第172回芥川龍之介賞(以下、芥川賞)と、第172回直木三十五賞(以下、直木賞)の候補作が発表された。
新進作家による雑誌に発表された純文学の中編 / 短編作品の中から最も優秀な作品に贈られる賞である芥川賞と、新進 / 中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)の中から最も優秀な作品に贈られる直木賞。第172回となる今回は、2024年6月から11月までに発表された作品が候補作となった。
第172回芥川賞の候補作は、安堂ホセの『DTOPIA』(デートピア)、鈴木結生の『ゲーテはすべてを言った』、竹中優子の『ダンス』、永方佑樹の『字滑り』、乗代雄介の『二十四五』の5作品。過去に『ジャクソンひとり』で文藝賞を受賞した安堂は3度目、『旅する練習』で三島由紀夫賞受賞の乗代は5度目のノミネートとなった。他3名は初の候補選出。竹中は2022年に現代短歌新人賞と現代詩手帖賞を受賞し、『ダンス』では新潮新人賞を受賞した実績を持つ。「詩を行為する」表現を国内外で展開する永方は、今回候補作となった『字滑り』が初の中編小説。2001年生まれの鈴木は、2024年発表のデビュー作『人にはどれほどの本がいるか』で林芙美子文学賞佳作を受賞しており、候補作『ゲーテはすべてを言った』は2作目となる。
第172回直木賞の候補作は、朝倉かすみの『よむよむかたる』、伊与原新の『藍を継ぐ海』、荻堂顕の『飽くなき地景』、木下昌輝の『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顚末譚』、月村了衛の『虚の伽藍』の5作品。今回が初の候補選出となったのは、『私たちの擬傷』で新潮ミステリー大賞を受賞し、同作を改題した『擬傷の鳥はつかまらない』でデビューした荻堂。前作『不夜島』は日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞している。『宙わたる教室』がドラマ化された伊与原、脚本家としての経歴ももつ月村、40代でのデビューから20年で数々の作品を発表してきた朝倉は2度目のノミネートとなった。4度目のノミネートとなる木下は、12月19日(木)に選考が行われる織田作之助賞でも『愚道一休』が候補となっている。
第172回芥川賞と第172回直木賞の選考会は、1月15日(水)に行われる予定となっている。
第172回芥川龍之介賞候補作(掲載誌)
・安堂ホセ DTOPIA(デートピア)(文藝 秋季号)
・鈴木結生 ゲーテはすべてを言った(小説トリッパー 秋季号)
・竹中優子 ダンス(新潮 11月号)
・永方佑樹 字滑り(文學界 10月号)
・乗代雄介 二十四五(群像 12月号)
第172回直木三十五賞候補作(出版社)
・朝倉かすみ よむよむかたる(文藝春秋)
・伊与原新 藍を継ぐ海(新潮社)
・荻堂顕 飽くなき地景(KADOKAWA)
・木下昌輝 秘色の契り 阿波宝暦明和(あわほうれきめいわ)の変 顛末譚(てんまつたん)
※顛の偏は、正しくは「眞」(徳間書店)
・月村了衛 虚の伽藍(新潮社)