メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

Luvto編:突然始まった誹謗中傷。乗り越えた経験から伝えたいこと

2026.1.23

#MUSIC

雨の日の取材現場に現れたLuvto(岩崎琉斗)は、落ちついた暖かみのある声の持ち主だった。2019年、2024年と大きな注目を集めた2つのサバイバルオーディション番組に参加。「ありのままの自分を見てもらおう」とした2つ目のオーディション番組では、SNSでの思わぬ「炎上」を体験した。殺到する殺害予告に怯え、ギリギリの精神状態で過ごした数ヶ月。自分の言葉で自分自身を支えた。

今、嵐が去った後の海のように穏やかな表情を浮かべ、新たな帆を上げてアーティストとしての人生に漕ぎ出したLuvto。産業カウンセラーの手島将彦との対話を通し、当時体験したことと今考えていることを、これからオーディションに挑む後続の人たちのためにとシェアしてくれた。

「オーディションの勝ち抜き方」に感じた葛藤

Luvtoさんは、岩崎琉斗という名前で2つのサバイバルオーディション番組に参加され、現在はソロアーティストとして活動を始めています。そもそもどういうきっかけでエンターテインメントに興味を持ったのですか?

Luvto:芸能に興味を持ったのはわりと早くて、12歳の時です。名古屋でボイストレーニングができる場所があることを知って、親に内緒で電話をかけて一人で体験レッスンを受けに行きました。そこから、主にボーカルレッスンを受けていたんですけど、声変わりで苦労してしまい挫折。でもやっぱり歌うことが好きで、就職せずにもう1回この道に挑戦してみようと思った18歳の時に出会ったのが『PRODUCE 101 JAPAN』(※)というオーディションでした。

※『PRODUCE 101 JAPAN』は、2019年に行われた吉本興業とCJ ENM(合弁会社としてLAPONE ENTERTAINMENTを創立)によるサバイバル型公開オーディション番組。国民プロデューサーと呼ばれる視聴者投票によってデビューできる11人が選ばれる形式だった。

─視聴者投票でデビューするメンバーが決まるというプログラムだったと思うのですが、視聴者の反応に対するプレッシャーなどはありましたか?

Luvto:当時はそれほどSNSでの応援が広がっている時ではなかったのか、参加している時は周りの反応はあまり感じなかった気がします。参加中はスマートフォンも預けていましたし。

だけど、途中から参加の趣旨がどんどん変わっていくなというのは実感していました。僕自身は、練習しないと間に合わない! というタイプだったので、カメラのないところで練習していたのですが、サバイバルオーディションの勝ち抜き方でいうとそれではダメなんです。例えば泣くならちゃんと映るところで泣く、努力は映るところでする。でも僕の性格ではそれができなくて、そこの葛藤はすごくありましたね。

Luvto(ラウト) / 岩崎琉斗(いわさき りゅうと)
愛知県名古屋市出身のアーティスト。10代から歌を始め、『PRODUCE 101 JAPAN』や Netflix で配信された『timelesz project —AUDITION—』などサバイバル型オーディション番組を経験。2025年11月24日よりLuvtoとしてソロで活動をスタート。等身大の感情をまっすぐに描き出す飾らないリリックと、人間味溢れる歌声が持ち味。

─PRODUCE 101 JAPANに参加されたのは18歳の時でしたね。そこからはどうしていましたか?

Luvto:俳優事務所にお声がけいただき、名古屋から上京しようと決意したちょうどその時にコロナ禍になってしまって……全部が白紙になりました。その後コロナが終わるまでの2年間、ほとんど記憶がないんです。

ようやくコロナが収束してきた2022年に上京をして、そこからはアルバイトをしながらチャンスを探していました。たまたま高校の同級生から、Sexy Zoneが新メンバーのオーディションをやるという話を聞いたんですよ。グループでやってみたいという気持ちがあったことと、Sexy Zoneのみなさんの人となりを聞いたりして、自分の感性を発揮できるのではないかと思って2024年に受けたのが、Netflixで配信された『timelesz project —AUDITION—』(※)でした。

※STARTO ENTERTAINMENTの男性アイドルグループtimelesz(旧名Sexy Zone)の追加メンバーを決定するオーディション番組。審査員は元々のメンバー3人が務めた。

「仲間にも、番組関係者にも、友達にも誰にも相談はできませんでした」(Luvto)

─受けてみてからはどんなことが起こりましたか?

Luvto:僕、結構SNSで叩かれて、炎上しちゃったんですけど……。

─4次審査の際に足に怪我をして踊れなくなりましたが、その時ですか?

Luvto:いえ、たぶん最初の面接審査(Episode01)からだったと思います。すでに多くのファンがいる事務所の公開オーディションということで注目も集まっていましたし、例えば「ずっと応援している人がまだデビューできていないのに……」とかいろんな事情があって、「追加メンバー候補」に対して複雑な気持ちになる方もいらっしゃったのではと思います。

─具体的にはどういうことがあったのですか? 

Luvto:最初はInstagramのDMに殺害予告がバーっと来て。「出ないでください」とか危害を加えるといった恐ろしい言葉が長文で書いてあって、それが多い時で1日100件くらい来ました。

─オーディションを受けていた仲間同士でそういうことについて話すことはありましたか?

Luvto:そこまで打ちとけて相談するということはありませんでした。 仲間だけではなく、番組関係者にも、友達にも誰にも相談はできませんでした。逆に、仲間からは、なんであんなに琉斗が炎上してるの? って聞かれるくらいで。

手島:僕も番組を見たんですが、炎上する要素が正直見当たらないんですよね。

手島将彦(てしま まさひこ)
産業カウンセラー、音楽専門学校講師、保育士。ミュージシャンとして活動後、マネジメント・スタッフを経て、専門学校ミューズ音楽院で講師と新人開発を担当。「文化・芸能業界のこころのサポートセンター Mebuki」所属カウンセラー。著書に『なぜアーティストは壊れやすいのか?——音楽業界から学ぶカウンセリング入門』『アーティスト・クリエイターの心の相談室——創作活動の不安とつきあう』等がある。

Luvto:殺害予告を送ってきた人たちは、何らかの事情でつつくところを探していて、僕がターゲットになったのかもしれません。でも多分僕は、映像で見えている部分と現場でのイメージが真逆のタイプだと思います。仲間やスタッフさんとも自分からコミュニケーションをとるし、なんだろう? 自分が前に出ることも好きですが、人を支えるのも好きな方。「チームメイトのいいところを、もっと引き出すにはどうしたらいいだろう?」って裏方みたいなことをよく考えていました。その人が注目されるとわーって喜んだりして。

─確かに、それは伝わらなかったです。むしろ一匹狼的な人なのかと……。

Luvto:その映らない部分とのギャップで苦しむことが多かったですね。参加中も、「オーディション番組向いてないな……」と思うことは多々ありました。

Luvto:僕は、アイドルを仕事にしている人は、アイドルになりきるのも大変だけど、素でいることの方がもっと大変だろうと思うんです。攻撃的な内容の評価も素の自分が全部受け入れないといけないし、それでも自分自身を信じないといけないので。そこの覚悟はできていたつもりだったんですが、文字にして誹謗中傷が来るとやっぱり……。自分が傷つくことよりも、周りが僕にすごく気を遣ったり、身内が傷ついているのをみて心が痛んだということが大きかったです。

「街に出ると、刺されるんじゃないかと思うんです」(Luvto)

─そういう状況が起こることは、ある程度番組配信前に予想されていたんでしょうか?

Luvto:していなかったと思います。ただ、たまたまスタッフさんの中に前から知っている方がいて、その方が言葉でというよりは、何かあった時に近くで寄り添うという形でケアしてくださったのでなんとか僕ももちこたえられました。

手島:そこは気になっていた部分なので、ちょうどお話が聞けてよかったです。オーディション番組にもよるんでしょうけど、サポートはあったのかなっていうのがちょっと気になったんですね。事務所に所属されている方の場合は、所属事務所からケアがあるかもしれませんが、オーディション番組の参加者の場合、当然無所属の方もいたりするわけで、その場合、仮に誹謗中傷がなかったとしてもちょっとしんどくなってくると思うんですね。

Luvto:聞いた話だと恋愛リアリティーショーなどの場合、参加する前に、メンタルヘルスに関する面談があったりするらしいのですが、オーディション番組だとそういうことは少ないかもしれません。

こちらから、「もう苦しいです」っていうのを伝えられればなんとかしてくださったのかもしれませんが、僕の場合は番組の配信ペースとリアルの間にタイムラグがあったので、誹謗中傷が一番激しくなっていった時期にはもう落選していて、現場にはいかないし、その期間が一番きつかったというのはあります。

─その時も誰にも相談しなかったのですか? 

Luvto:相談はしてないですね……。

手島:さっきもおっしゃっていましたが、気を遣われるのもつらいという気持ちもわかりますしね。ちゃんと誰かに適切に頼った方がいいんですけど、頼れたら苦労はしないよっていうのが、もう一方であるんですよね。Luvtoさんがというわけではなく、人によってこれまでの育ち方などいろんな背景があって、人に相談しにくいということはあります。「相談すればよかったじゃない」って言うことで、逆に追い詰めることもありますから、支える側の人は両方考えないといけないんだなと思いますね。

Luvto:もちろん、誹謗中傷が来てからは、Instagramをはじめ、SNS全般を消しましたが、逆に怖くなりましたよね。街に出ると、刺されるんじゃないかと思うんです。歩いている人が全員敵に見えて。今でも時々、その恐怖に襲われることがあります。

Luvto:そういう感覚は、誹謗中傷を最初に受けた時に急に襲って来るというより、徐々に始まるんです。まず一人になって寝る時に色々考えてしまって、殺害予告の文字がフラッシュバックするようになりました。この番組に出ない方が良かったのかなって、何度も振り返って考えるようになってどんどん落ち込んで、睡眠時間は眠れた時で3、4時間くらいになりました。

体重も激減して、今は58キロくらいなのですが、一時期50キロを切るくらいまでいきました。食べてはいたんです。特に撮影中は食事が出るので、今よりもちゃんと食べていたはずなんですけど、寝ていないせいか全然身につかなかったですね。

手島:やっぱり色々考えちゃって、思考が止まらなくなったりしますよね。反芻思考とも言うんですが、ぐるぐる同じことを考えて脳が休まらないんです。

「オーディション番組の矛盾は、最終的に自分で決めることが絶対できないこと」(手島)

─番組の配信が終わってから、どんなふうに今の自分を取り戻したんでしょうか?

Luvto:とりあえず、「普通の日常に戻ってみよう」からスタートしました。もう歌を歌おうという気持ちにもならなかったので、一旦普通に過ごすことを目標に頑張っていました。3ヶ月くらいたって眠れるようになり、そこから体重も戻っていきました。

─逆境からの精神的回復力をレジリエンスと呼びますが、ご自身が苦しい時期を乗り越えてもう一度今の心持ちになれたのは、何が支えになったと思いますか?

Luvto:結局僕自身は音楽が好きだし、支えられたのも音楽でした。それとオーディション期間中は、「自分のペースでいいんだ」とずっと自分に言い聞かせていました。最後は自分自身が一番支えになったと思います。もう一度始めるにあたっては、応援してくれている人たちの支えもあったかもしれないですね。そういう人たちのために、有名になろうというのではなく、Luvtoだから伝えられることを伝えていこうっていうふうに目標が変化したからこそ、再スタートできたと思います。

2025年11月24日に立ち上げたオフィシャルサイト

手島:一番良いところにたどり着いたんじゃないかなって気がします。最近よく「自己肯定感」という言葉が使われますが、本来それは、その人が何かの役に立つとか成果を上げられるとか、そういう機能的なことや効力感・有用感ということだけでなく、自分の存在自体をそのまま認められるかどうかという存在レベルでの肯定感っていうのがもっと大事なことで、多分そこに戻っていかれたわけですね。

これは批判ではありませんが、オーディション番組で気を付けないといけないのは、基本的に「他者が評価する」ってところなんですよね。どんな形を取ろうと、参加者の意志では決まらないんです。そこがいわゆる一般的なアーティスト活動とか他の表現活動と少し違います。努力はできるけど、最後は誰か他者の決定に委ねざるを得ないので、そこの部分っていうのは負荷がかかりやすい仕組みになってると思うんですよ。自己決定ができるかどうかっていうのは、人間にとってすごく大事なことなんです。

Luvto:確かにそれは感じますね。だから、多分何のためにやってるのかわからなくなる子が結構多いのかな。審査員に気に入られることが目標になったり、芸能界でデビューすることが目標になったり、ファンを増やしたいとか、先生に怒られないように頑張るとか、だんだんみんなバラバラになってきてしまう。デビューっていう一つの方向を向いてるように見えて、意外と向いていなかったのかも知れません。

連載もくじページへ戻る

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS