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音楽と仕事、ときどき法要

社会人から始める音楽活動。タカノシンヤのカフェオレ理論と夢中力に共感

2023.6.28

#MUSIC

TAMIWのボーカリストであり、大阪・堺にあるお寺で音楽スタジオ「Hidden Place」とペット霊園を経営するtamiが、「音楽と仕事」をテーマに対談をする連載『音楽と仕事、ときどき法要』の第2回は、音楽ユニット・Frascoのメンバーで、広告クリエイターとしても活動し、J-WAVE「GRAND MARQUEE」のナビゲーターも務めるタカノシンヤがゲスト。

tamiとタカノはどちらも社会人になってから本格的な音楽活動を始めたことが共通点で、やりたいこと(2人の場合はもちろん「音楽」)を無理やり仕事にしようとするのではなく、やりたいことと仕事を1:1の割合で混ぜてしまおうというタカノの「カフェオレ理論」にtamiも共感。そこから現代の「音楽と仕事」を取り巻く環境について、徐々に話は広がっていきました。

「諦めるか、諦めないか」の二択しかなかった子ども時代

tami:この連載は「音楽と仕事」がテーマになっていて、タカノさんはFrascoとしてアーティスト活動をする一方で、SNSでお仕事のこともつぶやかれてたりしますよね。でも意外とそういうことをしている人は少ないと思うんです。

タカノ:たしかに、「こんな仕事をしてる」とまでは言わない人が多いのかも。

tami:隠してる人もいて、それはそれでいいと思うんです。でもよく考えたら、人生の大半を占めてる仕事のことを隠すのもどうなのかなと思ったりもして。タカノさんはボーカルの峰らるさんと飲み会で知り合って、それから本格的に音楽をやり始めたそうですね。

タカノ:そうなんですよ。それで始めてみたら意外と楽しくて、のめり込んでいったんです。だから俺、音楽をちゃんとやり始めたのがすごい遅くて、33歳ですからね。

タカノシンヤ
J-WAVEの番組「GRAND MARQUEE」ナビゲーターで、音楽ユニット「Frasco」では作詞・作曲・アレンジ、企画等を担当。面白法人カヤックにて広告の企画やコピーライティングも。持ち前の明るさで一人コントもたまに行う。

tami:私も遅くて、20代の最後の方に始めたんです。バンドは中高軽音部でやってたんですけど。

タカノ:わ、同じ感じ!

tami:でも、みんなが「売れたい!」って音楽活動する大学生時代はやらなかった。私、研究をしてたんですけど。

タカノ:理化学研究所ですよね。

tami:そうなんです。理化学研究所で働いてるときに、自分の能力の限界にぶち当たって、尋常じゃないストレスを感じて「これ一生続くんか」と思って。実際に働く前は夢ばっかりあったんですけど、入ったら所謂「サラリーマン的な悩み」なんかもたくさん出てきて。

タカノ:そこからいまはお寺のスタジオを経営しながら音楽をやってると。僕もあんまり人のこと言えないですけど、結構な急ハンドルですよね。

tami:もともとずっと、歌手になりたかったんですよ。親からは「才能ないから無理や」と言われつつ、でもこっそりオーディションを受けたりするんですけど、途中までは行っても最後が通らなかったりして、「私は受からないのかも」って12〜13歳ぐらいで思っちゃって。そうなると子どもだから「諦めるか、諦めないか」の二択しかなくて。

tami(TAMIW)
2018年にTAMIWを結成。19年には20公演のアメリカツアーを敢行。21年には『FUJI ROCK FESTIVAL ROOKIE A GO GO』への選出などでも話題となり、23年2月に3rdアルバム『Fight for Innocence』をリリース。大阪・堺にあるお寺で、音楽スタジオ「Hidden Place」とペット霊園を経営。

タカノ:子どもの頃はそう思っちゃいますよね。

tami:それで途中から音楽やらなくなっちゃったんですけど、でもどこかでやりたい気持ちがずっとうっすらあって。理研に入ったらみんなMacを使ってて、分かんないなりに使い始めたら、GarageBandとか入ってるじゃないですか。

タカノ:でた!

tami:そのあと知り合いに「Logic使った方がもっといろいろできるよ」って教えてもらって、よくわかんないけど買ってみて、触ってみたら、すぐ曲ができたんですよ。

タカノ:なんか似てますね。

孔子曰く「努力は夢中に勝てない」

ータカノさんは33歳のときに本格的にGarageBandを始めたそうですが、いまのtamiさんの話と同じで、それまで沸々と音楽をやりたい気持ちは持っていたわけですか?

タカノ:ずっとありました。ミュージシャンとかアーティストに対する憧れがあったし、オリジナルの曲をつくりたい気持ちはあったんですけど、音楽理論とか難しそうだなって、ハードルを勝手に高く設定しちゃってて、チャレンジすらしてなかったんです。

でも、相方の峰さんから「GarageBandっていうのがあるんだよ」って教えてもらって、スマホでいじってみたらSmart Pianist(スマホ内にある音楽データをもとに、楽譜を生成してくれる)とかあって、「めっちゃ便利やん!」みたいな。調べたコード進行を1回はめてみて、メロディーをつくればオリジナル曲になって、「意外とできる!」とか思って。

tami:めっちゃわかります!

タカノ:「いままでなんでやらなかったんだろう?」と思うくらいで。

tami:私も全部自分で弾かないといけないと思ってたんですけど、LogicだとApple Loops(様々な楽器のループ音源)とかがあって、「これでいいんや」みたいな。昔は「私ドラム叩けないし」とか思って、勝手にハードルを上げてたけど、デスクトップミュージックならできるなって。

タカノ:いまは環境的にも恵まれてますよね。GarageBandと出会ってなかったらいまみたいに音楽をやってないと思うから、ありがてえっていう感じです。

そういえば、最近たまたま孔子の『論語』を読む機会があったんですけど、すごく面白くて。2500年前とかに書かれたらしいんですけど、そんなに前から既にあんなに確立されたビジネスバイブルみたいなのがあったんだと思って、スクショを撮ったんですけど……。

tami:ちなみにうちの母が中国系の韓国人なんですけど、孔子の子孫なんです。

タカノ:本当ですか? そんな偶然あります?

tami:おじいちゃんが直系の子孫で。

タカノ:めっちゃすごいっすね……そんな孔子曰く、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむものに如かず」っていうのがあって。要するに、「努力は夢中に勝てない」っていう話で、仕事でも何でも「嫌々だけど頑張らなきゃ」っていう気持ちでやってる人より、「めっちゃおもろい!」って沼ってる人が最強、みたいな。このマインドはすごく重要だなって。

タカノ:僕GarageBand始めたてのときに音楽つくるのが楽し過ぎて、会社の行き帰りの電車の中でずっとつくってて、エレベーターに乗ってるときもつくってたし、昼休みもドトールでひたすらつくったりして。それぐらいのめり込むことでスキルも上達したし、いかにのめり込めるかが重要なのかなって。

tami:たしかに!

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