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Perfumeコールドスリープの真相に迫る。決断を見守ってきた佐渡岳利監督に聞く

2026.5.15

#MOVIE

結成25周年を迎えたPerfumeの歩みを振り返るドキュメンタリー映画『Perfume“コールドスリープ”-25 years Document-』は、その軌跡をたどると同時に、人生の大きな転機に立った3人が、それぞれの「これから」と向き合っていく姿を映し出した作品でもある。

なかでも印象的なのは、ユニット結成時から彼女たちを支え、ともに走り続けてきた演出振付家・MIKIKOが、コールドスリープという選択をした3人に向ける眼差しだ。子どもの頃からPerfumeにすべてを捧げてきたあ〜ちゃん、のっち、かしゆかに、「自分たちの人生のことも考えてほしい」と願うその言葉は、誰かの期待に応え続けるあまり、自分のことを後回しにしてしまいがちな私たちに、自分自身の幸せをどう考えるかという問いを静かに投げかけてくる。

長年Perfumeを追い続けてきた本作の監督・佐渡岳利に、この映画に刻まれた3人それぞれの人生の選択と、その姿が私たちに投げかけるものについて聞いた。

※この記事には、映画『Perfume“コールドスリープ”-25 years Document-』のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

佐渡岳利(さど たけとし)
1990年にNHKに入局。以来、音楽番組やエンターテイメント番組を中心に多数の制作を手がけ、これまでの主な担当番組は『紅白歌合戦』『MUSIC JAPAN』『スコラ坂本龍一 音楽の学校』『岩井俊二のMOVIEラボ』『Eダンスアカデミー』など。Perfume初の映画『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』や細野晴臣の『NO SMOKING』などのドキュメント映画の監督も務めている。また、『MUSIC AWARD JAPAN』のプロデュース・演出、『MUSIC EXPO LIVE 2025』の演出も担当。

佐渡監督とPerfumeの濃密な関係性

─佐渡監督とPerfumeとの関わりは、どのようにして始まったのでしょうか。

佐渡もともと僕はNHKの職員だったのですが、Perfumeが“ポリリズム”でブレイクして、テレビ出演が増えていった頃に最初にお会いしました。その後、初めて『紅白』に出場された時期は、僕もかなり深く関わっていて。さらに翌年、『MUSIC JAPAN』という音楽番組が始まり、彼女たちが司会を務められたので、そこから毎週のようにお会いするようになりました。

初めて東京ドームに立たれた時のドキュメント番組も僕がプロデューサーでしたし、2012年頃に初めて海外ツアーに出られた際も、その特番を担当していました。その後、NHKからNHKエンタープライズに出向することになり、NHKにいると商業作品は作れなかったのが、ちょうどタイミングも合って『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』を監督することになったという流れです。

─かなり長く、そして濃密な関係性ですね。

佐渡:3人からすると、「あ、いつもの人が来たな」という感覚だったんじゃないでしょうか(笑)。プライベートで食事に行くとかもないですし、日常に近い距離感の中でお互い慣れていったというか。空気みたいな存在に近かったのかもしれませんね。

2019年から始まった撮影。コロナ禍も含めた、Perfumeの激動の7年

─本作の撮影は2019年から始まったそうですね。コロナ禍も含め、彼女たちにとっては激動の7年間だったのではないでしょうか。

『Perfume“コールドスリープ”-25 years Document-』ポスタービジュアル

佐渡:2020年にいろいろと大きなプロジェクトが予定されていたため、そこに向けて、ちょうど『コーチェラ』出演の頃から撮影を始めていました。でも、ご存知の通りコロナ禍になってしまい、Perfumeに限らず、社会が止まってしまった。状況が戻ってきてからぽつりぽつりと撮影を再開していきました。

─最初は20周年に向けた企画だったものが、コロナの影響で25周年へずれ込んでいったと。

佐渡:そうですね。25周年では東京ドームもあるし、いろんな活動もあるから、そこに向けたドキュメンタリーを制作しましょうと。ただ、いったん立ち止まらざるを得ない時間があったことで、メンバーもいろいろ考えただろうし、MIKIKO先生もその間、さまざまな思いを巡らせていたはずです。自分たちのことはもちろん、これからエンターテイメントがどうなっていくのかという、もっと大きな視点でも考える時期だったんじゃないでしょうか。

ただ、メンバーのメンタリティー自体が大きく変わったという感じは、あまりなかったですね。昔から、いい意味でずっと変わらないんですよ。「より良いものを作ろう」という気持ちは変わらずある。その一方で、その時代に合ったものをどう作っていくかについて、より深く考えるようになっていった時期だったと思います。バルセロナの『プリマヴェーラ』出演やアジアツアーでこれまで行っていなかったバンコク公演をしたりなど、新しい動きもありましたし。

─結成25周年ということもあり、映画には初期の映像がこれまでになくたくさん出てきて新鮮でした。

佐渡:ご家族からお借りしたものもかなりありましたし、事務所が持っていた素材もありました。VHSやminiDVで撮っていたものなので、そもそも再生できなかった素材もたくさんあったのですが、再生できるものはとにかく全部見て、使えるかどうかを確かめていきました。写真もかなりお借りしています。幼い頃のものはご家族しか持っていないですから、かなり貴重だと思います。

─“ポリリズム”を初めて人前で披露した時のライブ映像は特に驚きました。冒頭のコード進行が音源と違っていたりして。

佐渡:あれは相当珍しいと思いますよ。僕らも発見した時は「おお!」となりました(笑)。振り付けも違うんですよね。メンバーも懐かしがっていました。

─本編のクライマックスは、やはり2025年9月22日・23日に東京ドームで開催された『Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME』で、映画としての臨場感や音楽的な高揚を存分に味わいつつも、コールドスリープ発表へ向かうドキュメンタリーとしてのドラマ性も両立していました。どんなことを意識しながらまとめていきましたか?

佐渡:今回は25周年ということもありますし、コールドスリープのニュースで興味を持って初めて観る方にも、ちゃんと理解できて楽しんでもらえる作品にしたいと思っていました。そのため、“ポリリズム”や“チョコレイト・ディスコ”などの代表曲はしっかり入れたり、ヒストリーも駆け足にならないように構成しました。

結成の経緯などは、コアファンにとっては説明不要だと思います。でも、ヒットしてからのPerfumeは知っていても、そこに至るまでを深く掘ってきたわけではない人の方がおそらく多いですよね。そういう方にとっては、「こういう成り立ちのグループだったんだ」とか、「最初はお母さんたちがああやって支えていたんだ」といったことがわかることで、3人の人となりができていく過程に立ち会える。今回はそのほうがいいと思ったんです。

─なるほど。

佐渡:Perfumeをよく知る古参ファンの方にはある種「親目線」でご覧いただくのもいいのではという気持ちもありました。

「自分たちの人生のことも考えてほしい」というMIKIKO先生から3人へのエール

─あ〜ちゃんが、結婚の報告をMIKIKO先生や近しいスタッフにする場面も、「こんな瞬間まで撮っていたのか」と驚かされました。

佐渡:あれは本当にびっくりしました。おそらく、あ〜ちゃんが「大事な話をしたい」とマネジメントに伝えたんだと思います。それで、本当に限られた人数だけが集められたんですが、何を話されるのかは事務所の皆さんもわかっていなかったと思います。

「結婚します」と言われた時は、僕はもちろん、スタッフもみんな驚きましたし、その後、「コールドスリープ」について初めて話される瞬間も、あたりまえですが、その場にいた全員が驚いていました。こんなこともあるんだな、これからどうなるんだろうなと思いながら撮影していましたね。

あ〜ちゃん

─すべて実際に起きたことであっても、見せ方によってはある種の「物語」にもなりうる。そのバランスはとても大事なのではないかと思うのですが、監督はドキュメンタリーを撮るうえで、どんなことを大切にされていますか?

佐渡:これは本当に難しいことなんです。ドキュメンタリーといっても、たとえば家までついていって寝るところまで撮るのかといえば、もちろんそうではないですよね(笑)。しかも、それを撮ったところで、そんなに面白いわけでもないですし。結局、こういう作品にも僕たち作り手の視点が入り、編集が入り、撮り方によっても大きく変わってくる。そう考えると、「本当の意味でのドキュメンタリー」というものは、たぶん存在しないんじゃないかと思うんです。

だとしたら、そのなかでどんな選択をするのかは作り手によって違ってくる。僕自身は、なるべく加工を感じさせずに受け取ってもらうにはどうしたらいいかを考えるようにしています。もちろん、僕が撮って僕が編集している以上、どうしても「僕から見たPerfume」にはなってしまう。それでも、その「僕から見たPerfume」が、メンバー自身やファンにとっても「正しいもの」に近いものであったらと思っていますね。

─今回、ナレーションも一切なくメンバーやMIKIKO先生の発言が映像を繋いでいきますよね。

佐渡:できるだけ観る人に集中してもらえたらいいなと。ただ、例えばナレーションの有無も二次的なことで、本当に大事なのは、これこそがPerfumeの根幹なんだという部分を、どこまで表現できるかなんですよね。極端なことを言えば、たとえ細部に演出があったとしても、観た人が受け取るものがちゃんとPerfumeの本質になっているなら、それはそれで成立するのかもしれない。要は、「本質に迫れているか」がいちばん大事なのだと思います。

─そういう意味では、本作ではMIKIKO先生の視点も非常に重要な位置を占めていますね。MIKIKO先生がPerfumeをどう見つめてきたのか、その思いを伝えようとしていたのではないかと感じました。

佐渡:僕も長いお付き合いなので、MIKIKO先生とメンバーの関係性はよくわかっているつもりです。あ〜ちゃんも「分身のような存在」と言っているくらいですから、「チームPerfume」を形作るうえで、ものすごく大きな存在ですよね。先生ご自身も「普段からしょっちゅう4人で会っているわけではないんです。」と作中でおっしゃっているように、必要以上にベタベタしているわけではないけれど、そこにはすごく強いクリエイティブなつながりがある。その信頼関係というか、絆の強さは、ずっと感じてきました。

だからこそ、「コールドスリープ」という話になった時、MIKIKO先生にも相当な思いがあるだろうというのは想像できました。だからそのあたりからは、MIKIKO先生の表情も丁寧に追えるように、カメラの振り分けなども意識していましたね。

のっち

─「Perfumeがこれから歩んでいく道が、同じように自分の人生について考えようとしている女性たちを勇気づけたり、周囲を気にしてなかなか踏み出せない人の背中を押したりする存在になればいい」とMIKIKO先生が語る場面は、とても印象的でした。

佐渡:今回は非常に大きな選択が描かれている作品でもあるので、できるだけファンでない一般の方々にも観ていただきたいと思っていました。

Perfumeのメンバーは、子どもの頃からずっと前を向いて歩んできたと思うんです。コロナ禍の時も立ち止まらず前を向きながら「どうしていこうか」と考えていたはずです。そういうなかで初めて、大きく生活環境が変わるような状況に直面した。そこで彼女たちが下した決断は、同じように人生のターニングポイントで一歩を踏み出そうとしている人や、あるいは自分がそういう状況にいることに気づいてすらいなかった人にも、共感できる部分があるんじゃないかと。

─「自分たちの人生のことも考えてほしい」というMIKIKO先生から3人へのエールを、自分事として受け止める人も多いと思います。

佐渡:もちろん、エンターテイメントの最前線にいる彼女たちの環境は、特殊だと思います。でも、多くの人も学生時代は部活や趣味に打ち込んでいるけれども、その後は勉強して大学に進んだり仕事を始めたりして、生きていくためにいろんなことを我慢しながら続けているわけですよね。家族ができて夢を諦めた人もいるかもしれないし、何かを優先するために別の何かを手放した人もいるかもしれない。自分のことを後回しにしてしまっている人は、多いと思うんです。

そういう方が観た時に、「自分のことをもっと大事にしてみてもいいんじゃないか」と思ってもらえたら、という気持ちはありました。「今の状況を変えるという選択肢も、もしかしたらあるのかもしれない」と思えるような、何かしらのヒントにもなるのではないかと。この作品が、自分の人生と向き合うきっかけになれたらいいなと思っています。

─5年前には結婚について「考えたこともなかった」と明るく話していた3人が、時間を経て変わっていく。そうやって変化した自分を認めることも、また大事なのかもしれないと思わせてくれます。

佐渡:エンターテイメントの世界で生きている人たちにとって、プライベートな選択というのは、僕らのような一般の人とはまた違う意味で、とても大きなものになると思うんですよね。ファンのいる立場ですし、いろんなことを相当考えたんじゃないでしょうか。ファンの皆さんにどう受け止めてもらうかということも含めて、表現者としてどう立っていくのかが問われますから。あ〜ちゃんも話していましたが、そこはとても大事な局面だったと思います。

今回はあ〜ちゃんの選択がひとつ描かれていますが、かしゆかやのっちがこの先プライベートをどうしていくのかはまだわからない。ただ、プライベートと公の存在としての自分をどう両立させていくのかということは、これから3人にとってより深く考えていくテーマになっていくんじゃないかと思います。

かしゆか

Perfumeを「やらないことへの挑戦」が始まった

─コールドスリープ前のラストライブを終え、3人がそれぞれ次の一歩を踏み出していく様子も映されていました。その姿を見ていて、監督はどんなことを感じていましたか?

佐渡:みんな口々に言っていましたけど、Perfumeじゃない生活をするのは本当に初めてなんですよね。だからこそのとまどいのようなものは感じましたし、それと同時に、新しい挑戦に向かっているワクワク感も感じました。これまでずっと「Perfumeとしてやらなければいけないこと」をやり続けてきたわけで、それを「やらない」ということ自体が初めての経験なんです。つまり、「やらないことへの挑戦」が始まったということですよね。

Perfumeは常に先駆者として、いろんなことに挑んできた人たちだと思います。たとえばテクノポップアイドルというあり方で、大衆性と先端性を両立させるようなポジションも、他にいません。海外で本格的に公演を行うこともそうですし、ドキュメンタリー映画を作ることも、今ほど一般的ではなかった時期からやっていました。ずっとチャレンジの連続ですよね。そういう意味では、今またまったく違う視点のチャレンジを始めたんだなと感じました。

そんなチャレンジを経てコールドスリープから戻ってくるとき、どんな景色を見せてくれるのかが楽しみで仕方ありません。

『Perfume“コールドスリープ”-25 years Document-』

出演/Perfume
監督/佐渡岳利 音楽/中田ヤスタカ(CAPSULE) 配給/日活
©︎2026 Perfume “コールドスリープ” Film Partners.

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