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ベートーヴェンに共感する、ひたすら作る楽しさ
―音楽ってギター1本でパッと弾いて歌ってパッと録ってどんどん配信していけるけれど、演劇って数年先まで予定が決まっていたりするし、舞台って消え物じゃないですか。映像に残っても全く違うものになってしまう。そういう歯痒さってないんですか? って今日卓卓さんに伺おうと思っていたんですけれど……。でも戯曲は残るんですよね。当たり前のことですけれど、今気づきました。
山本:まさに僕もそこに気づいたんですよね。戯曲は残るし、AIが進化して、翻訳の精度が高まってきているから場所も制限もなく超えられる可能性がさらに増している。たとえばタイ語で書かれている戯曲が日本で普通に上演される未来が、近いうちに来るんじゃないかなって思います。それなら今は作家に力を入れたいとすごく思う、というのもありますね。
曽我部:なるほど。卓卓さん、それは本数を書きたいというようなことでもありますか?
山本:本数を書きたい、はい、そうですね。
曽我部:やっぱり数って大事ですよね。
山本:大事ですね。
曽我部:僕は人から笑われるぐらい曲をたくさん出しちゃう方で、「また出したの!?」って皆言うんですよ。そういう時は「すみません」ってちょっと照れ笑いするんですけれど。でも、数をやっていくうちに学ぶことや、できるようになることが実際あって。恥ずかしいので、あまり人には言わないようにしているんですけれど。
山本:めちゃめちゃ伝わっていると思いますよ、言わなくても(笑)。

―卓卓さんも量産するのは苦ではないタイプですか?
山本:ちょっと話が逸れちゃうんですけど、僕、ベートーヴェンがすごく好きで。彼が必死に曲を書いていた感じに、すごく助けられるんですよね。彼は作曲だけれど、苦悩を経て歓喜へ至るっていう彼の大きなテーマは、未来の人へのメッセージでもあるような気がするんです。歓喜に至るまでの困難なプロセスに立ち向かうことが、大きなものを与えてくれる。彼の場合はそれを重く超えていくけど、僕は軽やかに乗り越えたい。でも、彼のように重いのもいいなって思う。
曽我部:ベートーヴェンは、作る時の苦しみはあったんですかね。産みの苦しみというか。
山本:うーん……。苦しかったけど、めちゃくちゃ楽しかったとも思うんですよね。
曽我部:なるほど。
山本:毎日作りたい感じですもん、あの人。
曽我部:卓卓さんもそういうところあります?
山本:ちょっとあります。ずっと書いていたい気持ちはありますね。