企画展『LOVEファッションー私を着がえるとき』が4月16日(水)から6月22日(日)まで、東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーで開催される。
これまでに京都、熊本の2会場で開催され、今回の東京巡回でフィナーレを迎える同展は、18世紀から現代までの衣服作品を中心に、人間の根源的な欲望を照射するアート作品も展示し、ファッションとの関わりにみられる様々な「LOVE」のかたちを考えるもの。京都服飾文化研究財団(KCI)の豊かなコレクションから選ばれた74点の衣服と15点の装飾品に、アート作品約40点を加えた約130点の作品で構成される。



チャプター1「自然にかえりたい」では、自然に対する憧れや敬愛、身にまといたいという願望に焦点が当てられる。自然界からもたらされた人類最初の衣服の記憶を引き継ぐように、歴史の各時代に現れた動物素材や植物柄のファッションを展示。華やかな花柄が刺繍された18世紀の男性用ウエストコート、20世紀前半に流行した鳥の羽根やはく製が飾り付けられた帽子、毛皮不使用や環境保護を標榜するエコファーのコートなどに合わせ、人間の毛髪を素材とした小谷元彦の作品が紹介される。



チャプター2「きれいになりたい」では、衣服の流行をつくりあげてきた、ときに偏執的ともいえる造形への欲望に着目。19世紀の身体美の要を担ったコルセットや、布地の芸術作品として卓越した造形で魅惑するクリストバル・バレンシアガ(Cristóbal Balenciaga)など20世紀中葉のオートクチュール作品を中心に、ヨウジ・ヤマモト(Yohji Yamamoto)やジル・サンダー(Jil Sander)などの彫刻的な現代ファッションを展示し、衣服のかたちに現れた多様な「美しさ」の創造力を再認識する。



チャプター3「ありのままでいたい」では、1990年代以降にプラダ(Prada)やヘルムート・ラング(Helmut Lang)らが牽引した、自然体のリアルな体を主役にするミニマルなデザインの服や、ミニマルファッションの究極系とも表現できる、いわゆる「下着ファッション」が中心に展示される。それらの衣服は身近な友人との日常を切り取ったヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)の写真や、現代社会を生きる女性のリアルを描写した松川朋奈の絵画と響き合う。



チャプター4「自由になりたい」では、お仕着せの「らしさ」から逃れたいという願いが、しばしば衣服の「着替え」に仮託されることを考察する。1928年に発表されたヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)の小説『オーランドー』(原題:Orlando: A Biography)に触発されたコム・デ・ギャルソン(Comme des Garçons)とコム・デ・ギャルソン オム・プリュス(Comme des Garçons Homme Plus)の2020年春夏コレクション、川久保玲が衣装デザインを担当したウィーン国立歌劇場でのオペラ作品『Orlando』(2019年)の「オーランドー」三部作を一挙に紹介。異なる時代に制作された文学と衣服に通底する、アイデンティティの物語への普遍的な問いかけを探る。

チャプター5「我を忘れたい」では、こんな服が着てみたいという願望、あの服を着たらどんな気持ちだろうという期待、欲しかった服に袖を通したときの高揚感など、ファッションを通して経験する心の動きに注目する。服を着ることの一瞬のときめきや楽しさを伝える、トモ・コイズミによるフリルとリボンを用いたモビルスーツのような愛らしい作品や、ロエベ(Loewe)によるまるで唇に身体が乗っ取られてしまったかのような作品などが並ぶ一方、AKI IMONATAの『やどかりに「やど」をわたしてみる』に登場する「やど」を着がえるヤドカリたちに、際限のない欲望を抱く人間の姿が重なる。



同展では、そのほか笠原恵実子、澤田知子、シルヴィ・フルーリー(Sylvie Fleury)、原田裕規、横山奈美のアート作品を展示。同展のための新作も含まれる予定となっている。


『LOVEファッションー私を着がえるとき』
会期:2025年4月16日(水)-6月22日(日) *60日間
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1, 2)
開館時間:11:00-19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日(ただし、4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館)、5月7日(水)
入場料:一般 1,600[1,400]円/大・高生 1,000[800]円/中学生以下無料
*同時開催「愛について 収蔵品展083寺田コレクションより」、「project N 98楊博」の入場料を含みます。
*[ ]内は各種割引料金。
*障害者手帳等をお持ちの方および付添1名は無料。
*割引の併用および入場料の払い戻しはできません。
主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団、公益財団法人京都服飾文化研究財団(KCI)
協賛:NTT都市開発リート投資法人
特別協力:株式会社ワコール
協力:株式会社七彩、株式会社ルシアン、ヤマト運輸株式会社、吉忠マネキン株式会社
助成:公益財団法人大林財団、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団
後援:在日スイス大使館
お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)