メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

柴咲コウ×川口春奈が語る、正義の多義性。ゴシップや週刊誌という存在の複雑さ

2025.12.19

#MOVIE

華々しい芸能界の裏側では、立場ごとにさまざまな思いが行き交っている。ABEMAオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』は、タレントを支える側と、スキャンダルを追う側、両者の禁断の攻防戦を描きながら、その先にある芸能界の深い闇に切り込んでいく作品だ。

本作で芸能事務所の社長・井岡咲を演じた柴咲コウと、週刊誌記者の平田奏を演じた川口春奈。劇中では相反する立場にいる2人が、作品を通して、そして現実の芸能界で感じていることを率直に語ってくれた。

SNSで拾われる声、報道が持つ力、タレントとマネージャーの距離、正義と悪がきれいに分けられない瞬間――。ドラマで描かれるテーマは、2人の実感と静かに重なり合っていく。

「芸能界とスキャンダル」を演じる複雑さ

—芸能事務所と週刊誌がスキャンダルを巡って攻防を重ねる『スキャンダルイブ』ですが、脚本を読んで、最初に惹かれたのはどんなところでしたか?

柴咲:旧知のプロデューサーさんから「面白い物語でご一緒したい」と声をかけていただいていたので楽しみにしていたんです。そこで届いたのが今回の脚本。世論の雰囲気とばっちりで、「なんとリアルタイムなんだろう」と思ったのが最初の素直な感想です。もし、芸能界のマイナス部分だけを切り取る物語だったら、出演することに少し迷いはあったかもしれません。でも、私が演じた芸能事務所の社長のように、マネジメントに力を尽くしてくれる方が大勢いてこそ成り立つ仕事だということを、しっかり伝えられるいい機会だと感じて出演を決めました。これまでも飛行機の整備士の役や看護師など、裏方の仕事を演じてきた経験がありますが、自分が長年身を置いてきた世界とここまで近い役柄は珍しいので演じるのも楽しみでした。

柴咲コウ(しばさき こう)
俳優・歌手・レトロワグラース代表。2016年に持続可能な調和社会の実現に向け「レトロワグラース」を設立。近年では、TBSテレビ金曜ドラマ『インビジブル』、映画『沈黙のパレード』、映画『月の満ち欠け』、映画『Dr.コトー診療所』など数多くの作品に出演。2023年公開のジブリアニメーション映画『君たちはどう生きるか』では声優を務めて話題に。

川口:芸能界の裏側やスキャンダルを扱う、インパクトのあるギリギリの題材にまず惹かれました。「こういうシチュエーション、実際にありそうだな」と思いながら脚本を読み進めていくうちに、どんどん面白くなっていって。どこか怖いもの見たさで目が離せなくなるテーマでもありますし、「挑戦してみたい」という気持ちが自然と湧いてきました。

川口春奈(かわぐち はるな)
俳優・モデル。1995年、長崎県出身。雑誌『ニコラ』専属モデルとしてデビュー。2009年ドラマ『東京DOGS』でドラマデビューを飾る。近年の代表作にドラマ『silent』、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』などがある。

—演じるうえで、特に心に残っているセリフやシーンはありますか?

柴咲:やっぱりクライマックスのシーンは印象的ですよね。物語のすべてがそこに集まっていくような感覚がありました。詳しく話すとネタバレになってしまうので多くは言えませんが、自分自身の在り方にも問いかけられるような内容だと思います。ぜひ観て確かめてほしいですね。

川口:タレントを守ろうとする、柴咲さん演じる井岡咲が、記者に向かって「これは誰得なの?」「あなたたちがやっていることはおかしい」と言うシーンがあるんですが、その言葉には私自身も共感する部分があって。でも、報じる記者の方にとってはもちろん仕事でもあるわけで……。どちらの気持ちもわかるからこそ、演じながらすごく難しさを感じました。私たちはよく「スキャンダルを報じられるくらいの対価をもらっているんだから、これくらいは有名税でしょう」と言われることもありますが、本当にしょうがないことで片づけてしまっていいのかな、という思いもあって。改めていろいろ考えさせられました。

柴咲:春奈ちゃんが演じたのは報道記者という、普段の自分とはまったく逆の立場だからこそ、いろいろ複雑な気持ちにもなるよね。

川口:そうですね。普段の自分ではなかなか味わえない感情に触れられたので、その面白さもありました。ただ……やっぱり複雑ではありましたね。

『スキャンダルイブ』
芸能事務所と週刊誌による、スキャンダルを巡る禁断の攻防戦を描く、ABEMA新オリジナルドラマ。芸能事務所社長・井岡咲(柴咲コウ)の元に飛び込んできたのは、所属俳優Fのスキャンダルが掲載されるという週刊誌からの告知だった。記事が出るまで、あと72時間。スキャンダルの水面下で巻き起こる、事務所と週刊誌の熾烈な争いが火蓋を切る。いまだかつて描かれることのなかったスキャンダルの裏側、そして芸能界の深い闇へと切り込んでいくサスペンスドラマ。

SNSが活発になって、今まで拾われてこなかった声が見えるようになってきた(柴咲)

—ドラマでは、スキャンダルの裏側にあるタレントと事務所の絆も描かれています。こうした関係性の描写に、リアルだと感じる部分はありましたか?

柴咲:絆って、意識して築かれていくものもあれば、相性のようなものもありますよね。学校で信頼できる先生に出会えた人もいれば、どこか疎外感を覚えた人もいるように、運命としか言えない部分もある。私自身は、最初の事務所で見いだしてくださった方には、今でも深く恩を感じています。独立した現在も連絡を取り合っていますし、あの時に素晴らしい育ての親に出会えたことは、私にとって本当に大きな財産だと思っています。

川口:マネージャーさんって、ある意味運命共同体ですよね。同じ熱量で仕事に向き合いたいし、対等でいたい。コミュニケーションを重ねながら信頼関係を築いていくことが理想だと思っています。その点で、咲はまさに理想のマネージャー。タレントへの愛情も情熱もあって、ああいう存在に支えられたら心強いですよね。

柴咲:それでいて、全然うっとうしくないのがいいですよね。タレントが焦っているときに「大丈夫だから」って声をかけてくれるのも、本当に救われる。「大丈夫」って、心をふっと落ち着かせてくれる魔法の言葉だと思うんです。

—タレントとマネージャーの関係は、一般の我々にはほとんど見えない領域ですよね。本作では、その密度の高い裏側が少しだけ覗けるのが興味深いと感じました。劇中には「古い芸能界のシステムが生んだ価値観と、新しい価値観の狭間にいる」という印象的なセリフもあります。お二人は実際にこの世界で仕事を続けてきて、いま業界が抱える揺らぎや変化をどのように感じていますか?

柴咲:テレビ局とプロダクションのあいだには、いろんなリレーションシップがありますし、全部をクリーンにさらけ出すことがイコール善、というわけではないと思うんです。でも、その業界なりの風通しのよさは必要ですよね。SNSが活発になって、今まで拾われてこなかった声が見えるようになってきた、というのはあるのかもしれません。私自身、昔から「風通しをよくしてください」と言い続けてきましたし、売れていない頃から、嫌なことにはちゃんと「嫌だ!」と伝えてきました。そうやって積み重ねてきたものが、今につながっているのかなと思います。

川口:業界全体のことを語るのは難しいんですけど、私個人の感覚でいうと、昔と比べて「個」が強くなってきたというか、意見がきちんと尊重される場面が増えているようには感じています。

芸能事務所社長・井岡咲(柴咲コウ) / 『スキャンダルイブ』場面写真 

今の社会に問いをなげかけるような物語になっている(川口)

—芸能マネージャーや週刊誌記者を演じるにあたり、役作りなどはしましたか?

柴咲:今回、スタッフさんが芸能マネージャーや週刊誌記者の仕事ってどういうものなのかが分かる、マニュアルのようなものを作ってくれたんです。実際にしっかり取材してくださったみたいで。タレコミがあった場合はどう動くのか、という項目は思わず読み込んじゃいました。

『スキャンダルイブ』場面写真

川口:興味深いですよね! 知らないことばかりで驚きました。

柴咲:マネージャーの立ち回りみたいなのも「これ、うちのスタッフ用にもらっていいですか?」と頼みたくなるくらいきちんと書かれていて。ありがたかったです。

—この役を引き受け、演じきるうえで、何か「覚悟」のようなものは必要でしたか?

柴咲:私も春奈ちゃんも今までいろんな記事を書かれてきて、それこそ嫌な思いもたくさんしています。誹謗中傷された経験だってゼロではない。このドラマに出演することで、そういったリスクが増えてしまうかもしれないという懸念はありましたが、描かれているテーマをしっかり伝えるぞ、と覚悟を持って出演を決めました。

川口:演じることには迷いはなかったです。芸能人である私が、芸能人を追い詰める記者役を演じられるなんてなかなかない機会だと思うので。役に共感できる部分は少なかったですが、その分どのシーンも新鮮で楽しかったですね。私が演じた平田奏は、常に人を斜め上から見下しているんですよ。普段そういった心境になることはないので、それもまた面白かったです(笑)。

奏が自分の正義を疑うようになっていくように、このドラマ自体も、今の社会に問いを投げかけるような内容になっていると思うんです。だからこそ、視聴者のみなさんがどう受け取ってくださるのか、すごくドキドキしています。柴咲さんがおっしゃっていたように、テーマが曲がって伝わらなければいいな、と願っています。

敏腕記者・平田奏(川口春奈 / 左)と井岡咲(柴咲コウ / 右) / 『スキャンダルイブ』場面写真

柴咲:「芸能人のみなさん スキャンダルにご注意ください」なんて、煽るような広告も出てるしね。私たちがプロモーション案を練っているわけではないですから(笑)。そこはご理解くださいね。

記事にされている時点で「みんな私のことに興味を持ってくれてるじゃん」って思えるようなマインドでいたい(柴咲)

—表舞台に立つお二人は、日々流れてくる芸能ニュースとどのような距離感で向き合っていますか?

柴咲:自分から積極的に拾いにいくことはないんですけど、嫌でも目に入ってきてしまうじゃないですか。こちらがどれだけニュートラルでいようとしても、ゴシップって容赦なく流れ込んでくる。そして、一度目に入ってしまうと、まったく心が揺れない、というわけにもいかなくて。「この記事、本当なのかな?」ってつい気になってしまう自分もいるんですよね。

川口:私はエゴサはするけど、他の方のことには興味がわかないです。

柴咲:春奈ちゃんは強いし、えらいよね。

川口:自分がどう見られているかはすごい気になっちゃいます。エゴサもよくしちゃうし、スマホは手から離せないですね。一番悲しいのって、悪く報じられることよりも、一切興味を持たれないことだと思いませんか? 無関心だと辛いですよね。

柴咲:そうだね。たとえ悪いトピックだったとしても、記事にされている時点で「みんな私のことに興味を持ってくれてるじゃん」って思えるようなマインドでいたいよね。私、ステージで歌っているとき、客席で眠そうにしている人がいるとすぐ気づくんですよ。つまらないのかな、って昔はすごく気にしてしまっていて。でも、あとから「柴咲さんの歌を聴いてリラックスできました。ありがとうございます」って言われることもあって、眠そうに見えたのは退屈だったわけじゃなくて、ただ心が緩んでいただけだったんだ、と思うこともありました。無表情でも、実はすごく感動してくれている方もいる。だから、一読すると私を批判しているように見える記事でも、そこに至る事情があるのかも、と今は思えるようになりました。いろんな捉え方ができるようになったのは、アーティストの仕事を続けてきたからこそ得られた視点なんだと思います。

—週刊誌は芸能スキャンダルを扱う一方で、新聞が扱わない政治的な問題にも踏み込むことがあります。その「二面性」について、お二人はどう捉えていますか?

柴咲:難しいですよね。座談会を開いて何時間議論しても、きっと答えは出ない気がします。週刊誌って、「社会に向き合う態度として、それでいいの?」と問いかけてくるような存在でもあると思うんです。もし週刊誌や記者がただの悪者だったら、『スキャンダルイブ』は生まれていないし、そこに葛藤も生まれない。単純な悪ではないからこそ、この物語は問題提起としての力を持てたのだと思います。

この世界で長くやってきて気づいたのが、9割以上憶測でも、ほんの少し事実が入っているということ(笑)。ドラマの主題歌”Awakening(feat. LITTLE)”の歌詞にも<事実と憶測はセット>と書きましたが、まさにその通りで。

『スキャンダルイブ』場面写真

川口:1%くらい正しいことが書いてあることもあるからやっかいですよね。たまに「どんな神経で書いてるかな?」と、怒りを感じるときもありますが、奏のように、芸能界への嫌悪感や正義感があるからこそ書きたいと思う記者の気持ちも、どこか分かるんです。柴咲さんがおっしゃっていたように、悪の側面と正義を感じさせる側面、その両方があるからこそ物語が生まれるんでしょうね。

ABEMAオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』

キャスト:
柴咲コウ
川口春奈
横山裕
柳俊太郎
浅香航大
橋本淳
茅島みずき
影山優佳
齊藤なぎさ
入江甚儀
帆純まひろ
前田敦子
鈴木浩介
鈴木一真
梶原善
柄本明
ユースケ・サンタマリア
鈴木保奈美

スタッフ:
企画・プロデュース:藤野良太
脚本:伊東忍・後藤賢人・木江恭(storyboard ライターズチーム)
監督:金井紘
制作プロダクション:storyboard
製作著作:ABEMA

番組ページ:https://abema.tv/lp/scandaleve-onair 
公式X:https://x.com/scandaleve_ 
公式Instagram:https://www.instagram.com/abema_drama_scandaleve 
公式YouTube:https://www.youtube.com/@drama_ABEMA 

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS