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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

ノスタルジーより未来を描く、三浦直之(ロロ)とゆっきゅん。平成カルチャー愛を語る

2026.5.15

ロロ『ウルトラソウルメイト』

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劇作家、演出家の三浦直之が主宰し、2009年から活動を続ける劇団「ロロ」。様々な出会いと別れをポップに、そして独特の余韻を持って表現してきたロロの新作本公演『ウルトラソウルメイト』が5月15日(金)から上演される。1998年に出会った少年たちの半生を通じて、「マジカル平成史」が描かれる。まさにロロ的な「マジカル」と、ロロらしからぬ俯瞰した歴史の流れを感じさせる「平成史」。この2つの言葉の融合が表すものは、なんだろう。

公演を前にその一端を覗き込むべく、ゆっきゅんを招いて三浦と対談してもらうことに。DIVAであり作詞家のゆっきゅんは、三浦とは一世代年齢が離れているものの、通ってきたカルチャーはほとんど同じ。初対面とは思えない噛み合いぶりを見せる2人。「Y2K」というワードでリバイバルされ、歴史化される平成中期。どっぷりとその時代を生きた2人は、どのように向き合い、何を生み出しているのか。

ゆっきゅん、ロロ初観劇の感想は「かけがえのないものが描かれている」

ゆっきゅん:私、本当に申し訳ないんですけど、ロロの演劇を観たことがなくて。周りの人はみんな劇場に観に行っていて、私だけ行けてないみたいな(笑)。映画『サマーフィルムにのって』(2021年)とか、三浦さんが脚本を書かれた作品は楽しく観ているんですが、今回『まれな人』(2025年)や『校舎、ナイトクルージング』(2016年)の映像をいただいて、初めて拝見しました。

三浦:どうでしたか⋯⋯?

ゆっきゅん:すごく面白かったし、かけがえのないものが描かれていると思いました。かけがえのないものって、人それぞれだと思うんですけど、私がそう思っているものと近いというか。

三浦:うれしいです! ありがとうございます。

ゆっきゅん:他人からしたら大きな出来事じゃなくても自分たちの間ではすごいものとして受け取ったことだったり、当人は忘れてるかもしれないけど自分の中からはずっと消えないことだったり、そういう大文字で語られることがない記憶が、価値のあるものとして物語の中に登場するんですよね。

ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年よりセルフプロデュースでのソロ活動「DIVA Project」を本格始動。でんぱ組.inc、WEST.などへの作詞提供、コラム執筆や映画祭主催など、溢れるJ-POP歌姫愛と自由な審美眼で活躍の幅を広げている。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』を2024年にリリース、EP『OVER THE AURORA』を2025年にリリース。5月26日には恵比寿リキッドルームでソロ5周年ライブ『CAN’T STOP DIVA ME』を開催。

三浦:僕はこの対談が決まってから、ずっとゆっきゅんさんの曲を聴きながら脚本を書いていたんです。ラストシーンも聴きながら書いたんで、めちゃくちゃ影響を受けてます。

ゆっきゅんさんは、懐かしさみたいなものに対する手つきが本当に素敵だなと。僕も「かつてあったこと」をよく描くんですけど、それを懐かしさの一言で表すとこぼれ落ちちゃうことがあるんですよね。自分はシーンを積み重ねていろんな面から描こうとするんですけど、ゆっきゅんさんの歌は懐かしさだけじゃない複雑さを一言で立ち上がらせていて、本当にすごい。

三浦直之(みうら なおゆき)
ロロ主宰 / 劇作家 / 演出家。10月29日生まれ宮城県出身。2009年、日本大学藝術学部演劇学科劇作コース在学中に、デビュー作『家族のこと、その他たくさんのこと』が王子小劇場「筆に覚えあり戯曲募集」に史上初入選。同年、主宰としてロロを立ち上げ、全作品の脚本 / 演出を担当する。自身の摂取してきた様々なカルチャーへの純粋な思いをパッチワークのように紡ぎ合わせ、様々な「出会い」の瞬間を物語化している。2015年より、高校生に捧げる「いつ高シリーズ」を始動。高校演劇のルールにのっとった60分の連作群像劇を上演し、戯曲の無料公開、高校生以下観劇 / 戯曲使用無料など、高校演劇の活性化を目指す。そのほか脚本提供、歌詞提供、ワークショップ講師など、演劇の枠にとらわれず幅広く活動中。2016年『ハンサムな大悟』第60回岸田國士戯曲賞最終候補作品ノミネート。2019年に脚本を担当したNHKよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞脚本賞を受賞。

ゆっきゅん:えー、うれしい! まさにお見通しというか、懐かしさとの距離の取り方はすごく考えていて。特にアルバム『生まれ変わらないあなたを』(2024年)とEP『OVER THE AURORA』(2025年)ではそういうものに向き合いました。ずっと10代のことを歌い続けるミュージシャンはいるので、青春はその人たちにお任せして、私は大人になってからの友情とか、20代でも30代でも、その時にしかないものを書いてきましたね。今までは。

ゆっきゅん:松田聖子さんでいえば”SWEET MEMORIES”とか、過ぎてしまったこと、手放してしまったものに対する憧憬とか郷愁はずっと歌われているんですけど、<失った夢だけが美しく見える>としても、「だけ」ではなくない? みたいな気持ちが”DIVA ME”を作る時からあって。

自分の中にも何かを懐かしむ気持ちはもちろんあるし、書くことで保存したいというか、書いておかなくちゃいけないとも思うけど、単純なノスタルジーだと楽しいだけなので。楽しいだけで終わるんだったら新曲にしなくていいよね、とも思うんです。

三浦:うんうんうん。

ゆっきゅん:これから聴く歌なのに、今あることを見逃して「あの頃の方がよかった」みたいに昔話になっちゃうのも嫌だし。抱えきれないほど大切な思い出が増えていくだけで、それは寂しいことでもない。こんなに大切な友人たちとの思い出ばっかりできて、どうしたらいいんだよ、ふざけんなって。歌詞を書いて歌う上で、そういうノスタルジーとの距離をすごく探ってます。“いつでも会えるよ”だったり”OVER THE AURORA”だったり。

三浦、ゆっきゅんの楽曲に感動。「『俺もこれを目指したいんだ』と思う」(三浦)

三浦:僕、本当に”OVER THE AURORA”が大好きで。今おっしゃったみたいに、今と未来が歌われている感じがします。僕は20代の頃に『ボーイ・ミーツ・ガール』とか『青春』というような作品を発表してきて、僕自身がそういうものが好きだから作ってきたんですけど、30歳を過ぎたくらいから年齢と自分の描く言葉がズレてきている感覚があって、書けなくなったんです。

ゆっきゅん:私は今31歳なので、それくらいの時期ってことですか。

三浦:そうですね。それが数年続いて、やっと最近抜け出した感じがするんですよね。以前は、子供の頃に使えていた魔法が使えなくなった大人の話を書いていたんです。でも、今の気持ちとしては、あの時の魔法はもう使えないかもしれないけれど、今の年齢だからできる魔法もあるかもしれない、ということが書きたい。”OVER THE AURORA”は「今もキラキラしてます」というようなレベルではなく、だらしなさとかみっともなさを含んだ上での光が感じられて、聴くたびに「俺もこれを目指したいんだ」と思うんですよね。

ゆっきゅん:うれしい。あの歌の話をしてくれる人、あんまりいないんですよ。

三浦:え、そうなんですか⁉︎

ゆっきゅん:あんなに時間をかけたのに(笑)。盛り込みたいイメージがたくさんあって、すごく難しかったんですよ。「電影と少年CQ」というユニットをルアンちゃんという子と2人でやっていて、2025年末に活動を終えたんですけど、色々考えたけど結局あの曲はその子に向けて書いたようなところもあって。実話とかじゃないんですけど。何かひとつ区切りが来ても、その先でもっと仲良くなったら面白いなっていう。

三浦:あー、なるほど!

ゆっきゅん:実際、その後も一緒に旅行したりしてるんです。何かが終わる時は感情が揺れやすいので、作品にもなりやすいんですけど、その人とのこれからを考えたら「もっと仲良くなったらウケるな」と。

「ロロが解散してみんなとバラバラになったら耐えられないから、たぶん物語の中でその練習をしてる」(三浦)

ゆっきゅん:私の友達は女性が多いので、結婚、出産とかでライフステージが変わって、話せない話題も増えるし会う頻度は減るし、関係性が変わりやすいんですよね。でも、週4で会ってた時は無敵だったけど、そうじゃなくても、今や未来の良さもあるんじゃないかな、みたいな。というか、そうじゃないと辛すぎる。

三浦:僕はロロという劇団を大学の仲間とずっと続けてきて、ロロがなくなるのがずっと怖い。僕の書く話には別れがすごく多いんですけど、ロロが解散してみんなとバラバラになったら耐えられないから、たぶん物語の中でその練習をしてるんじゃないかと思うんです。でも、最近はみんな30代になってそれぞれの考えがあるし、「ずっと一緒にいようぜ!」も違うのかなと。今でも一緒にいたいし、楽しいんですけどね。今のゆっきゅんさんの話を聞いて、確かにロロのみんなと別れても、もっと仲良くなれる可能性があるのかと。

ゆっきゅん:ユニットの最後の方はルアンちゃんと「え、私たちこれからもっと仲良くなる?」って話してました。

三浦:最高だなー!

ゆっきゅん:かけがえなさすぎると、離ればなれになるのが怖いんですよね。だから私も友達と一緒に住んだりできないし。ルームシェア解消のことを思うとルームシェアできない(笑)。ライブをバンドセットでやる時は固定のメンバーでやっていて、「ゆっきゅんとラブドラゴンズ」という名前もつけてるけど、あくまでも、都度集合させる祭りにしてるんです。基本的にはチームを作らずに「この曲のためにはこの人が必要だから集まってください」というふうにすれば、毎回楽しいんですよね。ずっと一緒のチームを組んじゃうと、それは「未来」じゃないですか。それがもう悲しくて、怖いんですよ。

三浦:「毎回祭りにしてる」って、いい言葉だな。僕もロロのメンバーとの楽しい瞬間に没入できず、「これがいつか終わってしまったらどうしよう」とどこかで思ってるんです。

ゆっきゅん:わかる。でも、さっきペラペラ普通に喋ってたけど、「ルームシェア解消が怖くてルームシェアできん」ってなに(笑)。想像したら超楽しいだろうなと思うんです。喧嘩もしないだろうし、でも何かの誰も悪くない出来事によって別居するタイミングが来ると思うと、一緒にいた期間が宝石になり過ぎちゃってるから、もう無理。だから、今はすごく仲のいい友達何人かの近くに住んでます。そうやって傷付かないようにしてるっていうのはあるかも。

三浦:僕もすっごく仲のいい友達が近くに住んでるから、ずっと同じ場所にいます。

それぞれの、友達の作り方

三浦:僕は演出家をやるようになってから、自分から人に声をかけなくちゃと思ってがんばってるんですけど、10代まではそういうことが全然できなくて。

今でもすごく覚えてるのが、小学校3年生の夏休みに引っ越して、友達がいないから、ブーメランで1人で遊んでたんです。ある日、ブーメランがどこかに飛んでいっちゃって。何日か経って、家の窓から外を見たら、同い年くらいの男の子がそのブーメランで遊んでるんですよ。それで勇気を出して「それ、僕のブーメランなんだよね」と声をかけたら「一緒に遊ぼうよ」と返事をくれて。その子が「何年生? 3年生なら一緒だね。じゃあさ、友達になろうよ」と言ってくれたのが、本当にうれしかった。

三浦:それ以降も、自分から声をかけることができなくて、「友達になろうよ」的なコミュニケーションをしてくれた人のおかげでやってこれたから、そういう人への感謝でロロの脚本を書いてるところがあります。

ゆっきゅん:私、声かける側です。

三浦:めちゃくちゃ尊敬します。

ゆっきゅん:友達はできるものじゃなくて、自分で発見するものなので。何かのきっかけで「やばいこの人友達じゃん」と思ったら連絡して、会って、気が合い過ぎて6時間くらい喋って「私たち友達だったね」って。

三浦:その能力、うらやましいな……。

ゆっきゅん:「この人と高校の時ずっとカラオケ行ってた気がする」みたいな。そういう出会いが大人になってからもちょくちょくあります。「この人と一生仲良くしてたいな」ともあんまり考えたことがないかも。友情ってなんの契約でもないので。交際とも違うし。

三浦:確かに、契約じゃないですよね。そういう確約のない関係が心地いいと思うことはよくあります。

ゆっきゅん:別に今どこで何してるかわからないけど、再会できたりするし、しなくても良かったり。大人はそれぞれにやることがあって基本的に会えないから、もっと友情が大切なものになった気がします。

2000年代に夢中になったドラマは?

三浦:子供の頃から小説が大好きで、特に感動したのは100年にわたる歴史とか、大きいスケールを描くものだったんですね。それで自分でも物語を書いてみたいと思うようになって。続けてたら自分もいずれ書けるようになるだろうと思ってたんですけど、30歳くらいで書けなくなった時に、そういう自信も失ったんですよね。

で、だんだん元気を取り戻してきて、自分が目指したんだから、やっぱり書いてみようと思って。それに取り組んだ1発目が『ウルトラソウルメイト』なんです。最初だから、いきなり100年みたいなスケールにするんじゃなく、自分がリアルタイムで過ごした1990年代後半から2000年代を描いてみようと。

https://youtu.be/jYdIgALP3N4?si=MJs6NXk4aYRtjLKd
「魂も貸し借りできるんだって」1998年の6月、小学生のリリイと祝祭は数日間を共に過ごし親友になった。ある日、2人は事件に巻き込まれ、祝祭はリリイの秘密を知ることになる。やがて、二人はバラバラの道を歩みはじめ……。すれ違い続ける2人の数奇な半生を通して描かれる、みえることとみえないことのマジカル平成史。

三浦:歌人の上坂あゆ美さんとご飯食べながら話してたら、「平成史という言葉を使うといいんじゃないですか」と提案してもらいました。それだ! と思って、「マジカル平成史」というコピーになりました。

ゆっきゅん:私も大好きなカルチャーは1998年から2008年くらいのものが多いですね。

三浦:え、そうなんですね。僕とゆっきゅんさんは年齢が一回り離れてると思うんですけど、リアルタイムで見てたんですか?

ゆっきゅん:後追いもありますけど、けっこうリアルタイムです。私はglobeのデビューと同い年生まれなんですけど、目が覚めて歌姫たちを見たのが2000年くらいで、それ以降のものはだいたい好きです。大学生になってからは一旦「最新のカルチャーとか興味ないです」って感じになったんですけど……。

三浦:そんなに明確な線引きがあるんですね(笑)。どんなドラマ見てました?

ゆっきゅん:『すいか』が好きでした。あとは、『オレンジデイズ』とか、ドラマはたくさん見てました。映画だと『下妻物語』とか、あゆ(浜崎あゆみ)が好きだったから音楽番組は本当に全部見てたし。カルチャーの話は7、8歳上の人が一番合いますね。8歳上の姉もいるので。

三浦:お姉さんと僕は同世代ですね。僕は1987年生まれで、カルチャーみたいなものを一番摂取してたのが2000年代でした母の録画した月9のテレビドラマとかがずっと流れてるような家で。ただ、今、当時のものを見返してみると違和感を覚えることが増えてきたんです。そうなったときに、何かを好きになって感動したりするやり方がわからなくなっちゃった感じがして。そういうことを振り返りたいという気持ちが、今回はすごくあると思います。

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