黒沢清が監督 / 脚本を務めた映画『Chime』が、4月12日(金)19時よりDVT(Digital Video Trading)プラットフォーム「Roadstead」にて999本限定で販売開始される。これに先駆けた4月9日(火)、「Roadstead」に関するカンファレンスが、東京・墨田区の映画館ストレンジャーで行われた。
作品を視聴して楽しむだけでなく、出品者(ライツホルダー)がユーザーに許可したリセールやレンタルなど、コンテンツの様々な利用が可能な「Roadstead」。「作品の権利者は利益配分のルールを完全にコントロールできる」「ルールはブロックチェーン上に記録され正しく運用される」「ユーザーは作品を鑑賞するだけでなく、NFT(Non-Fungible Token)として販売することで流通に参加できる」「作品はDRM(Digital Rights Management)で保護されているため、ユーザー含め権利者以外が複製や改変をすることが不可能」なことを特徴としている。また、ブロックチェーン技術とDRM技術を組み合わせることで、ユーザーが積極的に作品の流通に関われるWeb3.0時代の新しいプラットフォームを作ることを目標としている。
カンファレンスには「Roadstead」を運営する株式会社ねこじゃらしの代表・川村岬が登壇。冒頭で「映画は死なない。技術を味方に一人一人の声を届ける」というマーティン・スコセッシが『第74回ベルリン国際映画祭』で口にした言葉を紹介し、カンファレンスでの発表内容は「この言葉に凝縮されています」と語った。
そして「Roadstead」について「ひと言で言うと、ユーザーが作品を広めるWeb3型のプラットフォームです」と改めて説明。「作品を販売するクリエイター側は基本的に全くノーリスクで作品をローコストで出品することができますし、作品を買うユーザー側は、いわば作品の『オーナー』となって、合法的にトレードできます。最終的に、テクノロジーで映像作品の流通コストを改善し、その利益をクリエイターに還元することで、作品制作の好循環をつくることを目指しています」とクリエイターとユーザーの関係性、その目指すべき方向性を語った。
また、「Roadstead」上での具体的な作品の販売の仕組みの説明に際し、川村は「DVT」という概念を提唱。これは「デジタル映像作品のオーナーライセンスを購入し、それを好きな時にトレード(リセールおよび期間限定でのレンタル)すること、さらに家族や友人などのために非営利の上映を行うこと(スタニング)も可能になる」というもの。
現在の日本国内における映画興行ウインドウでは、約2,100億円規模の劇場公開、約5,500億円規模の配信(SVOD)、DVD、Blu-rayの販売、放送、非劇場 / 自主上映という流れがおおむね一般的となっている。「Roadstead」を全ての公開ウインドウの最初に持ってくることで、コアなファンの「いち早く見たい」「コレクションしたい。特典が欲しい」「人にも見せたい」という要望 / 熱量に同時に応え、映画を盛り上げることが可能になると川村は展望を語る。
一方で、映画館の大スクリーンやサラウンド音響で映画を鑑賞することやパンフレットやグッズの存在、舞台挨拶やティーチインなどのリアルな交流がもたらす特別な価値についても言及。「Roadstead」がミニシアターエイドなどの映画の多様性を支える活動をスポンサードしてきたことにも触れつつ「DVTと劇場公開は両立する」と語り、劇場の利益を損なう存在ではないと川村は強調した。
「Roadstead」では、オリジナル作品第1弾として『Chime』を99USドルで販売。第2弾には工藤梨穂監督の『August My Heaven』がリリース予定で、川村の口からは第3弾以降の作品も制作中であることが明かされた。
『Chime』は全世界販売総数が999本に達した時点で販売終了となるが、5月13日(月)からはリセール / レンタル / スタニングの利用が開始される。リセールはオーナーが自由に価格を設定して販売できる機能で、リセラー(オーナー)にはライツホルダー(一時出品者)が事前に設定したパーセンテージ(『Chime』の場合は50%)に応じた収益分配とサービス利用手数料20%が引かれた残額がアカウントに配分される再販売形式。ライツホルダーにはリセールの収益が永続的に分配されることになる。レンタルはオーナーが所有するコンテンツを有償で貸し出せる機能で、最低レンタル価格は3USドル、そのうち10%がオーナー収益となる。スタニングはオーナーが所有するコンテンツを第三者に無償で鑑賞させる機能となっている。
DVT(Digital Video Trading)で提供される機能販売について
・リセール
オーナーは所有するコンテンツの価格を自由に設定して販売することができます。売買が成立するとその売上から、ライツホルダー(一次出品者)が事前に設定したパーセンテージに応じた収益分配、及びサービス利用手数料20%が引かれた残額がリセラーのアカウントに配分されます。
ライツホルダーには永続的にリセールの収益が分配されます。
『Chime』の場合、リセール価格を100%とした、リセラーへの収益分配率は50%です。
・レンタル
オーナーは所有するコンテンツを有償でレンタルすることができます。
『Chime』の場合、レンタル価格を100%とした収益分配率/最低価格は次の通りです。
・オーナー収益10%
・最低レンタル価格:3USドル (450円)
・スタニング
『Chime』のオーナーは所有するコンテンツをRoadstead 上で再生し、第三者に無償で鑑賞させることができます。オーナーは好きな作品、クリエーターを周囲に広める「スタニング=熱狂的なファンによる推し活」を行うことができます。
・特典
オーナーに対し、これまでDVDパッケージに含まれていた特典映像のようなコンテンツをプレゼント(無償配布)することが可能です。無償の場合、ライツホルダーに一定額のRoadstead利用料を負担いただきます。『Chime』のオーナーには前ページに記載の特典①、②(※)が付与されます。
※編集部注
①金允洙が監督を務めたメイキングドキュメンタリー『料理人たち』
②作品のデジタルポスター
Roadstead | DVT platform https://roadstead.io/chime