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昭和ミステリードラマ『嘘解きレトリック』は「心」と「味覚」を描く

2024.12.16

#MOVIE

『嘘解きレトリック』©フジテレビ
『嘘解きレトリック』©フジテレビ

10月からはじまったドラマ『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)がついに終わってしまう。

昭和初期の九十九夜町(つくもやちょう)を舞台に、鋭い観察眼を持つ貧乏探偵・祝左右馬(鈴鹿央士)と人の嘘が聞き分けられる能力を持つ浦部鹿乃子(松本穂香)が難事件を解決していくドラマは、ミステリーとして毎話、楽しめただけでなく、その愛すべき登場人物たちに愛着を持たせるにも十分な2ヶ月半であった。

『別冊花とゆめ』(白泉社)にて連載されていた都戸利津(みやこりつ)による同名コミックを原作に『ガリレオ』シリーズの西谷弘監督と鈴木吉弘プロデューサーがタッグを組んだ本作。

フジテレビの看板ドラマ枠である月9ドラマの脚本を武石栞、村田こけし、大口幸子と複数人で手掛けたのも挑戦的だが、昭和を舞台にした歴史ドラマを月9で描いたのも、間違いなく挑戦と言えよう。

演出は西谷の他に、永山耕三、鈴木雅之、河毛俊作らフジテレビドラマを熟知するベテラン演出家陣が担当し生み出した新たな昭和ミステリードラマを、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター・藤原奈緒がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

味覚を通して伝わる「幸せ」が視聴者の心も満たすドラマ

出会った頃の浦部鹿乃子(松本穂香)と祝左右馬(鈴鹿央士)©フジテレビ
出会った頃の浦部鹿乃子(松本穂香)と祝左右馬(鈴鹿央士)©フジテレビ

「嘘が分かる君に見えないものがあるんなら、嘘が分からない僕にはそれが見えるんじゃない? だから一緒にいればいいんだよ」

『嘘解きレトリック』第6話で、左右馬(鈴鹿央士)は鹿乃子(松本穂香)にそう言った。それを聞いて鹿乃子は、「自分のことは信じられなくても、先生のことなら信じられる。ようやく私は1人じゃないってどういうことなのか分かった」と思う。彼女がよく心の中に抱えている、左右馬が言うところの「ぐるぐる」がフッと軽くなる。思いを共有して、分け合うこと。誰かと何かを分け合うことができる幸せが『嘘解きレトリック』には詰まっている。

お食事処「くら田」で食事する鹿乃子と左右馬©フジテレビ
お食事処「くら田」で食事する鹿乃子と左右馬©フジテレビ

例えば旬のものを取り入れたお食事処「くら田」の美味しそうなご飯を常連客の皆と食べること。左右馬と鹿乃子が喜びの舞を踊りながら報酬のカステラを食べること。町の人々が、それぞれに心を許した人と食べるアツアツの「つくも焼き」。鹿乃子が初めてできた友達・千代(片山友希)と並んで食べる甘味処のみつ豆の、華やいだ感じ。

気づいたら食べ物の話ばかりになってしまった。でも本当に、町全体が1人の孤独な少女・浦部鹿乃子を優しく包み込む奇跡を描いたかのような『嘘解きレトリック』は、人と人とのつながりの温かさを、食べ物を通して味わい深く描く。そしてその、味覚を通して伝わる「幸せ」は、私たち視聴者の心をも存分に満たすのである。

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