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【2026年上半期振り返り・演劇編①】ナカゴー再始動、岸田戯曲賞と一人芝居の潮流

2026.10.15

#STAGE

ナカゴーの再始動の話からスタートした、ライター陣による「2026年上半期の演劇界を振り返る」座談会。

今回は、丘田ミイ子、川添史子、早川大輝の3名に集まってもらい、印象的だった作品や、今の演劇界で気になっていることについて語ってもらった。

前編では、3人が2026年上半期で印象に残っている作品についてのほか、音楽と演劇の組み合わせ、岸田國士戯曲賞の話を経て考える一人芝居の増加、さらには演劇作品の上映会が持つ意味などについてお届けする。

ナカゴーの再始動、『金閣寺』モチーフのダンス公演、エネルギーの塊のような端栞里

ーまずは、2026年上半期で一番印象的だった公演についてお聞きしたいです。

丘田:私は、ナカゴーの『ずっと洋画みたいだね』です。主宰の鎌田順也さんがお亡くなりになられてから初めての公演だったんですが、東京にこにこちゃんの萩田頌豊与さんが脚本と演出を担当して浅草九劇で上演されたんです。もちろん鎌田さんの作品への恋しさもあったんですが、ナカゴーの俳優さんたちが見られるという喜びもありました。萩田さんも全力で俳優さんへの当て書きをしていて、会場の熱気からも観客の心を掴んだんじゃないかなと感じました。

ナカゴー『ずっと洋画みたいだね』 / 撮影:西出結

川添:つい最近、仲代達矢さんが逝去され、2027年2月末をもって俳優養成所「無名塾」が解散されることが発表されましたよね。やはり演劇集団は中心人物が亡くなると存続が難しい。「消えていく表現」である演劇らしさでもあるとは思いつつも、今回のナカゴーのような展開は、すごく嬉しい! 今後の動きに注目します。

丘田:ナカゴーの俳優さんは、ナカゴーの公演でしか得られない演技体のようなものを持っている気がするんです。それは鎌田さんが残された大きなものでもあると思うので、それを鎌田さん以外の方が脚本と演出を担当した作品でも感じられるんだという感動がありました。

早川:僕が最初にナカゴーの戯曲に触れたのは、一去年画餅がやっていた『ホテル・アムール』(作:鎌田順也、脚色・演出:神谷圭介とチーム画餅)でした。鎌田さんが脚本と演出を担当していた頃のナカゴーは、ずっと観たかったんですが、機会が得られなかったんです。なので、『ずっと洋画みたいだね』を観れて嬉しかったんですが、鎌田さんがいた頃のナカゴー作品とは結構違うんですか?

丘田:うまく言えないのですが、ある意味でナカゴーではないという潔さがありましたし、ハッピーエンドへの強いこだわりやボケの多さには萩田カラーを感じました。一方でとてもナカゴー的だった面もあって、ナカゴーのお家芸として、最初に俳優さんがずらっと並んで「何分後にこういうセリフを言ったらクライマックスです」とか、「こういうことを言ったら私はこうなります」みたいなネタバレを1人ずつ言うくだりがあるんです。『ずっと洋画みたいだね』では、冒頭に俳優さんが劇中のそれぞれのキャラクターの印象的なシーンを突然やる時間があり、後々に劇中でそれが回収されるんです。あれはナカゴーのお家芸を萩田さん流にやったんだなと思いました。

川添:今丘田さんが仰ったナカゴーのお家芸の部分って、鎌田作品の面白い特徴だと感じていました。ある種、ネタバレを気にするような多くの演劇へのアンチテーゼになっていたと思うんです。演劇の本質的な魅力って物語展開以外の部分にも詰まっていますから。なので、勝手に鎌田さんには演劇人の反骨心のようなものを感じていて、常に新作が気になる劇作家・演出家でした。2024〜2025年には、ユーロライブや北とぴあでナカゴーや(鎌田が主宰したユニット)ほりぶんの上映会がありましたよね。今後もああいう機会があると、早川さんのような形でナカゴーを知った人がこの先も鎌田作品に触れられる。いい企画だと思いました。

私が直近で観て一番面白かったのは、東京芸術劇場のプレイハウスでやっていたマルコス浄瑠璃『金閣寺』ですね。もしかしたら今年ベストになるかもしれないと思っています。三島由紀夫の『金閣寺』をモチーフに、スペインの振付家のマルコス・モラウが演出したダンス作品なんですが、出演者にはコンテンポラリーのダンサーや歌舞伎俳優、文楽人形遣い、スペインの歌手、それからSTARTO ENTERTAINMENTのアイドルの方までいらっしゃいました。

丘田:『金閣寺』の主人公がいて、物語が展開していくようなダンス公演だったんですか? それとも翻案みたいな感じでした?

川添:物語をなぞっていくわけではなく、金閣寺が燃え落ちたあとの廃墟を舞台に、さまざまなパフォーマンスが展開する内容でした。床には金閣寺が燃え落ちた灰のようなものが堆積し、演者が動くたびに灰がキラキラと舞い上がるんですよ。男女ともに衣装はボリュームあるロングスカートなので、スカートが揺れると灰も巻き上げられる。美しかったです。マルコス・モラウさんはかなり独特な美的ワールドを持っているので、魔法みたいな場面が次から次に現れてくるような舞台だったんですよ。日本の文化にインスピレーションを受けた作品でしたが、オリエンタリズムには陥らない。それもすごく好感触でした。休憩も含めて約2時間とそれなりに長めだったんですが、体感としては「秒」でした。

早川:僕は、南極の端栞里さんの一人芝居企画である端栞里と高熱『この景色ぜんぶアクスタにするよ、アリーナ』ですね。第2回公演となる今回は、ロロの三浦直之さんを脚本・演出に迎えていました。僕は端さんのことを凝縮されたエネルギーの塊のような俳優だと思っていて。第1回公演の『アタラント号・サマーベッド・浮遊』も観ているのですが、そのときは端さんが持つエネルギーを舞台上を走り回ったり、早口でセリフを言い続けたりすることで発散させるような表現が多かったんです。そうでもしないと、端栞里という高エネルギーの塊が舞台上に留まれないとでも言わんとするばかりで。

一方で『この景色ぜんぶアクスタにするよ、アリーナ』は、派手な作劇ではないものの、もっと近い距離で端栞里という俳優に触れられたような感覚がありました。「栞川ひだり」という歌手が小さなライブハウスで初めてライブを行うというシチュエーションの作品だったのですが、音楽劇と銘打っていたこともあり、Enjoy Music Clubの江本祐介さんが作った曲を歌唱するシーンがとても印象的で。端さんの歌唱力と、楽曲のクオリティがめちゃくちゃ高いうえ、演劇の終幕とライブシーンの終演が完全に重なる演出だったので、まるで本当に「栞川ひだり」のライブを観たかのような余韻がありました。

端栞里と高熱『この景色ぜんぶアクスタにするよ、アリーナ』 / 撮影:わたしのような天気

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