11月29日(金)に公開される映画『雨の中の慾情』の舞台挨拶&作品についての質疑応答の場となるティーチインが、10月30日(水)に東京国際映画祭内のイベントとしてTOHOシネマズ日比谷で開催された。
『さがす』『ガンニバル』の片山慎三が、つげ義春の同名シュルレアリスム作品を原作に独創的なラブストーリーとして映画化した同作。舞台挨拶には売れない漫画家・義男を演じた成田凌、妖艶でミステリアスな魅力を放つ美しい未亡人・福子を演じた中村映里子、台湾から参加したキャストのひとりで、森田剛演じる伊守の妻・春美(シェンメイ)を演じた李杏が登壇した。
成田は小雨が降る曇天の天候とタイトルをかけ「『雨の中の慾情』日和にお越しいただきありがとうございます」と挨拶して場内の笑いを誘いながらも、作品の上映直後の雰囲気に「入ってきた時にお疲れムードを感じました(笑)。でも、最後には愛という形が見える作品になっていると思います」と述べた。中村は「私にとっても特別で、かけがえのない作品になりました」と笑顔に。台湾からの参加となった李杏は「この東京国際映画祭という場でワールドプレミアに出席できて嬉しいです」と明かし、三者三様に作品のワールドプレミア開催を喜んでいた。

最初にオファーを受けた時について、成田は「生半可な気持ちではできないな……」と重圧を感じながらも「こういう映画を作りたいと思っていました」と、当時の想いと覚悟を回想。中村は「片山監督は作品を経てどんどんパワーアップしていると思いますし、監督の作品なら絶対やりたい!と思っていました。原作やキャラクターのユニークさ、その世界観がすごく面白そうで、その世界に飛び込んでみたいと強く思ったんです」と、福子役に挑む上での当時の意気込みを思い返して述懐した。2017年に台湾でも公開された片山の作品『岬の兄妹』が大好きだという李杏は、「当時、ご縁があって監督と知り合うことができて……今回のオファーは躊躇なくお受けいたしました」と、作品への出演に至るエピソードを披露した。
後半には来場者からのQ&Aも実施。「役を演じる上で監督からはどのような演出がありましたか?」といった質問に、成田は「まず言われたのは義男の走り方です。『義男は肘を曲げないで走ると思うんですよ』と言われて。義男は生活の中で、どういう人間なのかを表現する必要があると思っていました」と、予告映像にも収められている義男の独特なフォームで駆け抜ける姿の裏話を明かした。
中村は「私はとにかく明るく演じてほしいと言われていました。福子という人物をリアルに表現するというより、どちらかというと大げさというか、思いっきり演じてみよう、という気持ちでしたね。汗っかきという設定なので、いっぱいオイルをつけていたりもして……それがキャラクターの一つの印象的な部分にもつながったと思います」と、具現化するのが至難の業だったという役作りについての裏側を語った。李杏も「瞬きのスピードを遅くしてほしい、と言われました。言われた事がない演出だったので面白かったです。いい経験でした」と、片山が創出する世界を楽しみながら演じた撮影を振り返った。
また、「自身の役柄とキャラクターが重なる部分はありますか?」という質問に対しては、「気が小さい所ですかね。こうなればいいな、と思うことはあるけど、そのための一歩が進んでいるのか、いないのか……あとできれば楽をしたいと思っている所です(笑)」と、成田は冗談を交えて回答。妖艶なファムファタル(運命の女)のように見えて、儚げな未亡人の雰囲気もたたえており、かと思えば嫉妬に狂う激情家の一面も持つ役柄である福子を演じた中村は「衝動的、直感的というか……自分の思うままに、というのは重なるかなと思います」と役柄に通じる自身の一面を告白した。
最後に成田が「今日はご来場いただき本当にありがとうございました。愛情の溢れる現場で撮影し、エネルギッシュな作品に仕上がりました。僕にとっても大切な作品になっていますので、皆さんの心にも残ると嬉しいです」とメッセージを贈り、ワールドプレミアとなった舞台挨拶&ティーチインは幕を閉じた。

なお、『雨の中の慾情』は11月3日(日・祝)と5日(火)にも上映が決定。3日(日・祝)には監督・片山慎三によるQ&Aが行われる。
『雨の中の慾情』
成田凌
中村映里子 森田剛
足立智充 中西柚貴 松浦祐也 梁秩誠 李沐薰 伊島空
李杏 / 竹中直人
監督・脚本:片山慎三 原作:つげ義春「雨の中の慾情」
企画:中沢敏明 エグゼクティブプロデューサー:英田理志 中西一雄 林之晨 鶴丸智康
プロデューサー:厨子健介 筒井史子 劉士華
コ・プロデューサー:後藤哲 李芃君 川端基夫(山形ロケ) 和田大輔(茨城ロケ)
脚本協力:大江崇允 音楽:髙位妃楊子 衣裳デザイン・扮装統括:柘植伊佐夫
撮影:池田直矢 照明:舘野秀樹 録音:秋元大輔 美術:磯貝さやか
装飾:折戸美由紀 小道具:佐藤桃子 編集:片岡葉寿紀 音響効果:井上奈津子
VFXスーパーバイザー:朝倉怜 衣裳デザイン補・スタイリスト:玉置博人
スタイリスト:橋本ゆか ヘアメイク:会川敦子
VFXプロデューサー:川瀬基之 音楽プロデューサー:安井輝 宣伝プロデューサー:小口心平
スチール:柴崎まどか キャスティング:北田由利子 助監督:山口晋策
制作:セディックインターナショナル 日商賽奇客有限公司 井風國際娛樂有限公司
製作:映画『雨の中の慾情』製作委員会 配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©2024 「雨の中の慾情」製作委員会
公式サイト:https:/www.culture-pub.jp/amenonakanoyokujo/
公式SNS:@ame_yokujo
■あらすじ
貧しい北町に住む売れない漫画家・義男(成田凌)。アパート経営の他に怪しい商売をしているらしい大家の尾弥次(竹中直人)から自称小説家の伊守(森田剛)とともに引っ越しの手伝いに駆り出され、離婚したばかりの福子(中村映里子)と出会う。艶めかしい魅力をたたえた福子に心奪われた義男だが、どうやら福子にはすでに付き合っている人がいるらしい。伊守は自作の小説を掲載するため、怪しげな出版社員とともに富める南町で流行っているPR誌を真似て北町のPR誌を企画する。その広告営業を手伝わされる義男。ほどなく、福子と伊守が義男の家に転がり込んできて、義男は福子への潰えぬ想いを抱えたたま、三人の奇妙な共同生活が始まる……。