コミック、アニメ、映画と、拡張を続けるマーベルユニバース。その原点にして、最も重要な「家族」がファンタスティック4だ。
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の公開を前に、「ファーストファミリー」と呼ばれる彼らの歴史やトリビアを、アメコミトークライブ『しゃべんじゃーず』主催・アメコミ侍の柳生玄十郎が解説する。
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1961年に初登場した、マーベル初のヒーローチーム
1940年まで、アメコミのヒーローは単独で活躍するのが当たり前だった。同年DCコミックスから発行された『All Star Comics #3』に、世界初のヒーローチーム「ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ」が登場し、その爆発的な人気は1960年刊行の『The Brave and the Bold #28』における「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」の誕生へとつながっていく。当時、DCコミックスはまさに人気の絶頂を迎えていた。
そんなDCの快進撃を横目にしていたのが、マーベルコミックスの生みの親、スタン・リーだった。ライバル社の大ヒットに刺激を受け、「目には目を、ヒーローチームにはヒーローチームを!」とばかりに放った一手が、「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」登場から1年後となる1961年に発行された『Fantastic Four #1』だ。 ファンタスティック4は、こうした経緯から、1963年のアベンジャーズに先んじること2年、マーベル初のヒーローチームとして世界に登場した。婚約者、姉弟、親友という血縁と友情で結ばれた、寄せ集めではない超能力者4人のチームは、やがて「ファーストファミリー」と呼ばれる事となった。
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ファンタスティック4はいかにして誕生したか
硬い絆で結ばれたファンタスティック4。彼らはどうやって超能力を得たのか。まずは、原作のストーリーを紹介しよう。 マーベルユニバース最高峰の天才的頭脳を持つ、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズ。彼は科学者であり発明家でもある。そんな彼が設計したのが、宇宙探査船「マーベル-1」。軍と政府の協力のもと建造されるも、なかなか発射許可が下りず、リードはもどかしい日々を過ごしていた。そんなある日、太陽フレアによる宇宙線の爆発が起こることを知ったリードは、科学者としての好奇心を抑えきれず、「今日こそが絶好のチャンスだ」と無許可での打ち上げを決意する。

この無謀な計画に賛同したのは、リードの大学時代のルームメイトであり宇宙飛行士を目指しているベン・グリム。リードに想いを寄せる分析官スーザン・ストーム。「姉さんだけでは心配だ」と勢いで着いてきたスーザンの弟ジョニー・ストームの4人。彼らは、発射場に忍び込み、無許可でロケットを打ち上げる。しかしその飛行中、観測されていた量をはるかに超える宇宙線を浴びたことで、彼らの身体は分子レベルで変異を起こしてしまう。

最初に変化が現れたのは、スーザン・ストーム。本人は気づかなかったが、「スーザン! 身体が消えてる!」という声に驚き、自らが周囲の空気を操り、透明化できる能力を得たことを知る。続いて変化したのはベン・グリム。全身の皮膚が岩のような物質に変化した彼は、同時にとてつもない怪力を手に入れる。混乱して暴れるベンを止めるべく、次に能力を発揮したのがリード・リチャーズ。全身をゴムのように伸ばし、ベンをぐるぐる巻きに縛った。彼は伸縮自在の肉体を手に入れたのだ。そして、最後にジョニー・ストーム。目立ちたがり屋で情熱的な彼は、突然全身が炎に包まれ、空を飛ぶ能力を発揮する。

こうして得た能力から、彼らはそれぞれヒーローとしての名前を名乗る。スーザンは、「透明になれる少女」インビジブル・ガール。スーザンに密かな想いを寄せていたベンは、彼女に言われた言葉を借りてザ・シング。コミックファンだったジョニーはマーベルコミックスに登場した最初の超人から名前を取ってヒューマン・トーチ。そしてリードは、「運命に素晴らしい力を与えられた者」としてミスター・ファンタスティックを名乗る。
4人はその能力を人々のために使うことを誓い合い、手を重ねて宣言する。こうして、ファンタスティック4は結成された。
