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店主の「自分に正直な選曲」、その特別な感性
そんなparadeのセレクションの特徴は、とにかく店主の赤尾舞さんの「自分に正直な選曲」にあると僕は思っている。そして、同時に自分の好み、もしくは自分が心地いいと思えるものがはっきり定まっていて、店の世界観が出来上がっているところもここの個性になっている。どのアーティストのどの作品がこの店にしっくりくるのか、赤尾さんははっきりわかっていると思う。

かかるのは1970年代以前のレコードが多いのだが、時々新しいレコードがかかっても店のムードは全く変わらない。ハイチにルーツを持ち、チェロを奏でる現代のシンガーソングライターのレイラ・マッカラの作品にはここで流れている古いレコードと同じ質感があるし、若手ジャズボーカリストのサマラ・ジョイは3作目の『Portrait』ならparadeにハマってくれる。無理にトレンドを押さえたりもしないけど、ピンポイントで新しい作品だってストックされているのだ。

ジャズ史的な名盤も、1990年代に評価が上がったマイナー盤も、カフェミュージック的に愛された人気盤もすべてがフラットに選ばれている。ボサノヴァやシンガーソングライターやソフトロックだってかかる。それらがレスター・ヤングやカーメン・マクレエといったジャズの「古典」と地続きで流れている。ジャンルレスだが、その幅は広すぎない。だからこそ、同じフィーリングや同じ質感みたいなもので貫かれていて、選曲には常に一貫性が感じられる。その上で、様々な文脈や時代を横断していて、風通しもいい。

僕がわざわざ通うのはこのセンスを新しいと感じるからだ。『Free Soul』とも『Quiet Corner』ともどこか異なる新しいセンスがある。闇雲に広くはないけど、頑ななほど狭くもなく、芯のある選曲をしている赤尾さんになら、もし自分がレコード会社のA&Rだったらコンピレーションアルバムの選曲をさせてみたいなと想像してしまうくらいには、paradeは特別な感性を持った店じゃないかと思っている。
様々なトレンドが出てきてはどんどん移り変わる時代だからこそ、こんな泰然自若とした選曲をする店が輝いて見えるのかもしれないとも思う。とりあえず、ここを教えてくれた通訳さんに感謝しなきゃいけないのは間違いない。

《paradeが選ぶ5枚》
ある週末にかかっていたレコードを挙げていただいた。

・Vince Guaraldi & Bola Sete 『Live at El Matador』
・Coleman Hawkins 『Soul』
・Alice Babs & Duke Ellington 『Serenade of Sweden』
・Major Lance 『Um, Um, Um, Um, Um, Um: The Best of Major Lance』
・Jimmy Raney 『The Influence』
parade
住所:東京都江東区高橋14-2
営業時間:13:00〜21:00
定休日:月+不定休
※営業時間、休業日はInstagram、Xにて要確認
https://www.instagram.com/parade_cafe/
https://x.com/parade1289166