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中島健人のためにあるドラマ『コンビニ兄弟』最終回直前レビュー

2026.6.30

#MOVIE

©NHK
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毎週、視聴者に癒しを与え続けてきたドラマ10『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』が最終回を迎える。

中島健人が、フェロモンだだ漏れのコンビニ店長・志波三彦と野性味あふれる何でも屋・志波二彦の二役を演じて話題となった本作。

町田そのこの小説「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズを原作とし、『連続テレビ小説 おむすび』『正直不動産』(共にNHK総合)などを手掛けた根本ノンジが脚本を務めたハートフルコメディーは、劇中でコンビニを訪れる様々な人々とともに、視聴者も笑顔にしてきた。

三彦の過去を巡るミステリー展開も気になる本作について、最終回を前に、ドラマ映画ライターの古澤椋子がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

中島健人だからこそ現実になった「フェロモン店長」

フェロモンだだ漏れのコンビニ店長「フェロモン店長」こと志波三彦(中島健人)©NHK
フェロモンだだ漏れのコンビニ店長「フェロモン店長」こと志波三彦(中島健人)©NHK

ドラマを見ていると、この役はこの人のためにあると感じる瞬間がある。『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』(以下『コンビニ兄弟』)の「フェロモン店長」こと志波三彦もそうだ。三彦を演じられるのは、後にも先にも中島健人しかいないのではないか。極論かもしれないが、最終回直前の第9回まで見てきて、そう感じさせる説得力がある。

コンビニ「テンダネス」にやってくる老若男女をたちまち虜にする笑顔も、星が輝くような演出も、歯の浮くようなセリフを繰り返しても、中島が演じると違和感がない。思わずキュンとしてしまう。むしろ、もっとときめかせて欲しいとすら思ってしまうほどだ。中島健人だからこそ、三彦という小説のキャラクターを現実に落とし込めているのだろう。

そして、中島自身も、三彦を演じる上で、自らが持つアイドル的な存在感が求められていることを、強く意識しているように見える。

これまで中島は、ドラマ『彼女はキレイだった』(フジテレビ系 / 2021年)や映画『知らないカノジョ』(2025年)で、表ではカリスマ然として振る舞いつつも、裏では泥臭くもがくような主人公を好演してきた。本作の三彦のような現実離れした存在というよりも、真正面から現実を受け止め、立ち向かうような、アイドル中島健人としてのイメージと彼が内面に持つ情熱の両面が生かされた役柄が多かったのだ。「コンビニで客を受け入れることに徹する」三彦は、そうした今までの役柄とは真逆の人物像と言えるかもしれない。

中島の人間らしさが表れた「ワイルドなんでも野郎」

野性味あふれる何でも屋「ワイルドなんでも野郎」こと志波二彦(中島健人 / 一人二役)©NHK
野性味あふれる何でも屋「ワイルドなんでも野郎」こと志波二彦(中島健人 / 一人二役)©NHK

『コンビニ兄弟』にも、情熱あふれる存在はいる。ワイルドな見た目と背中に「なんでも野郎」と書かかれた緑のつなぎがトレードマークのツギ / 二彦(中島健人 / 一人二役)だ。

コンビニという場所を守り、癒しを提供する三彦に対して、ツギは助けを必要とする人のもとへ自ら足を運び、問題を解決へと導く存在だ。第1回では、行方をくらましてしまったテンダネスの店員・野宮祐樹(田中偉登)を探し出して元気づけ、第2回では、門司港を離れ大分の実家にこもろうとしていた塾講師・桐山良郎(泉澤祐希)のもとを訪れて心を開かせた。

ツギの発言の端々には粗暴さもあり、三彦と比較するとそのアプローチは少々強引だ。ただ、そのツギの力強さが、テンダネスから距離をとって孤立しかける人々を繋ぎ止めてきたのも事実である。そして、不思議なことに、そんなツギの頼りがいのある姿や力強い言葉で相手を励ます泥臭さ、第6話での元恋人・翆(朝倉あき)とのエピソードのような時に弱みを見せる一面にも、中島らしさを感じさせられる。

それは、努力に裏打ちされた完璧なアイドルパフォーマンスや、ブレない発言によって培われた中島への信頼がある一方で、紅白歌合戦での“パプリカ”や自身の楽曲“JUST KENTY☆”で見せた、指で星の形を描けない姿や、アニメ『遊☆戯☆王』好きを公言するような等身大の一面も広く知られているからだろう。ツギは、中島の人間らしさがより表れた役といえるかもしれない。三彦だけでなくツギも、中島のための役と言って差し支えないだろう。

中島が一人二役で演じる三彦とツギ。正反対の役柄にも関わらず、どちらもハマり役と感じられるのは、どちらの役にも中島の魅力が反映されているからだろう。中島健人という人物の完全無欠なアイドルとしての一面と人間らしいお茶目な一面が、それぞれ三彦とツギを通して強調されているのだ。なんと贅沢なドラマだろうか。

コンビニを通して、つながる場所がある安心感を描く

学校ではできない対話を重ねていく中学生・桧垣梓(稲垣来泉)と田口那由多(新津ちせ)©NHK
学校ではできない対話を重ねていた中学生・桧垣梓(稲垣来泉)と田口那由多(新津ちせ)©NHK

もちろん、『コンビニ兄弟』の魅力は中島の存在だけではない。本作では、三彦が店長を務める、九州に展開するコンビニチェーン・テンダネスの門司港こがね村店における人と人のつながりや出会いを通して、コミュニティの価値が描かれている。

第3回では、母親や幼なじみから隠れてテンダネスのスイーツを楽しんでいた中学生・桧垣梓(稲垣来泉)が、クラスで浮いた存在であった田口那由多(新津ちせ)と心を通わせていくエピソードが描かれた。2人はテンダネスのイートインスペースで、学校ではできない対話を重ねていく。梓と那由多が本音をこぼし合う姿からは、家庭でも学校でもない第三の居場所の価値を痛感させられた。あの場所は、中学生2人にとって逃げ場になっていたのだ。

小学生・南方ひかる(渋谷いる太)との出会いで変わった中年男性・大塚多喜二(光石研)©NHK
小学生・南方ひかる(渋谷いる太)との出会いで変わった中年男性・大塚多喜二(光石研)©NHK

第4回では、コンビニ嫌いの中年男性・大塚多喜二(光石研)が、イートインスペースで食事をしたことをきっかけに、小学生の南方ひかる(渋谷いる太)と出会う。ひかるが、父親が運動会に来られないことを同級生にからかわれるのを見た大塚は、ひかるの祖父を演じて運動会に出ることを決意。同じ場所で食事をする時間が、世代の異なる2人の寂しさを埋めた。

大塚はその後、病に倒れた妻・純子(街田しおん)の看病のため、自然に三彦を頼り、素直に感謝を伝えた。それは、テンダネスでひかると交友を深めた経験が、コンビニ嫌いだった大塚の凝り固まった考えをほぐしたからこそだろう。コミュニティの存在が人を柔らかくし、長い目で見れば、生きやすさにつながることを示したエピソードだったように思う。

誰かとつながっているという意識は、人を救ってくれる。だからこそ、まずはつながる場所が必要だ。ここに行けば、誰かと会える。誰かが気にかけてくれる。『コンビニ兄弟』は、そんなつながりが保証されているという安心感と安心感がもたらす救いを物語の隅々に描きこんでいるのだ。

三彦は門司港の「コミュニティマネージャー」

能瀬麗華(萬田久子)ら三彦ファンクラブメンバーと自称「門司港の観光大使」梅田正平(柄本明)©NHK
能瀬麗華(萬田久子)ら三彦ファンクラブメンバーと自称「門司港の観光大使」梅田正平(柄本明)©NHK

テンダネス門司港こがね村店のオーナー・能瀬麗華(萬田久子)らファンクラブメンバーや近所の病院の職員らは、三彦の存在そのものに癒されている。三彦は、門司港の人々にとって、いわば「推し」といえる。

ただ、それは見た目が良いからでも、相手をお姫様扱いするような言葉をかけるからでもない。三彦が店に来る人々に唯一無二の安心感を与え、それがテンダネス門司港こがね村店の空間そのものにも宿っているからだ。

第8回では幽霊・一子(橋本マナミ)もコンビニを訪れた©NHK
第8回では幽霊(橋本マナミ)もコンビニを訪れた©NHK

例えば、第4回におけるひかると大塚に対しての「ここには僕がいる」という宣言や、第7回における初対面の詩乃(中井友望)の元気のなさへの気づき。異色の回となった第8回では幽霊・一子(橋本マナミ)に呪われて苦しみながらも、一子の願いを受け入れて死ぬ覚悟を固めていた。三彦には、まだ見ぬ誰かであっても、コンビニや自分のもとを訪れる人に安心感を与えようとする決意があるのだ。

三彦がいるからこそ、三彦が育んだ空間だからこそ、人はテンダネスのイートインスペースでなら心を開いてしまうのだろう。三彦は、テンダネスという場を支える「コミュニティマネージャー」のような存在とも言えるかもしれない。

最終回は、どんな中島健人を見せてくれるのか

第9回では三彦(中学時代:宮岡大愛)の過去も描かれた©NHK
第9回では三彦(中学時代:宮岡大愛)の過去も描かれた©NHK

最終回直前の第9回では、三彦がなぜそうした「コミュニティマネージャー」のようになったのか、その原点とも言える、若かりし頃の初恋の顛末と、18年前にテンダネスで起きた強盗事件の存在が明らかになった。完全無欠のように見えた三彦の過去が描かれたことで、三彦のキャラクターは更に深みを増し、また、新たな一面を見せる演技からは、俳優としての中島の技量の高さが感じられた。

最終回では、さらに深く三彦の感情の揺らぎが描かれることになるだろう。自分の一部を切り取るように三彦とツギを演じてきた中島が、最後にどのような芝居を見せてくれるのかが楽しみだ。

ドラマ10『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』

©NHK
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NHK総合にて毎週火曜夜10時から放送中
NHK ONEにて1週間見逃し配信中
公式サイト:https://www.nhk.jp/g/ts/L32LQW343J/

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