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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

GEZAN・マヒトが武道館という「形式」を借りる理由。最後に本当の意味で残るものとは

2026.3.7

#MUSIC

GEZANはやっぱりロックバンドだ。そして、4人だ。

メンバーだけでなく、運営スタッフやアーティストによるコミュニティとしての結びつきがひとつのムーブメントとなり、総体として「GEZAN」、そして自主レーベル「十三月」を構成していて、その空気感がインディー音楽界を震わせ続けている。2021~2023年のGEZAN with million wish collectiveはそれが顕在化したものだといえるだろう。

彼らはそのフェーズを終え、よりソリッドな形ーー4人のロックバンドとして、47都道府県を巡る『集炎』ツアーを行った。公演は対バン形式で行われ、出演者、あるいは観客、スタッフと、彼らはその区別なく全国各地の仲間たちと再会した。

その後の活動は100時間リレー、アルバム発売、彼らの写真を撮り続けてきた写真家たちによる写真展、そして武道館公演『独炎』へと続いていく。

この記事は、GEZANのフロントマン・マヒトゥ・ザ・ピーポーと、彼が「この人とだったら、いつもは辿り着けないところまで話せるような気がする」と対話を望んだカレー屋「floatan」オーナーとの邂逅の記録であり、武道館公演に向けた地図でもある。

GEZAN(ゲザン)
メンバー:マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo/Gt) / イーグル・タカ(Gt) / 石原ロスカル(Dr) / ヤクモア(Ba)
2009年、大阪にて結成。独自の視点とスタイルで表現を続ける一方、自主レーベル「十三月」を主宰。2023年にはFUJI ROCK FESTIVALのGREEN STAGEに出演し、11月にはコロナ禍を経て4年ぶりとなる主催企画「全感覚祭」を、“Road Trip To 全感覚祭”と題して川崎・ちどり公園にて開催。現在、全国47都道府県に中国・上海公演を加えた全54公演におよぶ「47+TOUR『集炎』」を開催中。ツアーファイナルは、2026年3月14日(土)・日本武道館での単独公演『独炎』となる。2026年2月11日(水)、最新アルバム『I KNOW HOW NOW』をリリース。

GEZANを知っていくことは「ロックバンド」というものが何なのか知っていく過程でもあった。(floatan)

マヒト:自分はことあるごとに、SNSでfloatanさんの文章を読んでいて。誰かと話すときって全部鏡面みたいな感じで、相手の話をしているようで自分のことを語ってることがほとんどだと思うんですよね。たとえば今回アルバムを出して(インタビューなどで)人と話してると、話したことが鏡みたいになっていって、そこに自分の姿が映ってるというか。floatanさんの言葉にも、もはや自分が思っている以上に自分自身が映っていることがある。大体インタビューとかはもう、同じような感じになってきちゃって、自分の引き出しが開いて最初から知ってる言葉を喋るだけ、みたいなことがよくあって。だから今日は逆に色々聞いてみたいっていう気持ちもあります。そういう感覚で話せたらいいな。

floatanはカレー店である一方、そのInstagramにはGEZANをはじめとしたさまざまなアーティストのライブレポートを掲載。投稿に綴られる言葉から興味を持ったマヒトが対話を希望し、今回の企画が実現した。

マヒトゥ・ザ・ピーポー

floatan:自分で言うのもなんだけど、私ほどGEZANをちゃんと見れてる人はいないかも、くらいに思っています(笑)。出会いでいうと、2021年にテリー・ライリーさんを観るために初めて『FRUE』(※)に行った時でした。会場の近くにある掛川花鳥園って、いろんな鳥が全部放し飼いになってて、すごい楽しいんです。そこで遊びすぎて疲れ果てて会場に着いたので、座って演奏を観ていたら、それまでまったく知らなかったGEZANの音出しが始まったんですよね。

※Festival de FRUE:静岡・掛川で2017年から開催されている野外音楽フェス。GEZANも過去に複数回出演している。

floatan
福岡県福岡市でカレー店・floatan(フロータン)を営む。SNSでGEZANをはじめとしたさまざまなアーティストのレポートを掲載。

マヒト:GEZANとOLAibiで一緒にやったときの。

floatan:そう。疲れてだらっと椅子に座ってたけど、音出しが始まって、何か大変なものが始まった、と思ってフロアに駆け下りていったんです。その熱量のまま始まるかと思いきやまた退場していって、いざライブが始まったらタカさんがバグパイプを吹きながら後方の客席から降りてきて、そのライブがとにかくびっくりした、雷に打たれたみたいな体験でした。

マヒト:『FRUE』はダンスミュージックがフロアに与えるものと、バンドが空間に与える感覚とがうまく混ざり合ってて「空間」ってことを知覚できる祭りなんです。そしてGEZANは、フォーマットはロックバンドではあるんだけど、型から逸脱してるところは自覚してる。バンドで集まって音を出して集合体の内部に潜っていくと、トライバルに限りなく接近していくんです。そういった流れを『FRUE』では全開に開放する。その上で『FRUE』では、DJみたいに前後のタイムテーブルの流れや時間帯でセットの流れを考えるっていうこともやるから、特別で。

それに、耳とか感性の解像度みたいなものへの信頼があって。普段とやってることが同じに見える人もいるだろうけど、預けられる部分の最初の設定がちょっと違うっていうのは『FRUE』にはある。トライバルと、外に開いていくものの間を行き来できる。その回はOLAibiもいたからね。

floatan:Wドラムでね、かっこ良かったです。そのままいろんなアーティストの演奏を聴いて満足いっぱいで帰ったけど、その後、あのとき観たのは一体何だったんだろう、雷に打たれた理由が知りたいと思ってGEZANを検索して。そしたらありがたいことに昔のドキュメントが映像でたくさん残っていたので全部見て、マヒトさんですら忘れてそうなすごく昔の文章とかまで、全部読んで。

マヒト:そうですか。

floatan:とにかく何なのか知りたかった。この人たち何か絶対おかしいから。

マヒト:(笑)。

floatan:何がそれを醸してるのかを知りたくて、で、池野詩織さんが撮った『BUBBLE BLUE』(※)を買ったんですよ。たまたま島根のレコード屋さんに在庫があってそれを取り寄せてみたら、そこに全部写ってたんですよね。

※BUBBLE BLUE:2015年にアメリカのバンド・MEAN JEANSとGEZAN、THE GUAYSが行った『MEAN JEANSの胸ジンツアー』を記録した写真集。

マヒト:なるほど。

floatan:そもそも私はロックバンドに興味を持ったことがなくて。スティーヴ・ライヒとかのミニマルミュージックや、民族音楽とか現代音楽とか、どこか意識が変容するような音楽が好きずっと聴いていて。一番音楽に没入していた20歳くらいの時はテクノの創世記だったから、もうどっぷりクラブにいて。その当時のクラブって全然DJに明かりが当たってなくて真っ暗だったんですよ。前も後ろもないみたいな。そういう、溶けるみたいな音楽と空間がずっと好きで、ロックバンドのことを全然知らなかった。なんかめっちゃ汗かいて大変そうだし。

マヒト:それはそうですね。

floatan:喧嘩して、解散とか。コールアンドレスポンスみたいなものをやるのも、自然発生的じゃない何かの押し付けみたいに感じて、そんなのしたくないし、みたいに思ってた。でも、GEZANは手拍子とかもないバンドで。GEZANを知っていくことは「ロックバンド」というものが何なのか知っていく過程でもあって、こんなにも知らない世界があったんだということに驚いたし、とはいえロックバンドの中でもGEZANは全然違っているようで。

ツアーを観に初めてライブハウスに行く、という経験もして、一緒に出演していらっしゃる十三月の仲間のバンドたちも、ここに全部あるやんって思うくらい素晴らしくて。それは十三月の仲間に独特の、共通している何かみたいなのがあるからだし、それが何なのかが知りたくて、急にライブにも行きまくり始めました。

GEZANのライブは「生きてる感じ」があるのと同時に、めちゃめちゃ「死んでる感じ」がする。(floatan)

floatan:それで、ライブを観るたびにすごい長い文章を書いて。あれは書かずにいられないから書いてるんですけど、書いた後、自分で読むのが面白いんですよね。私が書いてたのかも、もはやわからない。何なのかなこの文章、みたいな。

そうやって時間を経て気づいたことがあって。GEZANにもいろいろなファンの人がいると思うんですよ。古くからのファンも、ロック好きも、あとは何かマヒトさんに対する疑似恋愛みたいなものや、ただ憧れを抱いている人もいると思う。自分の場合はどれもちょっとずつあるのかもしれないけど、どれでもないな、みたいなことをずっと考えていたときに、GEZANのライブで何が一番好きかというと、めちゃめちゃすごい熱量で「生きてる感じ」があるのと同時に、めちゃめちゃ「死んでる感じ」がして。そこに引き寄せられてることに気がついたんです。そういう、生きながら死んでいるみたいな感じがするライブには、出会ったことがなかったから。超プリミティブな民族音楽だったり、全く商業性のないような音楽だったらそうなり得るのかもしれないけど、バンドの演奏でその感覚になるっていうことに興味を持ちました。

floatan:そうすると「魂」の話をせずにはいられない。私は血が赤いのと同じくらい当たり前に、「魂」っていうのが体と重なっていると思っているし、それは知覚もしているから、GEZANのライブは魂の目で観るっていう感じがしているんです。そしてGEZANは、魂を使って演奏や活動をしているんじゃないかって。メンバーが変わって、ロスカルさんとかヤクモアさんとはオーディションで出会っていったじゃないですか。多分マヒトさんの魂の目とか、鼻、嗅覚みたいなのが、匂いを嗅いだんだろうなと思ったんですよね。

マヒト:「魂」の話に全部なっちゃうっていうのはもちろんその通りで。ただ、魂って言葉を使わずにどう話すかっていうのが実は結構重要だと思う。音楽にしろライブにしろ、自分の中のルールでは、一応その言葉を使わない。魂って言葉を使うともう下津(光史)になっちゃうから(笑)。下津はもう常に魂しか言わないし、確かに全部、かたがつけられるんだけどね。

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