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『ダンダダン』第2期に期待が高まる理由とは。原作、映像、主題歌からその魅力を解説

2025.6.23

#MOVIE

都市伝説からUFO、恋愛、バトルまで。なんでもアリなのに、なぜか成立してしまう。漫画アプリ「ジャンプ+」で連載中の龍幸伸『ダンダダン』は、2021年の連載開始からまもなく200話に到達する今も、その人気は衰える気配がない。2024年には『映像研には手を出すな!』『犬王』で知られるサイエンスSARUによって待望のアニメ化が実現し、大きな話題を呼んだ。そして2025年夏、アニメ第2期がスタートする。『ダンダダン』が全世界を魅了する理由とは一体何なのか? よしもと漫画研究部の部長で、年間1500冊以上の漫画を読む漫画大好き芸人・吉川きっちょむが原作漫画からアニメシリーズを横断して解説する。

漫画『ダンダダン』第1話で刻まれた衝撃

昨年放送され大きな話題を呼んだTVアニメ『ダンダダン』。待望の第2期が7月3日(木)深夜より放送開始される。オカルティックなバトルアクションと甘酸っぱい青春物語がハイクオリティな作画で融合した本作は、原作漫画が1000万部(2025年4月時点)を突破する超人気作だ。

物語は、霊媒師の家に生まれたため幽霊は信じるが宇宙人は信じない女子高生・綾瀬桃(モモ)、そしてオカルトマニアで宇宙人は信じるが幽霊は信じない同級生の男子・高倉健(オカルン)が、互いの信じる存在を証明するために、心霊スポットとUFOの出る廃病院を訪れることから始まる。その後、2人は行く先々で、理解を超越した宇宙人や都市伝説、妖怪、UMAと遭遇し、怪奇現象に巻き込まれていく。

原作は、『地獄楽』『チェンソーマン』のメインアシスタントを務め、少年漫画界トップレベルの画力を誇る龍幸伸の7年ぶりの連載で、『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』などを手がける現在日本一有名なヒットメーカー編集・林士平の担当作品として、2021年、漫画アプリ「ジャンプ+」で鳴り物入りの連載がスタート。

私は『ダンダダン』が公開される0時を心待ちにし、初めて読んだときのことを今も強烈に覚えている。あまりにも衝撃的な漫画体験で、快楽物質が脳を駆け巡り、高揚感に包まれながら、頼むから読んでくれと知人友人に懇願し、他社の漫画編集者と『ダンダダン』が第1話だけでいかにすごいのか深夜に電話で語り合った。

主人公のオカルンは都市伝説上の妖怪であるターボババアの力で戦う。

圧倒的かつ精緻な画力による迫力と躍動感、大胆なカメラワークやレンズの歪み、ユニークなキャラクターデザイン、怒涛のストーリー展開、オカルト、バトルアクション、学園ラブコメとジャンルをまたぎながらも、すべてを高い漫画力でまとめあげてしまう剛腕。奇跡的なバランスで、ごちゃ混ぜな楽しさが成り立っている稀有な作品だ。

SNS上でも評判は瞬く間に広がり、公開からわずか2日で100万PV、さらに初の3話連続100万PV突破という「ジャンプ+」史上初の快挙を達成した。

挫折と出会い、そして『ダンダダン』が生まれるまで

なぜ『ダンダダン』はこれほど人を惹きつけるのか? その秘密の一端は、作者・龍幸伸のキャリアにある。

彼は実は大人になるまで漫画家を目指していなかったという驚きの経歴の持ち主だ。就職できずにコンビニでバイトしてるときに、レシートの裏に落書きしていたら「お前、絵上手いじゃん、漫画家になれば?」と言われたことが漫画家への道を歩むきっかけになったという。

バラエティに富んだキャラクターが無数に登場するのも『ダンダダン』の魅力の一つ。

2010年に『正義の禄号』でデビュー。2013年には『FIRE BALL!』を発表するが、どちらも短命に終わる。真面目で考えすぎる性格だった龍だが、『地獄楽』の賀来ゆうじや『チェンソーマン』の藤本タツキのアシスタント経験を通じて、「自分が面白いと思うものを楽しんで描く」という2人のスタンスに大きな刺激を受け、才能が磨かれていった。

恋愛漫画を描こうと思った際には、『天使なんかじゃない』など100冊もの恋愛漫画を読み込んでから読切を描いたというエピソードも印象的で、これが現在のラブコメ要素に活きている。

2019年にはスランプに陥り、漫画が描けなくなる。しかし、ネタ帳を見返し「映画『貞子vs伽椰子』が面白い」と書いてあるのを見つけ、ホラー界のスターによる夢の共演という発想の面白さ、そして台詞として登場する「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」がインスピレーションとなり、怪異の力でオカルトと戦う『ダンダダン』の原型が生まれた。

成田亨からネット怪談までを織り込んだ完璧なオープニング映像

本作に登場する宇宙人や妖怪のデザインには、『ウルトラマン』など円谷プロ作品のデザインを手掛けた伝説の人物・成田亨の影響が色濃く見られ、アニメでもそのニュアンスが丁寧に再現されている。

https://youtu.be/3Fu2p5sIZSc?si=YjTPzo2TsFb3tacC

第1期オープニングには『ウルトラQ』や『怪奇大作戦』のような昭和初期の匂いを漂わせる演出が随所に散りばめられている。『ダンダダン』第1期で監督を務めた山代風我は、作品の魅力を「緩急」「メリハリ」「ギャップ」と捉え、常に「龍幸伸ならどう描くか」を意識して演出。OPでは最先端の映像表現の中に昭和の香りを忍ばせることで、『ダンダダン』らしさを見事に描いた。また、原作の描き込みの細密さゆえに、アニメでは再現が難しかった部分も、ディテールを抑える代わりに小道具や背景演出で密度と間を保つなど、原作の熱量を損なわない巧みな演出が高く評価された。

作中に登場する妖怪や宇宙人からは円谷プロ作品の影響が色濃く感じられる。

さらに、Creepy Nutsによる主題歌“オトノケ”は、『ダンダダン』の韻を踏みながら都市伝説やネット怪談を連想させるワードが連打される、恐ろしく完成度の高い楽曲となっている。歌詞の<貞ちゃん伽椰ちゃん>は、もちろん『リング』の貞子、『呪怨』の伽椰子を指しており、龍幸伸が『ダンダダン』を構想する原点となった映画『貞子vs伽椰子』に由来。また<4時44分>は映画『学校の怪談』に、<四尺四寸四分様>はネット怪談で有名な「八尺様」に由来する。センチに換算すると約168.2cmで、R-指定の身長(約169cm)を表すメタファーだろう。<ハイレタ>は都市伝説の「ヤマノケ」に登場する有名なフレーズで、曲名“オトノケ”の語源でもある。

他にも<シャマラン>は映画『シックス・センス』などで知られる映画監督M・ナイト・シャマランに由来するなど、ホラー好きならニヤリとする仕掛け満載だ。そして、その歌詞とシンクロしたオープニング映像は、視覚と聴覚の快楽を満たす、驚くほどに完璧な仕上がりだった。

https://youtu.be/Nw_XzGZ35As?si=1qE_rN2Z0-3o_Sm6

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