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松岡茉優の演技の変遷。『ダウンタイム』『フェンス』の低温の演技に至るまで

2026.10.7

#MOVIE

主演映画『男ともだち』が公開を控え、Netflixのドラマ『ダウンタイム』でも主人公の沼田文を演じている松岡茉優。

『ダウンタイム』は、Netflixのランキング・日本の週間TOP10で2週連続1位を獲得。また、週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)でも2位にランクインするなど、大きな話題となっている。

同作の中で、どこか冷めた雰囲気をまといながらも、まっとうな倫理観で生きる天才形成外科医を演じている松岡の魅力について、過去作から振り返りたい。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

『桐島、部活やめるってよ』『あまちゃん』で一躍話題に

筆者が初めて松岡茉優を意識したのは、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)だった。彼女が演じたのは、ある高校のクラスの中で、目立つ女子4人グループのひとりである野崎沙奈。圧倒的な美人の飯田梨紗(山本美月)や、実はグループに所属しながらも、どこか所在なさげな東原かすみ(橋本愛)、生真面目な宮部実果(清水くるみ)とは違い、どこか器用で要領が良く、たぶん男子の中では最もスクールカースト的にトップにいる菊池宏樹(東出昌大)とつきあっているのに、それでもどこかコンプレックスもあるのか人を見下すような部分のある沙奈という役がけっこう怖かった。それで演じている松岡茉優のことが気になったのである。

朝ドラ『あまちゃん』(2013年)でもヒロインが所属するアイドルグループのリーダーを演じていた。このときは、そこまで注目していなかったのは、この役が、割とまっすぐな性格の役だったからだろうか。また、映画『ちはやふる』『蜜蜂と遠雷』の演技でも、注目を集めた。

バラエティ番組や伊藤沙莉とのPodcastで見せる素顔

しかし、坂元裕二脚本のドラマ『問題のあるレストラン』(2015年)で再び気になってくる。彼女が演じた雨木千佳は、対人恐怖症で、常にパーカーのフードをかぶり、マスクをつけている。それまで明るい役が多かった松岡が、無口で暗く、心を閉ざしている役を演じていたので、そのギャップに驚いたのだった。

また、同じく坂元裕二作品としては『初恋の悪魔』(2022年)にも出演。ふたつの人格を持つ、謎めいた刑事を演じ切っていた。

大九明子監督、綿矢りさ原作の映画『勝手にふるえてろ』(2017年)では、主役の江藤良香を演じた。良香は恋愛経験がなく、中学の頃から一途にイチ(北村匠海)という同級生のことを思い続けている。しかし、会社の同期のニ(渡辺大知)という男性から告白され、少しずつ人とのかかわり方が変わっていく。頭の中でいろんな妄想が巡りまくって、自意識や思考が爆発しそうな役である。漫画的な表現もできるし、コミカルにもできるのだろうが、松岡が演じると、独特の「切実さ」が伝わってくるのだった。

松岡は『ENGEIグランドスラム』の司会などでも活躍していたり、『松岡茉優&伊藤沙莉「お互いさまっす」』や、ハロー!プロジェクトのメンバーを毎回1対1のゲストに迎えてトークを繰り広げる、『松岡茉優の“HALOOPS” Journey』などのPodcast番組などにも出演しており、、その素の表情やしゃべりというのも目にすることがある。

松岡茉優と伊藤沙莉によるPodcast『お互いさまっす』で仲良しの2人の本音トークの空気感もよい

そのときは、楽しい雰囲気なのだが、昨今の作品では、正反対の冷めた感じのやさぐれた役が増えてきていると感じていた。

やさぐれた役はいつから?

特に、その印象を強くしたのは、野木亜紀子が脚本を執筆したWOWOWのドラマ『フェンス』(2023年)だった。このドラマでは、週刊誌のフリーライターで、編集者からの指示で沖縄で起こった米兵による性的暴行事件を取材する小松綺絵を演じていた。

https://youtu.be/LOq7J377XfQ

このドラマで印象に残ったのは、温度は高くはないのだが、常に沸々とした怒りのようなものを内心に持っているようなキャラクターで、その情熱がときおり爆発するようなところだった。このときから、普段のしゃべりとは違う、低いトーンで温度の低い喋り方を見るようになり、それがとてもいいなと思うようになった。

『ダウンタイム』での名演で一躍話題に。やさぐれとアツさの共存が魅力

この低いトーンのやさぐれた感じの演技は、『ダウンタイム』でも遺憾なく発揮されている。

https://youtu.be/bX1lt9yF_3s

天才的なオペ技術を持つ形成外科医・沼田文(松岡茉優)。「医療で命を救う」という信条の彼女が大学病院を去り、行き着いたのは「美で人を救う」ことが信条のカリスマ美容外科医・遠山凜(仲里依紗)のクリニックだった。

松岡演じる沼田文は、常に何かに不満を持っているような、何かをあきらめたような表情と声が魅力的である。かと思えば、手術に対しては圧倒的な技術力を持ち、また人命を第一にするというゆるぎのない倫理観も持っている。

沼田文(松岡茉優)が手術をするシーン

反対に、人命も大切だが、人の心の不安定さにも向き合わなければならないという倫理観を持つ、もう一人の主人公で医師の遠山凜(仲里依紗)も魅力的だ。この2人のコントラストと、共闘していく姿に、素直に魅せられてしまった。

左からカリスマ美容外科医の遠山凜(仲里依紗)、沼田文(松岡茉優)

個人的には松岡の、こうした、やさぐれながらもアツさも持っているという主人公をもっと見たいと思ってしまうところだが、それ以外の役を演じても、説得力を感じさせてくれるだろう。

映画『男ともだち』も、どうにも説明できない複雑な内面と関係性を繊細に描いていたが、こうした個人的な世界の演技も『勝手にふるえてろ』から続いていて、すっと映画に入っていけた。次にどんな役を演じるのか、わくわくさせてくれる俳優だ。

https://youtu.be/n7_lcMQlXyQ

Netflixシリーズ『ダウンタイム』

話数:全8話(一挙配信)
9月17日(木)よりNetflixにて世界独占配信中

松岡茉優 仲里依紗
間宮祥太朗 田中みな実 萩原利久 長井短 渡辺大知 中川家礼二 シシド・カフカ
城田優 増子直純 武田創世 泉里香 田村健太郎 篠井英介
天野はな 景井ひな 研ナオコ 野呂佳代 古川凛 安達祐実 風間俊介 Kōki,
永作博美 渡部篤郎

監督:Yuki Saito
エグゼクティブプロデューサー:髙橋信一(Netflix)
プロデューサー:三宅はるえ 茂木克仁
脚本:池上純哉
メインテーマ:坂東祐大
音楽:MON/KU 青木沙也果
撮影:立石洋平
照明:小林仁
美術:寒河江陽子
編集:矢野数馬
録音:西山徹
サウンドデザイン:久連石由文
特殊メイク特殊造形ディレクション:Amazing JIRO
VFXスーパーバイザー:野﨑宏二
スケジュール:平林克理
助監督:安食大輔
企画プロデューサー:工藤伸一
制作プロダクション:K2 Pictures
企画・製作:Netflix

映画『男ともだち』

11月6日(金)新宿ピカデリー他にて全国ロードショー

松岡茉優 成田 凌
井上祐貴 中島 歩 咲妃みゆ 三浦貴大
辻󠄀 凪子 中山求一郎 比喩根(chilldspot)
余 貴美子 池畑慎之介

原作:千早 茜『男ともだち』(文春文庫)
監督:三島有紀子
脚本:澤井香織 音楽:安川午朗
劇中歌:chilldspot「lost child」(RECA Records)
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ 制作プロダクション:カズモ

©2026『男ともだち』製作委員会

<ストーリー>
京都に暮らすイラストレーター、神名。30歳を目前にした彼女は人生に静かな行き詰まりを感じていた。絵本で賞を獲り脚光を浴びたのは何年も前、最近は無茶なクライアントワークに神経をすり減らし、惰性や不毛な恋愛に逃げる日々を送っている。同棲中の恋人・彰人とは会話もほとんどなく関係は冷めていく一方、妻子ある医師・真司と逢瀬を重ねるも満たされはしない。そんなある日、神名の元に大学時代の先輩・ハセオから突然電話がかかってくる。昔から自分勝手で人間関係に不器用なのは自覚している神名だったが、出会った頃からなぜか自分のことを深く理解をしてくれる“男ともだち”と7年ぶりに再会。あの頃も今も変わらない温度で接してくれるハセオと過ごす、京都、富山、広島での“3つの夜”が神名の人生を大きく動かしていく。

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