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私を求めてくれる人のために。みらんが語る、新しい出会いと新作『WATASHIBOSHI』

2023.12.13

#MUSIC

NiEWでは小原晩との交換日記『窓辺に頬杖つきながら』の連載でもおなじみのシンガーソングライター、みらん。筆者が初めて出会ったのは、EP『モモイロペリカンと遊んだ日』(2021年)をリリースするタイミングでの取材だった。彼女にとっては初めてのインタビューだったそう。ソングライティングやアレンジを始め、まだ未成熟な部分はあったものの、すでに堂々とした歌いっぷりと、人前で自分の表現をすることや人と関わること自体に強く喜びを見出しているところに、他のシンガーソングライターとは少し違う魅力を感じていた。端的に言うならば「ちゃんと主人公を引き受けられる人」だと思ったのだ。

そこから2年。みらんの活動はものすごいスピードで拡大している。曽我部恵一(サニーデイ・サービス)プロデュースの“低い飛行機”は映画『愛なのに』主題歌にもなり、『Ducky』でアルバムデビュー。以降も途切れることなくシングルをリリースしながら、演技初挑戦となった映画『違う惑星の変な恋人』ではレッドカーペットを歩くことにも。またこれまで関西拠点の活動だったが、今年上京もしたそうだ。

そんな中で完成を迎えたニューアルバム『WATASHIBOSHI』には、彼女のぐいぐい成長を続ける過程が見事に刻まれている。スタッフやバンドメンバーら、仲間の支えも受けながら音楽活動に邁進してきたみらんに、昨年以降の活動と本作の手ごたえについて聞いた。2時間半にわたるロングインタビューだったが、「もっとかっこよくなりたい」と語る彼女はやっぱり主人公の器に相応しい人なのだ。

このスケジュールを当たり前にこなさないと、次には行けないと思っていたので「やります!」って感じで。

―昨年3月に発表した前作アルバム『Ducky』から新作『WATASHIBOSHI』に至るまで、ライブやシングルリリースにハイペースで動き続けていた印象ですが、ご自身の体感はいかがでしたか?

みらん:『Ducky』もかなり頑張って完成させたアルバムだったんですけど、一瞬で過ぎ去っていきましたね。3月にリリースして、4月に東京と大阪でレコ発ライブをやったらすぐに次に取り掛かって、9月にはシングル“夏の僕にも”を出していますし。

みらん – 夏の僕にも (Official Music Video)

―この勢いのまま、止まらずいったれいったれと。

みらん:今回のアルバム完成まではスケジュールを立てていたので、とにかくここまでやり切ろうとしていましたね。

みらん
1999年生まれのシンガーソングライター。包容力のある歌声と可憐さと鋭さが共存したソングライティングが魅力。2020年に宅録で制作した1stアルバム『帆風』のリリース、その後多数作品をリリースする中、2022年に、曽我部恵一プロデュースのもと 監督:城定秀夫×脚本:今泉力哉、映画『愛なのに』の主題歌を制作し、2ndアルバム『Ducky』をリリース。その後、久米雄介(Special Favorite Music)をプロデューサーに迎え入れ「夏の僕にも」「レモンの木」「好きなように」を配信リリース、フジテレビ「Love music」でも取り上げられ、カルチャーメディアNiEWにて作家・小原晩と交換日記「窓辺に頬杖つきながら」を連載するなど更なる注目を集める中、新曲「天使のキス」を配信/7inchにてリリースした。2023年12月13日には新作アルバム『WATASHIBOSHI』をリリースする。

―その忙しい中でモチベーションとしてはどうでしたか?

みらん:去年の9~10月くらいが一番忙しかった記憶があります。バイトもしながら、レコーディングもスタジオ練習もしたし、ライブもいっぱいあって、名古屋にも遠征している。でもどうにかなるだろうとは思っているんですよ。このスケジュールを当たり前にこなさないと、次には行けないと思っていたので「やります!」って感じで。強くなりましたね。

―『WATASHIBOSHI』のプロデュースを務めたSpecial Favorite Music(以下、SFM)の久米雄介さんとのタッグが始まったのが、さきほど話に出た“夏の僕にも”(2022年9月発表)からですね。

みらん:『Ducky』は定期的にスタジオに入ってセッションしながら作った作品で、やけっぱちながらもなんとか面白いものができたんですが、次またアルバムに向かうとなったら「これは私が全責任を背負って仕切るのは無理だ……!」と思いまして。他の方の力を借りることにしたんです。久米さんがプロデュースやCMの仕事もたくさんされているのは知っていたので、お願いしたいなと思って、『Ducky』のミックスをしてくれた荻野真也さんに紹介してもらいました。

―そこからアルバムに向けた久米さんとの作業が始まっていったと。

みらん:いや、最初は“夏の僕にも”だけの予定でした。当時久米さんも大阪在住だったので、自宅におじゃまして話しながらアレンジを進めていったら楽しくて。これはアルバム全部お願いしたいと思ったんです。

―“夏の僕にも”ではどんなやり取りをされましたか?

みらん:私からは、アコギ弾き語りの要素をちゃんと残しておきたいというのと、キメとなるポイントをいっぱい入れてライブでも映えるようにしたいとお伝えして。そこから久米さんがバンドアレンジを考えてくれたんですけど、ドラム、ギター、ベース、全ていいバランスでまとめてくれたので「これが『Ducky』の時にはできなかったことだ……」と感動しちゃって。“ドラゴンと出会う”もすでにあったので、おまけのようにその勢いでアレンジと録音までサクッと仕上がりました。

―この2曲から始まって、アルバムに向けてどのようにレコーディングを進めていったんですか?

みらん:アルバムまでにシングルもいくつか出そうとしていたので、2022年の10月に2回目、そして2023年3月に東京で3回目と分けて録音しました。2回目くらいの時期は東京に来るたびまだワクワク感がありましたね。上京も全然考えていなかったんですけど、サポートしてくれている人がどんどん東京に引っ越していくんですよ。久米さんも、猫戦の澤井悠人くん(Ba)も。やっぱり東京に引っ越した方がいいのかなぁと、この頃から考えるようになりました。

まさか私が『東京国際映画祭』でレッドカーペットを歩くことになるとは……

―10月のレコーディング2回目は何を録ったんですか?

みらん:“恋をして”、“もっとふたり”、“好きなように”、“レモンの木”。4曲ですね。ここで映画『違う惑星の変な恋人』の話をいただいたので、主題歌の“恋をして”と挿入歌の“もっとふたり”を完成させることはマストでした。

―映画主題歌の“恋をして”はどのように作りましたか?

みらん:監督の木村聡志さんとお話させていただいたり、脚本を読みながら書きました。監督からは「自由に作ってください」とは言われたんですけど、物語から外れすぎないように汲み取っています。大変なことは色々あるけど、今は楽しいっていう映画でしたし、2番に出てくる<指差して責められるほど間違ったことはしていない>とかは特定のシーンそのもの。

―Cメロからラストサビ、アウトロの流れには各パートの見せ場もあるし、全体的に煌びやかなアレンジですね。

みらん:広く受け入れられるポップなものでありつつ、トレンディドラマのように人と人が交差するイメージがありました。久米さんに伝えた参考音源のリストが携帯に残ってますね。大瀧詠一“君は天然色”、大橋トリオ“めくるめく僕らの出会い”、猫戦“サテライト”、Rei“Smlile! with 藤原さくら”……なるほどなるほど。

―またこの映画には出演もされましたね。演技は初でしたが、どんな経験になりましたか?

みらん:まさか私が『東京国際映画祭』でレッドカーペットを歩くことになるとは……さすがに想像もつきませんでした。でも自分主体でやっている音楽とは違って、自分が満足できるかではなくて、監督にOKを出してもらえるには、どう振舞うかという経験は面白かったです。何度かテイクを重ねていく中で、どういう理想を求めているのかわかっていくんですよね。人の作品に携わることの楽しさを知った感覚。

『違う惑星の変な恋人』変な特報

―ミュージシャンのナカヤマシューコ役をすごく自然に演じられていましたが、普段のみらんさんの性格とは全然違うキャラクターでしたね。

みらん:私はシューコほどズバズバものを言える人ではないので、自分の中にない言葉を言ってみるのは気持ちよかったし、面白かった。

―出演シーンの最後に言い捨てたあの関西弁のセリフ、最高です。

みらん:あそこですね(笑)。私からは絶対出てこない切り返し。自分のプライドを強く持っている人なんだと思います。でもついつい人を好きになってしまう可愛さもある。

―みらんさんも関西人ですけど、シューコほどコテコテではないですよね。

みらん:だから難しかったんですよ。関西弁ってトーンが下がっちゃうから声も小さくなるし、かなり練習しました。今後も演技はめちゃめちゃやりたいんですけど、できれば次は標準語の役もやってみたい。

―作中ではライブ会場で“もっとふたり”を歌うシーンもありました。

みらん:活動を始めた初期からあった曲で、ちょっと湿り気がある感じがシューコに合うんじゃないかと思って引っ張り出してきました。

―実際のレコーディングではガットギターでベルマインツの盆丸一生さんが参加していますね。

みらん:“もっとふたり”と“レモンの木”でガットギターを使いたかったんですが、自分はチープなやつしか持ってなくて。盆丸くんが持っていると聞きつけたので貸してもらおうと。レコーディングしているスタジオまで持ってきてもらったんですけど、久米さんが「自分のギターだから盆丸が弾いた方がいいんじゃない?」と無茶ぶりして(笑)。そしたら盆丸くんも乗ってきて間奏のフレーズも考えてくれたり、面白い録音になりましたね。

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