『第171回芥川龍之介賞』(以下、『芥川賞』)と、『第171回直木三十五賞』(以下、『直木賞』)の候補作が発表された。
新進作家による雑誌に発表された純文学の中編 / 短編作品の中から最も優秀な作品に贈られる賞である『芥川賞』と、新進 / 中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)の中から、最も優秀な作品に贈られる『直木賞』。第171回となる今回は、2023年12月から2024年5月までに発表された作品が候補作となった。
『第171回芥川賞』の候補作は、朝比奈秋の『サンショウウオの四十九日』、尾崎世界観の『転(てん)の声』、坂崎かおるの『海岸通り』、向坂くじらの『いなくなくならなくならないで』、松永K三蔵の『バリ山行』の全5作品。ロックバンド・クリープハイプのボーカル / ギターを務める尾崎は、『第164回芥川賞』候補作となった『母影』以来となる2度目のノミネートで、他4名は初の候補選出となった。
朝比奈は医師として働きながら作品を発表し、2023年には『植物少女』で『第36回三島由紀夫賞』を受賞。坂崎は『ベルを鳴らして』で『第77回日本推理作家協会賞』の短編部門を受賞し、2024年3月に初の単行本『嘘つき姫』を出版するなど頭角を現している。ほかにもクマガイユウヤとの朗読ユニット・Anti-Trenchとしても活躍する詩人・向坂、デビューから2作品目でのノミネートとなった松永と、様々な経歴を持つ作家の候補作が出そろった。
『第171回直木賞』の候補作は、青崎有吾の『地雷グリコ』、麻布競馬場の『令和元年の人生ゲーム』、一穂ミチの『ツミデミック』、岩井圭也の『われは熊楠』、柚木麻子の『あいにくあんたのためじゃない』の全5作品。
青崎の『地雷グリコ』は、すでに『第24回本格ミステリ大賞』『第77回日本推理作家協会賞』『第37回山本周五郎賞』を受賞している話題作。X(旧Twitter)を中心に「タワマン文学」を執筆する覆面作家の麻布競馬場と、デビューから6年で過去に『山本周五郎賞』や『日本推理作家協会賞』候補となった岩井はいずれも初ノミネート。一方で、2022年に雑誌デビューから15周年を迎え、今回が3度目の選出となった一穂や、すでに多数の作品がドラマ / 映画化され、今回が6度目の選出となった柚木まで、幅広い作家が候補となった。
『第171回芥川賞』と『第171回直木賞』の選考会は7月17日(水)に行われる予定となっている。
『第171回芥川賞』候補作品(掲載誌)
朝比奈秋 サンショウウオの四十九日(新潮 五月号)
尾崎世界観 転の声(文學界 六月号)
坂崎かおる 海岸通り(文學界 二月号)
向坂くじら いなくなくならなくならないで(文藝 夏季号)
松永K三蔵 バリ山行(群像 三月号)
『第171回直木賞』候補作品(出版社)
青崎有吾 地雷グリコ(KADOKAWA)
麻布競馬場 令和元年の人生ゲーム(文藝春秋)
一穂ミチ ツミデミック(光文社)
岩井圭也 われは熊楠(文藝春秋)
柚木麻子 あいにくあんたのためじゃない(新潮社)