山本卓卓の新作劇『愛と正義』益山貴司演出で上演決定。一色洋平、山口乃々華ら出演

音楽劇『愛と正義』が神奈川・横浜のKAAT神奈川芸術劇場にて2025年2月21日（金）から3月2日（日）まで上演される。

KAAT神奈川芸術劇場がプロデュースする同作は、『バナナの花は食べられる』（2021年初演）で岸田國士戯曲賞を受賞した劇作家であり劇団・範宙遊泳主宰の山本卓卓による新作戯曲。人を助けることを生業とするヒーローたちの世界が舞台の音楽劇で、人間の関係のあり方が抽象化された物語が語り（歌）と対話で展開する。山本はこの物語を三部作として構成する予定で、同作は第二部にあたる。

演出は山本と初のタッグを組む益山貴司が手掛ける。音楽は、益山作品にも多数参加し、舞台のほか映像作品、CMなどにも楽曲提供をしているイガキアキコが担当。振付はダンスカンパニー・BATIKを主宰する黒田育世が務める。

出演者は主人公のヒノムラコチ役を一色洋平、その妻ソチ役を山口乃々華が演じる。またコチの相棒のカレ役で福原冠、カレのパートナーであるカノ役で入手杏奈、コチのいとこで後にコチと敵対するウチ／アク役で坂口涼太郎が出演する。

上演発表にあたって山本卓卓と益山貴司からコメントが寄せられている。

山本卓卓コメント
この世界で起きているさまざまなこと、そして私の身の回りで起きているさまざまなこと、難解でありながらも活き活きとしたもの、単純でありながら邪悪であるもの、投げ出したくなるねじれた諸問題、解明したい謎の苦しみの根幹、シンプルに幸福を感じる瞬間、けれど幸福であってはならないと己の中に巣食う悪魔、人への疑い、人からの疑い、経年、嘲笑、若い人々の台頭、ないがしろにされる老い、ひるがえってなにもかも美しいと思える心、しかしさらにそれをひるがえし美しくなくしてしまう醜い心、これらすべてが無であると、空であるという認識、生きることに意味などないという拡大解釈、生きることに意味を見出しすぎる誇大妄想、いろいろあれど、この文章を読んでいる人はみな生きている。生きていなければ出会えない。そういう演劇です。

益山貴司コメント
「愛と正義」について考えてみると、胸がかき乱される。
なぜなら、そう短くない自分自身の人生を振り返ったとき、これまで本物の「愛と正義」を持てたのか、それほどまでに切実な感情を抱けたのか、時には巨大な暴力を巻き起こすこの二つの絶対感情（という言葉があるかどうか知らないが）に身を焦がしたことはあるのか、と。山本卓卓氏は、もうタイトルだけで私の心を抉る。稽古に入れば、そのセリフと物語にキャストとスタッフも抉られ、本番では観客の心を抉るのだろう。ああ、なんともワクワクするようなこの戦慄……!そんな山本戯曲に、「愛嬌と誠実」で立ち向かっていきたいと思います。

なお、同作は『某(なにがし)』をタイトルとして多様なプログラムが実施されてきたKAAT神奈川芸術劇場の2024年度メインシーズンの締めくくり作品として上演される。