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他の人と一緒に成立させる、演劇の集団創作ならではの楽しさ
ーその頃の池田さんの様子については、岩井さんが『TV Bros.』の連載の中で、「モースト・グイグイ来ている男、池田亮のこと」というタイトルで書かれていますね。
池田:それに書いてある通り、「なんで来たの?」って岩井さんに言われたから、「いや、ハイバイドアっていうものを観に来たんですけれど、登場しなかった。どこにあるんですか?」って訊いたら、「今日は出てこなかったけど、彫刻を作っているなら、ハイバイドアを模型で作って売りたいんだけど協力してくれる?」って言われて、それで模型を作ったりしていて。そのうち、三重県で『ミエ・ユース 演劇ラボ』っていう25歳以下の人たちで擬似劇団を作る企画があって、講師が岩井さんだったから参加したのが2015年です。それがきっかけで、もう一回ちゃんと演劇をやってみようと思って。そんな時に、岩井さんから演出助手の仕事をやらないか? とも誘われまして。ゆうめいを立ち上げたのは2015年ですね。
ー数奇な道のりですねえ……。
池田:自分でもそう思います。でも、演劇は彫刻の延長みたいな気持ちもありますね。彫刻は1人で作っている時が多いですけれど、演劇は皆で彫刻を作っているような意識があるんです。

ーひとつの彫刻を複数の人で作る感覚ですか?
池田:そうですね。彫り方も違えばどういう形を切り出すかも違うんだけど、感覚としては似ています。彫刻を1人で作っていると、16時間ぐらいずっと集中してやる。すごい孤独を感じるし、孤独を感じるべきだと思うんです。ただ、それこそ駅伝じゃないですけれど、他の人と一緒に何かを成立させるものもやってみたいなって思うようになって。そんな時に、他の人の力で作品がどんどん変わってゆくという、演劇の集団創作ならではの楽しさに気づいたんです。