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梅井美咲、ロングインタビュー。ピアノが第一言語の22歳は、ボーダーレスな旅の途中

2024.6.26

梅井美咲

#PR #MUSIC

あなたは「梅井美咲」という名前をどのように知っただろうか? 高校生のときに人気ジャズ漫画『BLUE GIANT SUPREME』から派生したイベント『BLUE GIANT NIGHTS』のオーティションでグランプリを獲得して、Blue Note Tokyoで上原ひろみやケンドリック・スコットと共演した気鋭のジャズピアニストとして、または菅野咲花との歌ものユニット・haruyoiのコンポーザーとして、もしくはクラシカルなストリングスのアレンジと7分間の展開が鮮烈なソロ名義の最新曲“w_mimoza”で彼女のことを知ったという人もいるだろう。そして、そのすべてが重要なパーツとして梅井美咲という音楽家を構成し、彼女は今もさらなる未知を求めて、言葉では表現しきれない感情を探して、音楽という名の旅を続けている。2002年3月生まれで現在22歳、次代を担う才能にこれまでの歩みについて語ってもらった。

音楽で表現することは自分の感情表現

ー梅井さんは出身が兵庫県の加古川市、ピアノの先生だったお母さんの影響で4歳からピアノを始めて、6歳で作曲をするようになったそうですね。

梅井:昔から即興演奏がすごく好きで、そこから派生して作曲にも繋がった記憶があります。譜面通りに弾くのが苦手で、よく先生に「また勝手に作曲して!」って怒られていました(笑)。譜面通りに演奏するよりも自分で作ることにすごく興味があって、その姿勢は今も変わっていない気がします。

ーなぜ作ることが好きなんだと思いますか?

梅井:今もそうなんですけど、言葉で伝えるのがあんまり得意じゃなくて。昔は語彙を増やせば変わるのかなと思っていたんですけど、いろんな言葉を知ったところで、結局自分の考えや表現したいことは言葉に当てはまらないものが多いなと思ったんですよね。それよりも音そのものが好きだし、音楽はずっと自分と一番距離が近いものなので、感情表現としてしっくりきたんだと思います。

梅井美咲(うめい みさき)
兵庫県加古川市出身。4歳よりピアノ、6歳よりエレクトーン.作曲を始める。県立西宮高等学校音楽科作曲専攻卒業。東京音楽大学作曲科卒業。2018年度ヤマハ奨学金支援制度音楽奨学支援生。2020年1月にbrilliant worksよりMisaki Umei Trio 1st Album”humoresque”をリリース。自身のトリオのコットンクラブ公演の成功や上原ひろみ,kendrick scott,林正樹,新垣隆,石橋英子,古川麦との共演、中島美嘉.吉澤嘉代子.八木海莉,SennaRin,加藤ミリヤ,清塚信也,(順不同.敬称略)などのアーティストのライブや収録にピアニスト/アレンジャーとして参加する等、活動は多岐に渡る。また、2023年2月より緩やかにソロプロジェクトを開始。
公式サイト:https://linktr.ee/umeboshi3333

ー学校は楽しかったですか? それとも、家に帰って一人でピアノを弾いている方が好きだった?

梅井:学校も楽しかったんですけど、同級生と趣味が合わないとは思っていました。私が小学校のときに流行っていたのはAKB48とか嵐で、でも私がはまっていたのはDIMENSIONとかNiacinで(笑)。わざと大人びたものを好きになるようにしていたわけではないんですけど、周りからしたら大人ぶっているふうに思われたりして、途中から音楽の話ではうまが合わなくなって、悲しいなと思った記憶はありますね。

ー高校は音楽科のある学校に進学して、そこから変わりました?

梅井:初めて深いところまで音楽の話ができる人たちに会えました。クラシックの学校だったんですけど、劇団四季で子役として頑張っていた子もいたし、ジャズをやっていた子もいたし、学校ではファゴットをやっているけど、昔から歌うのが大好きだったっていう子がいたり、多様な人が集まった環境ですごく影響を受けて。自分は元々ジャンルで音楽を聴くというよりも、アーティストや、この曲のこの部分が好き、みたいな聴き方をしていたのが、すごくフィットしたんです。

フランク・ザッパから学んだ「自分の音楽に嘘をついちゃいけない」

ー小さい頃からクラシックピアノをやっている子は「その道を突き詰める」みたいなイメージが一般的にはあると思うんですけど、学校のクラスメイトも、梅井さん自身もそうではなかったんですね。

梅井:私は超欲張りなんですよ。「これもできるようになりたい、あれもできるようになりたい」って昔から思っていて、ピアノももちろん大好きなんですけど、でもそれだけだと……。6歳からエレクトーンもやっていたんですけど、習っていた先生が編曲家でもあって、ジャンルを横断して詳しかったんです。それを見てすごく羨ましいと思って。「私もいろんな音楽を作れるようになりたい」と思って、そういう「羨ましい」の連鎖で今にたどり着いている気がします。Niacinやフランク・ザッパを聴くようになったのも、その先生の影響でした。

ーその先生からは音楽家としてどんなことを教わりましたか?

梅井:とにかく自由にやらせてくださったんですよね。最初は私がクラシックピアノをやりつつ、ポピュラーミュージックにも興味がある状態を危惧していたというか、エレクトーンをやっている間にピアノ一筋の子たちはメキメキと伸びていくわけで、「ピアノでコンクールを受けたいなら絞った方がいいんじゃないか?」っていうのもその通りだと思うんです。でも私の何でもやりたくなる性格を察してくれて、「自由にやっていいよ」って許してくださったことがすごく大きかったと思います。

ーそして、Niacinからフランク・ザッパまで幅広く教えてもらったと(笑)。

梅井:フランク・ザッパのドキュメンタリー映画『ZAPPA』(2022年)の中で「僕の生きがいは、自分が作った作品を家に持ち帰って1人で聴くこと。その時間のためにやっている」みたいなことを言っていて、それにすごく共感したんですよ。私はまだそんなに自分の作品をたくさん録ってきたわけではないけど、家に持ち帰って1人で聴く時間が本当に幸せで。フランク・ザッパは自分の音楽に一切嘘をついてないっていうのが、そのドキュメンタリーからひしひしと伝わってきて、胸いっぱいになっちゃって。

ーいい話ですね。梅井さんも自分の音楽には嘘をつかずに作りたいし、表現したいと思った?

梅井:今はSNSでいろんな情報が得られるじゃないですか。そういう中で生きていると、自分はどうしたいのか、時々わからなくなるんですよね。でもそういうザッパの生きざまを見ていると、「自分の音楽に嘘をついちゃいけない、それだけは忘れちゃダメだな」ってすごく思いました。

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