坂本龍一がナビゲーターを務め、2003年から20年にわたりJ-WAVEで放送された『RADIO SAKAMOTO』。デモテープオーディションで無名の才能をフックアップし、環境音や非音楽的な要素も放送に乗せるなど、ラジオというメディアを使って「音の実験」を繰り返してきた伝説的なプログラムだ。
その意志を受け継ぎ、進化・拡張させるトリビュートフェス『RADIO SAKAMOTO Uday – NEW CONTEXT FES × DIG SHIBUYA -』(以下、Uday)が、2026年2月13日(金)に渋谷の街を舞台に開催される。
坂本龍一没後3年を迎えようとする今、本イベントが掲げるのは、単なる追悼ではない。タイトルにある「NEW CONTEXT(新しい文脈)」が示す通り、坂本龍一が遺した膨大な音楽的遺伝子を、現代のアーティストたちがどう解釈し、更新していくかという「実験の場」だ。ラインナップの音楽性や背景を紐解きながら、この一夜が持つ意味を探る。
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ジャンルを超えて坂本龍一と共鳴するビートメイカー

本イベントのラインナップにおいて、刺激的かつ象徴的なのが、韓国の音楽プロデューサー・250(イオゴン)の出演だろう。

彼は、韓国の大衆歌謡「ポンチャック」を現代的なダンスミュージックへと昇華させたアルバム『Ppong』で、2023年の韓国大衆音楽賞で「今年のアルバム」含む4冠を達成した異才だ。チープでキッチュと見なされがちだった「ポンチャック」のリズムを、洗練されたエレクトロニック・サウンドで再構築する彼の手法は、既存の評価軸やジャンルの壁を軽やかに破壊してみせる。その姿勢は、YMO時代から晩年のアンビエントに至るまで、常に既存の枠組みを疑い続けた坂本龍一の精神と深く共鳴する。
そして、日本のビートメイカー・STUTSの存在も欠かせない。

MPCを楽器のように操り、ヒップホップを軸にしながらも、星野源やPUNPEEらとの共演を通じてジャンルレスなポップスを提示してきた彼。実は、2023年の「虎ノ門ヒルズ」開業広告において、坂本龍一が作曲した楽曲をSTUTSがサンプリング、再構築するという時代を超えたコラボレーションを果たしている。坂本龍一の旋律を現代のビート感覚で翻訳できる稀有な存在として、今回のステージで何を見せるのか注目が集まる。
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青葉市子、小山田圭吾、U-zhaan。「不在」を彩る共鳴者たち
第2弾発表でアナウンスされた青葉市子 with 小山田圭吾 & U-zhaanは、往年のファンにエモーショナルな瞬間をもたらすだろう。

青葉市子の才能を坂本は早くから認め、2013年には、「青葉市子と妖精たち」名義で、共に作品を制作していた。彼女の活動は今や世界中に広がり、言葉の壁を超えて聴衆を魅了している。そこに加わるのは、YMOのサポートやSKETCH SHOW、METAFIVEとしての活動などを通じ、坂本龍一の「右腕」とも言える信頼関係を築いてきた小山田圭吾(Cornelius)。そして、タブラ奏者として唯一無二のポジションを築き、坂本龍一との即興演奏でも数々の名演を残してきたU-zhaanだ。
青葉市子と妖精たちのアルバム『ラヂオ』には、青葉市子の他に坂本龍一、細野晴臣、小山田圭吾、U-zhaanが参加している
さらに、ロンドンを拠点に活動する小袋成彬の出演も重要だ。R&Bやエレクトロニクスを横断する彼の内省的かつ先鋭的なサウンドデザインは、孤独と向き合いながら普遍性に到達しようとする試みであり、坂本龍一のソロワークスに通じる哲学を感じさせる。

また、アカデミックなジャズの素養を持ちながら、King Gnuの常田大希が主宰するPERIMETRONやWONKのメンバーとしても活躍する音楽家・江﨑文武、独創的なサウンドで韓国電子音楽シーンを牽引するKIRARAなど、出演者がそれぞれの「文脈」で坂本龍一と接続している。

