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【2026年上半期振り返り・演劇編②】俳優の個人企画、海外戯曲の可能性と難しさ

2026.10.16

#STAGE

ライターの丘田ミイ子、川添史子、早川大輝に集まってもらい、2026年上半期の演劇界を振り返ってもらう座談会。

前編では、3人が2026年上半期で印象に残っている作品についてのほか、音楽と演劇の組み合わせ、岸田國士戯曲賞の話を経て考える一人芝居の増加、さらには演劇作品の上映会が持つ意味などについてお届けしてきた。

後編では、一人芝居とはまた違う意味合いを持つ俳優の個人企画についてのほか、現代において海外戯曲を上演する意味、世界中の人形劇が集まる『下北沢国際人形劇祭』の熱気、2026年下半期で気になっている作品について聞いた。

(「前編」はこちら)
https://niewmedia.com/specials/2610stage2_ednwe_wrsmm/

大石恵美や大竹このみ(贅沢貧乏)、内藤ゆき(阿佐ヶ谷スパイダース)まで。俳優の個人企画が増えている理由

ー前編では一人芝居の話がありましたが、俳優の個人企画についてはどのように見られていますか?

丘田:コロナ禍以降の動きとして、少ないメンバーで再演もできる、ポータブルで持続可能な演劇を考えたときに、一人芝居や二人芝居が増えて、その流れで個人企画も増えていったのかなという感触はありました。

川添:ここ数年、ハラスメントやパワーバランスについて見直されてきた時期でもあると思うんですが、脚本家や演出家の要望に応えることだけが俳優の仕事ではない、俳優はもっと主体性のある存在であってもいいはずだという動きを感じています。

丘田:そこで俳優が初めて個人企画を始動させるとなった時に、これまでの生き方を書いたり、自身を投影した役どころを演じたりするような私小説的な作品が増えたようにも感じました。大石(恵美)さんの作品にもそんな魅力がありますが、贅沢貧乏の大竹このみさんも5月に一人芝居で『わたし、こども部屋おばさん』という作品を上演していました。箱入り娘である自身の人生を振り返りながら、自分が今後どう生きていくのかを自ら問いながら観客へも現在地を開いてくような舞台で印象深かったです。

贅沢貧乏『わたし、こども部屋おばさん』 / photo by Hideto Maezawa

丘田:一方、コラボレーションの意味合いで上演される個人企画にも注目が集まっている気がしています。3月には滋企画の新作で、元FUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介さんを作・演出に招いた『ミッキーアイランド』を上演していました。滋企画は青年団の俳優・佐藤滋さんが主宰する企画で、昨年上演された『ガラスの動物園』(演出:額田大志)では読売演劇大賞にも複数部門で選出され、話題を呼びました。あと上半期では、5月に阿佐ヶ谷スパイダースの内藤ゆきさんが、夏の毛になるという個人企画で自身で書き下ろした『春が来る』という作品を上演し、ウンゲツィーファの本橋龍さんが演出をされていました。こちらもコラボの意義と個性が光る印象的な公演でした。

滋企画『ミッキーアイランド』 / Photo by Nishi Yasuhiro

川添:俳優が主体となるユニットは上演作品に幅が生まれるのでいいですよね。私は常々、若い俳優はもっとさまざまな種類の戯曲を演じたらいいのにと思っているんです。

ーその理由はどういうところにあるんですか?

川添:俳優の筋力をつける意味でも、古今東西問わずあらゆる戯曲に触れるべきだし、常に誰かに選ばれるのを待つ存在でいるよりも、今の時代に何を上演するべきか、自分たちで主体性を持って選ぶことが豊かな表現に繋がっていくと思うんですよ。固定の作家の作品しか上演しない劇団に所属しているとそれは難しいし、その俳優の一面しか見られない。だから俳優の個人企画を観に行くのは、意外な発見があって好きなんです。

あと例えば、海外戯曲や古典作品のような既成戯曲を上演することになったら、全員がフラットな立場、関係性で、戯曲を解釈して話し合ったりできるじゃないですか。長年、小劇場ブームの余波で、作・演出を兼ねる人が主宰も務める集団はまだまだ多いです。劇団の方向性も、作品の方向性も、主宰の方針に劇団員が従う……という劇団も少なくなかったと思いますが、カンパニー全体の関係性が平等な方が健全だよね? という劇団も増えてきた。その結果、主体性を持つ俳優も増えてきたのではないでしょうか。

丘田:少し生々しい話ではありますが、海外戯曲を扱うと、脚本が書き上がるのを待たなくてもいいという安心感のもと、時間をかけたクリエイションができるという面もあるのかなと思いました。劇団スポーツが番外企画でハロルド・ピンターの『THE DUMB WAITER』を上演していましたが、川添さんが仰るようにディグりがいのある海外戯曲をカンパニー内でああでもないこうでもないと言いながら試してみることでしか立ち上がらない、現在の空気をふんだんに含んだ上演の形は確かにあるなと思いました。

劇団スポーツ『THE DUMB WAITER』

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