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映像作家・演出家の島本幸作のモノ作りは「1をなんとかゼロに戻す」こと

2024.4.26

#MUSIC

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

12月20日は、批評家・ビートメイカー・MCの吉田雅史さんからの紹介で、映像作家で演出家の島本幸作さんが出演。今回は、作品制作の裏側などの話だけではなく、モノ作りへの思いや独立に至るまでの経緯についても伺いました。

生活の中で頭に浮かんだ、くだらない思いつきをそのまま定着させる

Celeina(MC):島本さんは東京生まれ、2005年に武蔵野美術大学を卒業。映像作家や演出家などをメインに、テクノデュオのBERVATRAや、「特殊編集部隊 二代目 カウチ&ポテト」としても活動されています。映像のお仕事をメインで行っているということですが、「特殊編集部隊 二代目 カウチ&ポテト」はどのようなユニットなのですか?

島本:2004年ぐらいから友人の 小美濃くん(友達①)やっています。普段生活している中で頭に浮かんだくだらない思いつきを画像や映像にして、定着させて。作った作品はTumblrに上げて見直して2人で笑う、そんな活動です。

タカノ(MC):最高! 誰かのためにというよりは、自分たちがいいと思うものを自分たちで作っているということですか?

島本:自分たちだけに向けているわけでもないんですが、何度見ても笑えるモノ、数年後の自分が見ても笑えるモノ、というのはあります。

例えば「清水の舞台から飛び降りる」って格言があるじゃないですか。ある時、京都観光でたまたま清水寺に行って。実際に行くと「あぁ、この舞台か、結構高いな。」とか思うんです。しかも舞台の下には、石垣や竹槍みたいな尖った柵があって。「これ、飛び降りたらかなり痛いぞ……」と。それで「危ない!」という注意喚起の画像を思いついたので、作りました。この機会に、皆さんに「清水の舞台から実際に飛び降りるのは、絶対やめた方がいいですよ!!!」と強く言っておきたいです。

タカノ:普通は格言を例えとして使いますが、それに注意喚起をしていくのですね。

島本:たまたま、現地に行ったらそういう気づきがあったので。カウチは、くだらなくても思いついたら、それそのまんまをカタチにする、という感じで作っています。

Celeina:画像のお話がありましたけれども、動画も作られていらっしゃいますよね? 『Couch & Potato』というYouTubeチャンネルを拝見させていただきました。

タカノ:これはやばかったです! 年賀状を動画で出されているのですか?

島本:これは「年賀動状」という新たな映像ジャンルの作品で、やっているのは世界で僕らだけです。まぁ、僕らが勝手に作ったジャンルなんですけど。

タカノ:寅年の動画を観たのですけれども、すごくカオスでした。都内の色んな虎を数えていく動画など、かなり足労がかかっているのではないでしょうか。

島本:2022年の年賀動状ですね。「中年二人が都内のストリートタイガーを2022匹集める」という内容です。この説明じゃさっぱり分からないですね。

タカノ:なかなか想像がつきにくいとは思いますね。

Celeina:実際に観ていただいたほうがいいですね。

島本:カウチのYouTubeチャンネルには他の年賀動状や映像作品も載せていますので、暇な時に観てもらえたら。何の役にも立たないと思いますけど。

タカノ:衣装もすごく凝っていらっしゃいますよね。今日も持ってきていただいているのですけれども、これは工事現場の作業員の方が着ているリフレクターでしょうか。

島本:そうです。これ「トラチョッキ」って言うらしいんですよ。

Celeina:実際にトラチョッキと呼ばれているのですね。知らなかったです。

島本:リフレクターにちゃんと「カウチ安全 虎チョッキ」と明記しました。

『2022年 年賀状』
『2022年 年賀状』

Celeina:これは島本さんのオリジナルですか?

島本:そうです。この年はまずオリジナルの「虎チョッキ」を制作して、「虎チョッキ」発売記念チラシ風の年賀状を作って友達に送りつけました。観ていただいた年賀動状もその延長で、だから同じ「虎チョッキ」を着ています。街にあるトラを見つけては撮影、というのを繰り返していたんですが、トラの数が多くて、撮っても撮っても終わらず、編集でもどんどん膨れ上がって収拾がつかなくなりました。

タカノ:トランス状態に陥っちゃうみたいな。

島本:かなりキましたね、寅年は。結局、完成したのは12月31日でした。あ、「“トラ”ンス」。ワンタイガーーー!!!

Celeina:島本さん、2024年版はどうでしょうか。

島本:年賀状と年賀動状を作っています、干支に真摯に向き合って。今週も撮影ですけど、全然終わる気配ないです。

『2024年 年賀状』
『2024年 年賀状』

Celeina:お忙しい中来ていただいてありがとうございます。

島本:いえ全然です。ただ年賀状を作っているだけですから。

独立のきっかけは「自分で手を動かしてモノ作りをしたい」

タカノ:元々は某広告代理店にいらっしゃって、7年間デザイナーをされていたのですか?

島本:デザイナーは最初の3年で、その後はCMの企画を考えていました。

タカノ:独立されたきっかけは?

島本:学生の時から、授業と関係ないモノ作りをしていました。コントみたいな映像とか立体とか写真とか、色々展示したりしていたんです。それを見ていた学部の助手(友達②)から「来週、採用試験あるから受けてみたら?」と言われて。なんとなく受けたら間違えて受かってしまったんです、完全になにかの間違いで。

制作部の専門職採用だし同じモノ作りだろう、と思って入社しました。けど入ってみたら、企画はするけど実際に作るのは外注プロダクションで、代理店はあくまでも企画をいくつも抱えて回す仕事でした。そういうプロデューサー的? なことは上手くできないな、と思いながらボンヤリと会社で黒ずんでいました。考えた企画も全く通らなかったですし、「ベランダ社員」って感じで。で、流石に会社も僕も「これは、まぁ、そろそろ限界ですかね……」となって、双方で話し合って退社することに決めました。

タカノ:多分、会社が島本さんの才能を生かしきれなかったという気がしますよ。

島本:いやいや。僕が悪いです、7:4で。

ゼロから1を作るのではなく、1をなんとかゼロに戻す

Celeina:やっぱり、実際にご自身で手を動かして、物作りをしていきたいという思いが強かったのでしょうか?

島本:そういう風に言っていただけるとカッコいいんですが、実際は、自分で手を動かして作るくらいしか出来ないな、と思っていました。それと、「モノ作り」というと、一般的には「ゼロから1を作る」みたいな印象があると思うんですが、僕の場合は「1を何とかゼロに戻す」っていう感じなんです。

タカノ:どういうことですか?

島本:「意味をなくす」みたいな。

タカノ:いやいや。分かるような、分からないような感じです(笑)。

Celeina:ところで、島本さんは音楽も制作されていると伺っています。

島本:冒頭で紹介してもらった、BERVATRAですね。これは音楽家・Twothとしても活動している須田伸一くん(友達③)とのユニットです。

タカノ:気になっているのでみんなで聴いてみたいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=frtoWpbUNEY

Celeina:これは何の音を録っているのでしょうか?

島本:これは時報(☎︎117)ですね。BERVATRAはサンプリングを軸に、音楽をその場で作る、というプロジェクトなんです。この曲もマイクで時報を録音→録った音ループさせ重ねる→更に加工する、という手法で即興で作りました。

Celeina:この曲を実際に作ったときのひらめきは覚えていらっしゃいますか?

島本:いや、ひらめきとかはなかったですね。それどころじゃないというか。音をループさせても「36分50秒をお知らせします。」って声がずっーと繰り返されるだけなんです、延々。それだと音楽にならないので「このままはキッツイな、何か変化させなきゃ。」って必死にやっているだけでした、僕は。ひたすら交通整理している気分というか。やったことないですけど交通整理。

Celeina:BERVATRAの楽曲を聴いていただいておりますけれども、楽曲名は”ENIGMA LIST”なります。

島本:時報は英語でTIME SIGNALなので、そのアナグラムで”ENIGMA LIST”にしました。文字も音と同じように組み替えたかっただけで、曲名も特に意味ないです。

映像も音楽も既存の概念を壊して作っていく?

Celeina:先ほど、1をゼロに戻すというお話がありましたけれども、意味があるものの固定概念を壊していくみたいなニュアンスでしょうか?

島本:破壊的なつもりはないんです、自分では。

タカノ:でも僕はすごく分かる気がします。広告の仕事には、全てに意図と意思が存在するじゃないですか。逆に意味性を取っ払ったときに、どんな世界が見えるかは、みんなが気になることでもあると思いますね。無意識にフォーカスしているものや、自分の意識とかの外側にある部分に芸術性が宿るような気がします。すみません、すごくマジレスになっちゃったんですけど。

島本:いえいえ、上手くまとめていただいて。なんか、ありがとうございます。次からはその答えをパクらせてもらいます(笑)。

タカノ:音楽もやっていて、映像でもすごく面白いものを作られていて、幅広い活動をされている島本さんのことが、ますます気になっております。そして今日の番組では、「クリスマスの困り事」をテーマに、みなさんからメッセージを募集しているのですけれども、島本さんもありますか?

島本:飯場くん(友達④)という人が、毎年「クリスマスの夜、1人で富士そばに行く」という活動をしています。彼、妻子持ちなんですけど。

Celeina:1人で富士そばに?

島本:はい。去年は恵比寿の富士そば~渋谷の松屋と、はしごしていま した。

Celeina:これにはどのような意図があるのでしょうか?

島本:「クリスマスなのに1人」って状況そのものと向き合っているんじゃないですかね、多分。

タカノ:家族がいるけど、あえてその時間を作っているのですね。

島本:そうみたいです。

Celeina:これも既存の概念を壊していくみたいな感じになるのではないでしょうか?

島本:「クリスマスの困り事」を自ら課しているのかな? と。分かんないですけど。ただ、クリスマスに挑んでいる感じだけは、すごくありました。

タカノ:そんな気がしますよ。そういう時間を捻出しているということですからね。

島本:というか、お二人はどんな話も真面目に受け止めてくれるんですね。すごいです。

タカノ:我々は低反発枕のように、全てを受け止めます。

Celeina:島本さん、楽しいお話をありがとうございました。さあ「FIST BUMP」、グータッチで繋ぐ友達の輪ということで友達を紹介してもらっていますが、島本さんが紹介してくださるのはどんな方ですか?

島本:美術作家の田中偉一郎さん(友達⑤)です。

Celeina:一言で表すとどのような方でしょうか?

島本:ノーメッセージマンです。

タカノ:今日のお話と繋がりそうな感じですね。

島本:あの、この説明だけで大丈夫ですか……?

Celeina:明日、お話を伺ってみます。明日は美術作家の田中偉一郎さんに繋ぎます。本日は映像作家で演出家の島本幸作さんでした。ありがとうございました。

島本:ありがとうございました。色々と失礼いたしました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

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