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『ミッドナイトタクシー』最終回直前レビュー 「孤独の肯定」を描く娘と母の物語の行方

2026.7.23

#MOVIE

©NHK
©NHK

夜ドラ『ミッドナイトタクシー』(NHK総合)が最終回を迎える。

毎週月曜~木曜の夜10時45分という夜も深い時間に始まるドラマは、魔法使いや宇宙人、未来人に至るまで、多様なタクシーの乗客それぞれの物語を丁寧に描き続けてきた。

乗客を演じるゲスト俳優も、兵頭功海、筒井真理子、鈴木浩介、西田尚美、篠原ゆき子など映画並みの豪華さに。

主人公・象子(古川琴音)と母・葉月(山本未來)の過去や、タクシーの常連客・柴崎八雲(中村蒼)と象子の友人・寿々木麗華(伊藤万理華)の恋の行方も気になる本作について、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター藤原奈緒がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承ください。

「選ばなかった過去」と「選んだ今」の肯定

鎌田ちひろ(筒井真理子)をタクシーに乗せる蘭象子(古川琴音)©NHK
鎌田ちひろ(筒井真理子)をタクシーに乗せる蘭象子(古川琴音)©NHK

『ミッドナイトタクシー』第19話のある光景が忘れられない。その日、深夜専門のタクシードライバーである主人公・蘭象子(古川琴音)は、行き倒れるように路肩で寝ていた女性・鎌田ちひろ(筒井真理子)をタクシーに乗せる。やがてタクシーは、ちひろが持っていた地図の目的地にたどりつく。そこにはどこからか照明が地面を照らしていて、満月のように光っている。あくまで現実世界での出来事なのだが、まるでタクシーが月に到着したかのようなその非現実的な映像は、まさにこのドラマらしい光景に思えた。

ちひろを連れて「月」に到着した象子のタクシー©NHK
ちひろを連れて「月」に到着した象子のタクシー©NHK

「月」での出来事は、ちひろにとっての「存在しなかった未来」でもある。象子のことを、ちひろが結婚する前に思いを寄せていたのだろう高校時代の同級生「ミチさん」という女性だと思い込んで話し続けるちひろに対し、最初は否定していた象子だが、最後には「ミチさん」のふりをして話し相手になる。迎えに来たちひろの息子(武田航平)の話によると、「結婚する前の23歳に戻っている」ちひろに、象子は「ミチさん」として「ちひろさんにはきっと、たくさんの幸せが待ってますよ」と投げかける。

ちひろの「選ばなかった過去」と「選んだ今」を肯定した象子©NHK
ちひろの「選ばなかった過去」と「選んだ今」を肯定した象子©NHK

認知症を抱えると思しきちひろにとって、「ミチさん」との過去に心残りがあったのだとしても、その後の彼女の未来にたくさんの幸せが待っていたことは、優しそうな息子の存在からして明らかだ。象子はつかの間の会話の中で、「選ばなかった過去」と「選んだ今」を両方抱えて生きているちひろの寂しさを肯定してみせた。象子がちひろに与えたものはきっと大きい。

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