「これはカントリーのアルバムではない、ビヨンセのアルバムだ」(ビヨンセInstagramより)
過去10年間自らの作品を通じて黒人音楽の伝統を追跡し、その位置を確立してきたビヨンセ。3部作となるシリーズの1作目『RENAISSANCE』では、ハウスやダンスサウンドに傾倒し、ダンスホール、ブラックネスとクィアへの賛辞を描いた。
続編となる今作『COWBOY CARTER』は、カントリーミュージックを出発点として、その周辺のナッシュビルサウンド、クラシックロック、現代のラップ、そしてR&Bまでもを探求しながら、文化的な「アメリカらしさ」を問いかける作品となった。なぜビヨンセは今、カントリーを選んだのだろう。そして、「ビヨンセのアルバムだ」という言葉の意味とは?
INDEX
カントリーミュージックとは
そもそもカントリーミュージックとは、1920年代、北米の南北に聳えるアパラチア山脈の南方にて生活していたイギリス系移民が持ち込んだ音楽。民謡 / バラッドがベースとなっており、彼らはアフリカ系アメリカ人との交流も盛んだったことから、ゴスペルやブルースの要素も融合されている。例えば、使用される楽器「バンジョー」はアフリカン・アメリカンが、アメリカにおいてアフリカのいくつかの楽器の特徴を取り入れて生み出した撥弦楽器である。