アマヤドリの舞台『「人形の家」激論版 / 疾走版』が3月15日(金)から24日(日)まで、東京・目白のシアター風姿花伝で上演される。
2001 年に「ひょっとこ乱舞」として結成し、2012 年に現在の劇団名となったアマヤドリ。広田淳一によるオリジナル戯曲を中心に、現代口語から散文詩まで扱う「変幻自在の劇言語」と、クラッピングや群舞などの音楽やダンスといった要素も取り入れた「自由自在の身体性」を両輪として活動している。
同公演では、ヘンリック・イプセンによる『人形の家』をもとに、会話主体の「激論版」と身体主体の「疾走版」の2バージョンが上演される。構成・演出を務めるのは広田淳一。「激論版」の出演者は徳倉マドカ、倉田大輔、大塚由祈子、宮崎雄真、中村早香(以上、アマヤドリ)、西本泰輔。「疾走版」の出演者は沼田星麻、一川幸恵、宮川飛鳥、堤和悠樹、星野李奈、稲垣干城、相葉りこ(以上、アマヤドリ)冨永さくら、結稀キナ、村山恵美。
各公演のスケジュールやチケットについては、公式サイトをチェックしよう。
主宰・広田淳一のコメント
アマヤドリ、イプセン四演目めにしていよいよ『人形の家』に取り組むことになりました。他の作家に浮気することもなく、古典といえばイプセンてな具合で取り組んできたわけですが、イプセンの何がそんなに好きなのか?と問われれば、やっぱり登場人物の複雑さ、豊かさに圧倒的なものを僕は感じているわけです。以前にやった『野がも』にしてもそうですが、若い男女はもちろんのこととして、中年、壮年、老人から幼女に至るまで、極めて複雑でロクでもない、小ズルく嫉妬深く、嘘ばっかりついている、鼻持ちならない人間がたくさん出てくる。みんなそれぞれイヤなやつなのに、みんなそれぞれに追求している美学があって、理想があって、でも、限界があって。ああ、人間がいるなあ、と思わせてくれるところがイプセンの真骨頂、ではないかと思っております。
実は何年も前の段階で一度、『人形の家』をやるという企画があったんですが、あえて今まで避けてきました。というのも、タイトル負けしちゃうと思ったんですね。やっぱり有名だし。今、こうして何本かイプセン作品に取り組んだあとで自分たちなりに多少は方法論、突破口みたいなものが見えてきた気はするので、いよいよ挑むタイミングが来たんじゃないかな、と。そんな気持ちでおります。はい。もう、面白い作品であることは間違いありません。天才の、代表作なんですから。
『激論版』では、原作の形を守りつつも言葉を大分刈り込んでソリッドなドラマに仕立て直し、イプセン戯曲のポテンシャルを最大限に活かした格闘技みたいな会話劇をお見せできればと思います。一方の『疾走版』では、とにかく俳優の身体を頼りにして大胆に戯曲を再構成し、明滅するイルミネーションのような悪夢のフラッシュバックとして人形の家を、つまり、失われた家庭の幸福、崩れ去った近代の夢を、お見せできればなと思います。片方だけでも、もちろん、両方でも。ご来場心よりお待ちしております。