江東区森下の渋い商店街の一筋脇に建つ、かわいらしい外装のカフェ。往年のジャズを中心としたレコードが流れているが、ジャズ喫茶のものものしさは無い。
2024年にオープンした「parade」、その「新しいセンス」を音楽評論家・柳樂光隆が紐解く。連載「グッド・ミュージックに出会う場所」第11回。
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通訳さんから教わった、東東京の新店
主にアメリカやイギリスのアーティストについて文章を書く音楽ライターをやっている僕の最も身近な仕事相手に、通訳さんがいる。ひとくちに通訳と言っても、いろいろな通訳がいて、僕らがお願いするのは音楽専門の通訳さん。音楽の知識が豊富で様々な文脈を把握しているので、時に僕らライターを助けてくれることもある。僕らが最も信頼する仕事相手でもある。なぜ、そんな書き出しかというと、paradeというカフェを勧めてくれたのはある通訳さんだったからだ。
取材後、彼女が「柳樂さんが好きそうな店ができたから行ってみて」と僕に言った。そう言われたものの、東京の西側の多摩に住む自分としては、東側の清澄白河と両国の間、森下という駅の近くにある喫茶店に行くのは正直面倒だ。それでもすでに何度か足を運んでいる。わざわざ電車を乗り継ぐだけの魅力がここにはあったからだ。
paradeは2024年の1月にオープンしたばかりで、シンプルな店内の内装はどれも真新しい。全体的にやわらかい雰囲気で、こだわりの〜というよりは誰にでも入りやすそうな親しみやすい店といった印象だ。そんなparadeに僕が惹かれたのは、何よりも選曲の素晴らしさだった。