば歌い継がれるほど、それを悲しい気持ちで歌った人の気持ちも、楽しい気持ちで歌った人の気持ちも積み重なっているということ。ひとつの言葉をとっても、そこにはいろんな意味が積み重なっているんですね。

なるほどね。

VIDEOTAPEMUSIC:「翻訳できない言葉」という意味では、この本もすごく参考になりました。斎藤真理子さんの『隣の国の人々と出会う』。この本はエマーソン(北村)さんと一緒にトークイベントを企画した時にエマーソンさんが参考文献として挙げていたこともあって読みました。

『隣の国の人々と出会う: 韓国語と日本語のあいだ』(斎藤真理子著)

VIDEOTAPEMUSIC:韓国語から日本語に簡単に翻訳できない言葉や表現ってたくさんあるみたいで、それをどうしても日本語で表現しなくてはいけない時に、二つの言語が擦れあったすり傷が残ると翻訳家の斎藤さんは書いていました。そうやって韓国語を通過することで、日本語の方も傷だらけになりながら、新しい経験をしていくのだと。日本語に翻訳できない韓国の民謡を日本人がやるということは言語の壁だけでなく、日韓の歴史的な文脈をふまえてもすごくハードルが高いわけで、僕もヒムンさんから誘われなかったらできなかったと思うんですよ。

ライブに朗読を取り入れるようになった数年。朗読で意識している「声」の出し方

ここ数年のトピックとしては、ライブパフォーマンスのなかでたびたび朗読をするようになりましたよね。今回のアルバムに入っている“1000年前にも朗読が入っていますが、いつごろから始めたのでしょうか。

VIDEOTAPEMUSIC:最初は湖底のライブです。ギタリストの山内(弘太)くんに「即興をやってくれ」と言われたことがきっかけだったんですよ。僕ができる即興ってどんなものだろう? と考えたとき、朗読のアイデアが浮かんできて。プライベートなホームビデオをもらうたび、その内容を細かく文字起こししていたんですけど、それが膨大に溜まってきたんです。そのテキストを元に朗読の即興をやりました。

やってみたらおもしろかったと。

VIDEOTAPEMUSIC:そう、ライブとしてやる意味もあるのかなと思い始めて。ホームビデオって記録として保存しているかぎりは「モノ」でしかないじゃないですか。でも、それを再生して見ることで、時間の中にそれが解けていく。ホームビデオの内容を言葉にし、自分の身体を通して朗読することで、モノから時間に変わっていく気がして。

朗読をするときのVIDEOさんの声も絶妙にいいですよね。いわゆるナレーター的な声の良さじゃなくて、声からVIDEOさんの人柄とかキャラクターが伝わってくるというか。

VIDEOTAPEMUSIC:ただパソコン上でエディットしているだけだと、何か「これじゃ足りない」という気持ちにはなってきたのかもしれない。バランスが取れないというか。人の前に対峙しているものの責任の取り方として、生身でステージに立って、自分の身体性をそこに介入させたくなってきたんでしょうね。あと、朗読するとき、できるだけ物語にしないようにとは考えています。

だからなのか、VIDEOさんの朗読って淡々としていて、余計な感情を排した感じがしますよね。

VIDEOTAPEMUSIC:そこは意識しているかもしれないです。ホームビデオに映っている要素を自分の理想の物語を作る素材にしない。写っているものをどう受け止めることができるか。そういうことは考えています。

言葉をエモーショナルに発することによって、ある種アジテーション的な力を持つこともできるわけじゃないですか。でも、そういった朗読のグロテスクさについても意識されているんでしょうね。

VIDEOTAPEMUSIC:実際にやってみるとなかなか難しいんですけどね。無理に意味を乗せすぎないようにするといっても、どこかに自分の主観は入ってきちゃうわけで。

偶然孕む、音楽の政治性。6年間で変わった世の中に思うこと

もうひとつ思ったのは、今回のアルバムはVIDEOさんの視線を通じ、この6年間を記録した作品でもあると思ったんですよ。

VIDEOTAPEMUSIC:そうですね。

世界的に見たとき、この6年間っていろんなことあったじゃないですか。たった6年しか経っていないのに、2020年以前のことがはるか昔のことに思えます。

VIDEOTAPEMUSIC:そうですね。この6年間で自分の価値観も揺れ動いていたと思います。「こういうやり方で音楽をやり続けていていいのか」という葛藤もあったし、その葛藤をまとまらないなりに一回記録として出したかったのかもしれない。

https://youtu.be/Ljn9T2NTi8c?si=o6ps8rLizIM6hTL2

その揺れ動いている部分っていうのは、音楽家・表現者としてだけではなく、現代を生きるひとりの人間としての感覚?

VIDEOTAPEMUSIC:そうだと思います。

―“1000年前1990年代に撮影された中国旅行のホームビデオがモチーフになっていますが、かつては誰もが普通に中国へと旅行に出かけていた時代がありました。その時代をモチーフにこうした作品を作ることは、ある種の政治性も孕むと思うんですよ。そのことについて、どのように意識していたのでしょうか。

VIDEOTAPEMUSIC:作り始めたときはVHSの映像にうつされた風景をとにかく音楽でトレースしていく感覚だったので、そういうことを考えていたわけではないけれど、この曲に限らず映像の中の物言わぬ風景や、できあがってしまった曲の中に、結果的に政治性が孕まれることは大いにありますからね。このタイミングで出すことについては考えたし、なおさらそのまま出したほうがいいんじゃないかと思いました。そういう時代があったという記録として。

政治性という意味では“Funny Meal”にもそうした一面がありますよね。

VIDEOTAPEMUSIC:そうですね。あの曲も「みんな見たことのないおかしな料理(Funny Meal)を食べていて、ここにも人生があるのね」というとあるアメリカ映画のセリフをサンプリングしているわけで。

ちょうど作り始めた時期は世界中の料理を食べることにハマっていて、池袋や大久保によく行ってたんですよ。人間の身体って食べたもので作られていくし、食を通じてその土地の文化を知りたい思うと共に、色々な土地のものを食べたり飲んだりすることで、心身ともに自分を作り直している感覚さえありましたね。最近では海外からやってきた人たちの飲食店も(在留資格の厳格化で)大変な状況に置かれていて、そういったニュースをみていると、作った当時と違う意味も付加された気はします。僕みたいに世界中の料理を求める人もいれば、求めていない人もいるんだなと思って。

https://youtu.be/R9rI5sDo7Fk?si=zdtqYvMxwHM0g4SF

「政治性」という言葉を使ってしまいましたが、“1000年前“Funny Meal”に横たわっているのは現代を生きるうえでの自然な生活感覚ということでもありますよね。それが結果的に政治性を孕むということでもあって。

VIDEOTAPEMUSIC:確かにこの6年間で世の中は変わりましたよね。今回のアルバムに入っている曲も自分自身がどんな気持ちで作っていたか思い出せないくらい、自分と世の中の感覚も変わってきているし。だから、変なアルバムなんですよね、僕の中では。全然整理しきれてないというか、もう「記録」としか言いようがない。

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