AランチとBランチのどちらを食べたいのかさえ、わからなくなることがある。自分の気持ちを知り、それを信じることの難しさを、大東まみはそんな日常の一場面を挙げて語ってくれた。10月7日配信のEP『交差点』でメジャーデビューを迎えた彼女は、6か月連続リリースの締めくくりとなる表題曲に、「自分の中のときめきを信じて進む」決意を込めている。その決意は、いまも迷いの中にいる自分自身に向けられたものでもある。
大橋ちっぽけとの前回の対談では、他者を理解しようとすることについて話を聞いた。今回は、自分の心との向き合い方を入口に、新作に描かれた怒りや弱さ、そして聴き手との関係をたどる。ありのままを歌えるようになった彼女が、いま音楽を通して渡したいものとは。
INDEX
人混みをうまく歩けるようになったのは、誰かの陰に隠れているから。
—まずは、メジャーデビュー作のタイトルにもなった“交差点”への思いから聞かせてください。
大東:去年の4月くらいにできた曲で、自分の思いがちゃんと書けたなと思って、ライブで歌い始めたんです。お客さんからも「この曲に勇気をもらいました」と言っていただくことが多くて、歌っていく中でどんどん大事な曲になっていきました。だから、6か月連続リリースの最後、メジャーデビューという大事なタイミングにこの曲を置きたいという気持ちがありました。
—制作の場で、知識や経験のある方を前にすると、自分の意見を言えなくなったり遠慮したりしてしまう。そんな悩みから生まれた曲だそうですね。
大東:レコーディングでは、プロデューサーでアレンジャーのトオミヨウさんと一緒に作っているんですけど、知らないことが多すぎて。例えばマイクを選ぶときに、「こっちはこういう傾向があるから、使ってみようか」という話になっても、自分には判断の基準がない。その状態で「私は絶対にこっちがいいです」と自信を持って言えないし、その前に、どう考えればいいのかすらわからなかったんですよね。
シンガーソングライターを名乗って、自分の名前で曲を出す以上、最終的な決断は自分でしないといけないと思っています。それを、自信を持ってできないことに、情けなさやかっこ悪さを感じていました。

1999年生まれ、大阪府出身。高校時代に「歌で自分を表現する」女性シンガーに憧れ、大阪を拠点に活動をスタート。2024年1月、新たな挑戦を求めて上京。同年、J-WAVE「ギタージャンボリー」出演オーディションでグランプリを獲得し、両国国技館のステージへ。2025年3月には “miwaの日” 公認路上ライブ祭りに出演し、miwaと“ヒカリへ”を共演。同年4月に投稿した一発録り歌唱のショート動画が大きな話題となり、わずか半年で Instagramフォロワー3.7万人、TikTokフォロワー15万人を突破。9月には『Augusta Camp 2025』のオープニングアクトとしてぴあアリーナMMのステージに立つ。2026年、日本女子サッカーリーグ「なでしこリーグ」公式テーマソングを担当し、全国12チームのスタジアムで生演奏を披露。同年5月より6か月連続配信リリース&6か月連続ワンマンライブ『交差点』を展開。8月には『Augusta Camp 2026』に本編出演し、ステージ上で日本クラウンからのメジャーデビューを発表。翌日には『SUMMER SONIC 2026』に出演。2026年10月7日、メジャーデビュー 1st EP『交差点』をリリース。
—そうした思いが、交差点の風景と重なったのですね。
大東:渋谷の交差点を渡っていて、東京に出てきたばかりの頃より、うまく人混みを歩けるようになったな、と。なんでやろうと考えたら、前の人の陰にうまく入って歩いていることに気づいたんです。そうすればぶつからないし、前の人についていくだけでいい。
そうやって、誰かの指示通りに歩けば衝突はしないけど、前の人が歩いたところにしか行けない。それはいまの自分も同じやなって。自分が本当に行きたかった場所には行けないかもしれない。その風景と自分の状況が重なって、曲になりました。