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ドラマ『リブート』最終回直前レビュー 善良な夫婦vs裏社会、戦いの行く末は

2026.3.29

#MOVIE

©TBS
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民放ドラマで今期唯一の視聴率2桁を記録し、TVerお気に入り登録数も全ての冬ドラマで1位、第1話のTVer配信開始後8日間再生数が歴代最多となるなど、記録ずくめとなった日曜劇場『リブート』(TBS系)が最終回を迎える。

鈴木亮平が「顔を変える=リブート(再起動)」によって一人二役を演じることで始まった本作は、物語の後半に、まさかの人物もリブートしていたことが明らかになり、毎週のように敵味方が入れ替わるスリリングな展開で視聴者を楽しませ続けた。

主人公・早瀬役の鈴木亮平と、リブート前の早瀬を演じた松山ケンイチらがSNS上で交わす応酬も話題となっている本作について、前半を振り返った記事に続いて、ドラマ映画ライターの古澤椋子がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

緻密で強固な黒岩勉の脚本に、毎話驚かされる

2人の鈴木亮平が触れ合う驚きのシーンもあった第5話©TBS
2人の鈴木亮平が触れ合う驚きのシーンもあった第5話©TBS

日曜劇場『リブート』を振り返ると、第5話以降の後半は、信じたものが次の話では裏切られ、視聴者が敵として見定める相手も二転三転する激動の展開となった。『リブート』の登場人物たちに欺かれることがどんどん癖になっていく、そんな冬だった。振り回されると分かっているのに、視聴をやめられない。むしろ、もっと裏切って欲しいと中毒のようになってしまうのは、何よりヒットメーカー・黒岩勉の脚本の妙によるものだろう。

『リブート』は、秘密と謎の仕掛け方と明かし方がとても巧みなドラマだ。本物の儀堂歩(鈴木亮平)の行動の謎、幸後一香(戸田恵梨香)の正体や目的、10億円と100億円の横領犯、真北兄弟(市川團十郎、伊藤英明)の動向など、物語後半は、どの秘密をどこで明かすか、どの謎を次の話まで引っ張るかを調整することで、「リブート」という設定を使って生み出せる連続ドラマとしての面白さの最大値を叩き出しているように思う。毎話、緻密で強固な構成に新鮮に驚かされている私たちは、黒岩の掌の上で転がされている。

謎の裏にあった、互いを思い続ける夫婦の絆

ついに一香(戸田恵梨香)=夏海(山口紗弥加)という真実に辿り着いた早瀬陸©TBS
ついに一香(戸田恵梨香)=夏海(山口紗弥加)という真実に辿り着いた早瀬陸©TBS

本作は、街のケーキ屋のパティシエ・早瀬陸(松山ケンイチ / リブート後:鈴木亮平)が、妻・夏海(山口紗弥加)殺しの容疑で警察に追われたことをきっかけに、悪徳警官・儀堂歩に顔を変えて成りすまし、謎の公認会計士・幸後一香の手ほどきを受けながら、夏海の死の真相を追う物語だ。

第5話から第7話にかけて、早瀬は、夏海を殺した犯人は儀堂なのか、もしくは一香なのかと振り回され続けていた。それは視聴者も同じ。一香からは儀堂が敵だと聞かされ、儀堂からは一香が敵だと聞かされる。どちらも同じように疑わしい。敵と味方が反転する展開が続いていた。

物語の大きなターニングポイントになった第6話時点では、早瀬は儀堂と協力することを決め、一香を敵だと見定めていた。その後、裏社会のダークバンカー・合六(北村有起哉)によって拘束された早瀬と儀堂。儀堂は一香とのやり取りの末、100億円横領の罪を着せられ、合六によって殺されてしまう。早瀬は儀堂に守られたのだ。

一香が夏海を殺した証拠を掴もうと必死になる早瀬は、儀堂の犠牲を経て、より儀堂の人格に近づいていく。しかし、一香の行動を追う中、ついにある真実に辿り着く。夏海は死んでいなかった。彼女もまたリブートして、一香として生き直していたのだ。

夏海とされる遺体が見つかる3年前、本物の夏海は、やってもいない10億円横領の罪を償うために、ラウンジで働いていた幸後一香にリブートしていた。その後、夏海は合六に逆らえずに、自身の夫である早瀬も儀堂にリブートさせることに。誰が敵か味方か分からない、視聴者を混乱に陥れる展開の裏には、互いを思い続ける夫婦の絆があった。

夏海を殺したのは、儀堂か一香かという、早瀬と視聴者に突きつけられた謎は、実は『リブート』が仕掛けた謎の表面でしかなかった。そして、その奥には、常軌を逸した悪意が隠されていたのである。

合六の二面性に説得力を持たせる北村有起哉の演技の幅広さ

物語の展開に沿って、醸し出す異常性の加減を調節する北村有起哉©TBS
物語の展開に沿って、醸し出す異常性の加減を調節する北村有起哉©TBS

物語の序盤は、金銭を横領される被害者であった合六だったが、第8話で、すべての横領事件は合六による自作自演であることが明らかになった。合六は、マネーバンカーとして手にした金を、部下に盗まれたとクライアントに虚偽の報告をし、次期総理の座を狙う野党第一党の党首・真北弥一(市川團十郎)に献金していたのだ。そして、クライアントへの体裁上、部下を始末したと見せかけるために、リブートを利用していた。合六の「選挙が近いでしょう」というセリフと、それを発したときの目つきからは、大義のためならどんなことでもできる狂人っぷりが伝わってきた。

一部の部下にしか明かしていない本当の闇を語る時、合六を演じる北村有起哉の瞳には光がなく、どこか遠くを見つめている。物語の展開に沿って、北村は、醸し出す異常性の加減を調節していたように見えた。

北村は近年、朝ドラ『おむすび』(NHK 総合)での米田聖人役や『小さい頃は、神様がいて』(フジテレビ系)での小倉渉役など、犯罪者とはほど遠い穏やかな中年男性役を多く演じてきた。『リブート』における合六も、表社会では善良な経営者だ。人畜無害な一般人から作品一番の悪役まで演じられる役柄の幅広さが、合六の二面性に説得力を持たせている。

戸田恵梨香の 「一人三役」の演じ分け

リブート前の夏海(山口紗弥加)と本物の一香©TBS
リブート前の夏海(山口紗弥加)と本物の一香©TBS

夏海のリブートが明かされた第8話は、つまり、戸田恵梨香の一人二役を堪能できる回であった。

ここで特筆しておきたいのは、戸田は鈴木とは異なるアプローチで一人二役を演じなければならなかった点だ。戸田は、物語の序盤は夏海の人格を持っていることを視聴者に悟らせないようにしながら、第8話、第9話では夏海であることを納得させなければならない。また、本物の一香を演じるときには、夏海が真似ていることが分かる程度に、表現を微妙に変化させる必要がある。本物の一香、一香として生きている夏海、早瀬の前での妻としての夏海の3つに、違いを出さなければならないのだ。

戸田の的確なチューニングを実感したのは、一香と、一香の顔に変えた後の夏海、つまりは共に戸田が演じる2人が誕生日ケーキを挟んで向かい合う場面。本物の一香は目尻をクシャっと緩めて大きな口を開けて笑っているのに対し、中身が夏海である一香は表情を大きく変えず、少し悲しげに笑う。その悲しげな笑いは、リブート前の夏海を演じる山口紗弥加を思い起こさせた。

鈴木は成りすましていることが視聴者にも伝わっている前提での芝居だったが、戸田の場合は、成りすましが物語の重要な秘密であるため、視聴者に悟らせるわけにはいかない。悟らせないために効果的な方法の1つは、一香自身を魅力的な存在として演じることだろう。パッと見は存在感のある強い女性に見せながら、どこか哀愁が香ってくる一香のキャラクターは、戸田の優れた演技によってこそ成立したと言っていい。

犯人探しの物語から、善良な夫婦vs裏社会の物語へと「リブート」した終盤

監察官・真北正親(伊藤英明)は政治家・真北弥一(市川團十郎)の弟で合六のスパイだった©TBS
監察官・真北正親(伊藤英明)は政治家・真北弥一(市川團十郎)の弟で合六のスパイだった©TBS

合六と弥一は、国をリブートするために、100億円を使うと言っていた。しかし、合六が弥一に献金した100億円は裏社会に流通していた金だ。合六自身が身を切っているわけではない。そして、その100億円の背景では、早瀬家の人々が犠牲になっている。一般人が妻を殺した犯人を探す物語として始まった本作は、善良な夫婦vs権力に固執する裏社会の人間たちの物語としてリブートしたのだ。

第9話では、早瀬と夏海が味方だと信じていた監察官の真北正親(伊藤英明)が、警察内部に潜む合六のスパイであることが明らかになった。そして、夏海は合六の仲間に捕えられてしまう。同じ頃、早瀬は合六直属の部下でありながら、自分の仲間を殺した合六に恨みを持つ冬橋(永瀬廉)を説得することに成功するも、そこに合六の裏組織の幹部・菊池(塚地武雅)が表れ、再び拘束される。頼りにしていた味方には裏切られ、助かったと思いきや再び敵が現れる。最終話を前に、早瀬夫婦はこれ以上ないほどの絶体絶命に陥ってしまった。

裏社会を生きる人間の思惑に巻き込まれ、国の立て直しの犠牲になろうとしている夫婦は、愛する息子・拓海(矢崎滉)と母・良子(原田美枝子)の元に帰れるのか。振り回され、追い詰められ続けた早瀬と夏海が、合六にどのような術で立ち向かうのかが、最終回で最も大きな見どころになりそうだ。欲のためなら他人が犠牲になることを厭わない悪役たちが一掃される、清々しいラストになることを願いたい。

日曜劇場『リブート』

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TBSにて毎週日曜よる9時から放送中
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/REBOOT_tbs/

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