9月25日(金)から全国公開される映画『ナギダイアリー』より、各界の著名人によるコメントが公開された。
同作は、平田オリザの戯曲『東京ノート』に着想を得たオリジナル脚本の作品。監督・脚本は深田晃司。松たか子が主演を務め、石橋静河、松山ケンイチらが名を連ねる。近くの山の木でひとり彫刻を作る彫刻家で、別れた夫の姉の寄子(松たか子)のもとを、建築家として東京と台湾で活躍してきた友梨(石橋静河)が訪れる。穏やかな「ナギ」での生活や人々との出会いを通して、寄子の知られざる喪失に触れた友梨にも変化が起きていく。

また、同作は第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、公式上映では約7分間にわたるスタンディングオベーションが巻き起こった。既にフランスや台湾など15を超える国と地域での公開も決定している。
あわせて、公開に先駆けて作品を鑑賞した映画監督の濱口竜介、三宅唱をはじめ、音楽やアートの領域からは矢野顕子、STUTS、吉澤嘉代子、和田彩花など、総勢13名からのコメントが寄せられた。
コメント一覧(全文/順不同・敬称略)
幾つも流れる支流が大河に流れ込む。それはまず『ナギダイアリー』という映画のストーリーテリングについても言えるが、まさに監督のフィルモグラフィのようでもある。間違いなく、深田晃司の現時点での最高傑作。
清水のような石橋静河の声が今も耳に谺(こだま)する。
濱口竜介(映画監督)面白い。なんて凛々しい映画なんだろう! ノミで楠を彫る音のように、どの人もすべての言葉を穏やかに、毅然と発しています。相手を見ながら言葉を選び、時に間違い、言い直しながら、前に進みます。
その声や姿は、砲弾の音や社会の無言の圧よりも、ずっとずっと力強くて爽やかです。
三宅唱(映画監督)山がある。誰かが黄泉に向かう日があり、帰ってくる日がある。
実弾の音がこだまする。ああ、ここがナギなんだと思った。
ナギという舞台があるから演じられたであろう、人が決心する姿をみせてもらった。
彼らがこの町に見守られ歳をとっていく未来は、きっと孤独ではない。
小森はるか(映像作家)誰もが無自覚に虚像を求める。不確かな自らを掴むかのように、鉛筆を動かし、粘土を捏ね、木彫を削り出す手。半透明を彷徨(さまよ)う人々が架空の町ナギで過ごした特別な日々の記録(ダイアリー)。
長塚圭史(劇作家、演出家、俳優)小さな村や大きな街のように、人の気持ちは点在している。
それらを結ぶ河川を、高台からじっと見つめる松たか子を誘って、
わたしたちは深田晃司監督の舟に乗る。旅は始まったばかりです。
矢野顕子(ミュージシャン)登場人物の背景を感じさせる繊細な感情表現と、静かで綺麗な映像、感情と情景に寄り添う音楽。そのすべてが静かに溶け合っていて、とても素敵でした。
創作は孤独な活動だけど、決して孤立してる訳ではなく、むしろ他人や外の世界との関わりによって成り立っているものだということを改めて感じます。
そして、寄るべのない存在は誰かの拠り所になり得るのだと思いました。改めて劇場でも鑑賞したいです。
STUTS(プロデューサー/トラックメーカー)大きな事件が起こるわけではないのに、物語はずっと想像のつかない方向へ進んでいく。予測できない心地よさに、最後まで不思議な時間を過ごしました。
彫刻でその人の心の手触りを抽出していくようでした。静かに見つめられる時間が人を少しずつほどいていく。その手つきに身を委ねたくなる映画でした。
吉澤嘉代子(シンガーソングライター)「恋愛裁判」に続き、深田監督の作品に触れられたことをとても嬉しく思います。
静かな時間の流れの中で、人との出会いや選択が少しずつ人生を変えていく様子がとても丁寧に描かれていて、観終わったあとも余韻が心に残りました。
それぞれの「生き方」にそっと寄り添ってくれる、穏やかで温かな作品です。
齊藤京子(俳優)音の映画だった。不穏な砲声が、外国の音楽が、決然たる声が、アンビバレントな意味を持ちながらナギの町に響く。印象的な音の数々に感情を揺さぶられながら観た。
滝口悠生(小説家)人は「役割」ではなく、「あなたならこれができる」と才能を期待されたとき、自分の未来を信じられるのかもしれない。それはたった一人でもいい。その一人は自分でもいい。いつからか夢を見るにも採算を考えるようになった私に、寄子の創作とナギの風景が、何にもならなくても夢を見てよかった頃の自分を思い出させてくれた。
バービー(お笑い芸人)都会ではない場所、地域の繋がりがあって、人との距離感も近い場所で、もうひとつの物語がゆっくりと動きだす。奈義の豊かな自然、強い風、駐屯地、美術館などの要素が物語に緩急と異なる視点を与える。世代間、関係性がすれ違いながらも交差し、誰かがではなく、誰もが悩みながら生きていた。
和田彩花(詩と言葉のアーティスト)深田監督のまなざしは、けして断罪しない。田舎も都会も、男も女も、ひとりもふたりも。ひとりでいることの切なさも、だれかを求める悲しみも、深田監督のフィルムはいつも深く受け止めてくれる。ナギの静かに美しい風景が、きっとたくさんの人の痛みを回復させるはずだと私は確信している。
三宅香帆(文芸評論家)彫刻制作を介して形づくられていく女性同士の関係と、人知れず息づきはじめた少年同士の愛の萌芽が互いに響き合う。ひとが多面的で複雑な存在であることを理解し、しっかりと見つめること。それが世界をよりよくするかもしれないことを、『ナギダイアリー』は教えてくれる。
児玉美月(映画批評家)
映画『ナギダイアリー』

9月25日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース ほか全国ロードショー
松たか子 石橋静河
川口和空 藤原聖 藤間爽子 水間ロン 申瑞季
松山ケンイチ
監督・脚本 深田晃司
製作:四宮隆史 エグゼクティブ・プロデューサー:大野二郎 Guillaume Morel Jossette Atayde Maria Sophia Atayde Marudo
プロデューサー:大野敦子 長井龍 角田道明 コ・プロデューサー:小山内照太郎 Carine Chichkowsky 陈思恩 佐藤央
撮影:四宮秀俊 照明:加藤大輝 録音:益子宏明 美術:大月由香里 彫刻:吉田愛美
ヘアメイク:菅原美和子 スタイリスト:荒木里江 衣裳:渡部祥子 キャスティング:吉川威史
助監督:鹿川裕史 制作担当:山村亘 編集:Sylvie Lager VFXプロデューサー:平野宏治 カラリスト:Sorawich Khunpinij
音楽:李沛芩 リレコーディングミキサー:Olivier Goinard エンディングテーマ:イーノ・チェン
International Sales:mk2 Films
助成:Aide aux cinémas du monde – Centre national du cinéma et de l’image animée – Institut français,
文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会, White Light Studio, mk2 Films 後援:奈義町
製作:スターサンズ 八朔ラボ Survivance Momo Film Co. Nathan Studio ワンダーストラック 制作プロダクション:Lat-Lon
配給:スターサンズ
2026/日本、フランス、シンガポール、フィリピン/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/カラー/110分/映倫区分:G
【ストーリー】近くの山から切り出される木でひとり彫刻を作る寄子。ある日、東京と台湾で建築家として活躍してきた友梨は、 数日間の休暇をとって、別れた夫の姉・寄子のもとを訪れる。都会にはない「ナギ」での穏やかな生活。妻を亡くした寄子の幼なじみの好浩、そして息子の春樹とその親友の圭太――人々との出会いは、日常に小さな揺らぎをもたらしていく。やがて、彫刻のモデルを毎晩つとめるなかで寄子の知られざる喪失に触れ、友梨にも変化が起きていく。9月25日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース ほか
全国ロードショー
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