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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

Hedigan’sメンバー全員で語り合う、誰かと一緒に生きるということ

2024.12.12

Hedigan’s『Chance』

#PR #MUSIC

このインタビュー記事を読んで、誰かがバンドを始めてくれたらいいなと思う。

仲間たちと楽しい時間を過ごして、好きな話題で戯れ合って、苦手なことは補い合って、忘れたくない瞬間を残すように曲を作る。「バンドって、めちゃくちゃ眩しいよな」と、羨ましくも思う。

日々バンドをインタビューしていても実感するが、当然、バンド活動とは「キラキラ」ばかりではない。その中で、なぜHedigan’sはここまで風通しがよく、メンバー全員にとって居心地のいいバンドで在れるのか。活動開始から約1年半、1stアルバム『Chance』を完成させたタイミングで、改めて5人にそんなテーマを聞きたくなった。

5人が答えてくれたことは、音楽に限らず、会社・学校など人が集まるコミュニティにおいて理想的な在り方とは何か、人と生きる上で大切なこととは何かという話にまで広がっていった。それらは、ロックバンドだからこそ投げかけられる世の中に対する提言であり、個人的に手渡してくれるような小さなきっかけでもある。自分が何を有意義と思うのかに向き合って、その瞬間に気づける自分であること――私にとってHedigan’sの音楽とインタビューの言葉は、そんなシンプルなことに立ち返らせてくれた。

YONCEがなぜHedigan’sをきっかけにステージへ帰ってきて、ここで歌い続けるのか――前回のインタビューでも訊いたことではあるが、「こういう音楽ジャンルをやりたかったから」というよりも、「この5人で音を鳴らしたいから」「この人たちと過ごしたいから」というシンプルな理由であることが、今回のインタビューからより深く伝わると思う。

「わざわざ」から生まれるもの

―『Chance』は本当に素晴らしいアルバムで、そろそろ「年間ベストアルバム」とかが話題になる時期だと思うんですけど、絶対に入れたい一枚だと思いました。みなさんとしても手応えは大きいですか?

YONCE(Vo,Gt):そうですね、ずっと「これはすげえ、これはすげえ」って言いながら作ってましたね。

―Hedigan’sを約1年半やってきて、Hedigan’sの音楽とはどういうものであるか。それぞれ他のバンドでの活動もある中で、Hedigan’sというバンドの特異性をどのように感じているのか。お一人ずつ、今考えていることを聞かせてもらえますか。

将治(Gt):Hedigan’sは、音楽的にも、ライブも、何でもありなバンドだなって。今回のレコーディングで具体的なきっかけのひとつになったのはリード曲の“再生”なんですけど、これは1st EP『2000JPY』で試していた路線や、そこで示したHedigan’sのスタイルとはまた違うというか。自分が曲の原型を持ち込んだんですけど、すごくポップで、日本的な曲で、歌モノでもあるし、これをHedigan’sで演奏してYONCEが歌ったらどうなるのかが最初はわからなくて。こういう曲もできるし、一方でブルースとかロックンロールの激しい部分もできるし、やっぱり何でもありなんだなと思えました。好きなようにやるっていう、そういう感じです。

―何か特定の音楽ジャンルがやりたくてHedigan’sが始まったわけでもなくて。ただこの5人で音を鳴らすことが大事であるという。

将治:そうですね、それしかないかもしれない。Hedigan’sでは、狙いみたいなものをあまり考えなくてもいいんだなって。バンドの関係性やスタイルには色々あると思いますけど、Hedigan’sみたいに、友達で居心地のいい関係性でやるというのもひとつのバンドのスタイルだと思うし、それで続けていけたら一番理想的だと思う。30歳を超えて、こういうバンドが組めると思ってなかったくらい。無理して楽しもうとしてもきつくなるけど、本当にそういうこともなく、5人、エンジニアのテリー、スタッフのみなさん含め、居心地がいいし、気持ちよくやらせてもらってます。まだ結成して1年くらいしか経ってないんだけど、ホームですね。ずっと続けていきたいなと思うバンドです。

―YONCEさんはどうですか? Hedigan’sというバンドは今、YONCEさんにとってどんな居場所になっていますか。

YONCE:将治が言う通り、やはり居心地がいいっていう。なんて言うんでしょう……どんどん解放できている、どんどん解放していっている、という印象があります。バンドの関係性も、エンジニアのテリーや、もっと言ってしまえばマネジメントやレーベルとの関わり方も、だんだん砕けた感じになっていて。まあ締めるところは締めてもらうんですけど。一応ちゃんとビジネスでもあると思うし、俺らがその辺、ちょっと感覚として希薄なだけで、やらねばならないところもいっぱいあると思うので。

ただそれがあった上でも、砕けた形で付き合ってこられているし、現時点で全体的な調和の形みたいなものがあって、それがすごく居心地よくて。だから色々気にせず楽しめてます。僕は今の状況にすごく満足しているし、「もっといいものを」「もっと楽しくなるはずだ」みたいなことだけを気にしていればいいのは、やっぱりとても幸せなことだなと、そう思いながらこの1年を過ごしていましたね。

―たとえば「売れる」だとか、そういう世の中の固定観念的な成功に向かうのではなく、「どうすればこの5人がもっと楽しめるか」「どうすれば自分たちがもっと楽しめる音楽を作れるか」といったところに集中できていると。

YONCE:そこに尽きますね。「楽しいね」とか「こんなくだらない話をしたね」みたいな時間を閉じ込めていく作業をずっとしてるから。曲自体の思惑とか狙いがまったくないかと言ったら、やっぱりそこはみんなちょっとしたスケベ心を自分のパートとかアレンジで出すんだけど、それと同じくらい、過ごした時間とか、どこへ行ったとか、何をしたとか、そういう思い出が音楽と一緒に乗っかってる感じがあるから、それって健康的なことだよなと思って。だから、Hedigan’sの音楽は「健康な音楽」なのかもしれないですね。

―私が年間ベストに入れたいくらいよかったと感じたのも、まさにそこで。5人が一緒に過ごした時間、空気、気持ちの抑揚とかが記録されている音源だなと思ったんです。音楽に正解はないけど、それはバンドの音源としてひとつの理想系ではあるよなと。

YONCE:そう、寂しくない作品ですよね。わざわざ集まって、わざわざ意見交換して、わざわざ頭抱えて、っていうことを全員でやってるから。その中には、笑いとかしょうもない話もふんだんに散りばめられていて。こういうことは、やっぱり人とじゃないとできない。

Hedigan’s(ヘディガンズ)
SuchmosのYONCEこと河西”YONCE”洋介擁するニューバンド”Hedigan’s”(ヘディガンズ)。メンバーは、河西”YONCE”洋介、栗田将治、栗田祐輔、本村拓磨、大内岳の5人組。2023年にF.C.L.S.より、1st Digital Single『LOVE (XL)』をリリースし本格始動。2024年2月に1st EP『2000JPY』、11月に1stアルバム『Chance』をリリース。soul-friendly-music!

相手が鏡になることで自分に気づける「つながり」

―祐輔さんはどうですか?

祐輔(Key):自分はHedigan’sがどういうバンドなのかとか、未だによくわかってなくて。あんまり意識もしたくない。自分たちが楽しく続けていくことが目標で、どうなりたいとかもないというか。このアルバムが人にどういう影響を与えるのか、もしくは与えないのかとかも、よくわかってないところがあります。自分にとっては、自分の思った通りにならない領域の方が面白い。バンドだから1人で作ってるわけじゃなくて、それぞれの思惑が混じり合って思いもよらないものになることが面白いと思ってるから、あえてあまり深く考えてないかもしれないです。

―それは、将治さんとやってるGliderでもそういうスタンスですか? それともHedigan’sでは特に?

祐輔:Hedigan’sでは特に、ですね。Gliderは将治との趣向が似てるところもあるし、コンセプチュアルな作品作りをしていたりもするので、「バンド」というよりも「プロジェクト」っぽいというか、「この作品を作るために集まって作業をする」みたいな目的意識があることが多くて。Hedigan’sはもうちょっとラフにみんなで集まって「面白いことができたらいいね」みたいな。スタイルの違いはあれど、根底にあるのは「楽しいことがやりたい」っていうだけなので、一緒といえば一緒なんですけど。



―何かの目的に向かってやることを「プロジェクト」と表現してくれたのが面白いなと思って。Hedigan’sはやっぱり「バンド」として、5人でいい時間を過ごし続けることを一番大事にしているということですよね。本村さんはどうですか?

本村:対外的な部分を3人が話してくれたので、せっかくだからパーソナルな、一個人の視点でいうと、『Chance』は自分の考えていることがよくわかる作品になったなと思っていて。自分で自分のことを考えるよりも、相手が鏡になることで自分に気づくことってあると思うんですけど。人と会話してる流れで、無意識に言葉を発したりしてしまって、あとから「俺ってこういうとき、こういうふうに考えるんだ」と気づいたり。今回はそれが作品としてできたなと思います。それくらい制作の中で、実際の言葉にせよ、言葉にしてない部分にせよ、コミュニケーションというものがものすごくできた作品なんだなと思いました。

アルバムを聴き返して、改めて自分の解像度も高まったし、それくらい心を全開にしてやったんだなっていうふうに思いましたね。そういう意味で、「つながり」みたいなものを濃ゆく感じる作品だなと思いました。「人と人が一緒にいるって、どういうことなんだろう」みたいなことが、自分の中で解像度が上がった作品でした。

―「つながり」って簡単に使われる場面もあるけど、人とのコミュニケーションを通して自分の内面と向き合えることを「つながり」と呼ぶのは、とても素敵だなと思います。本村さんはゆうらん船の他、これまでもいろんなバンドで演奏されていますけど、Hedigan’sで感じられる「つながり」みたいなものって、どういうところからくるものなのだと思いますか。

本村:今やってる他のバンドとか過去にやってたバンドが、そうじゃなかったとも全然思わないんですけど、これは多分年齢的なタイミングの話もあって。30を過ぎて、ある程度いろんな経験をして、過去の学びを活かしながら、今やっていることをリアルタイムで観察できている感じがあります。レコーディングしてるときとか、昔は無我夢中でやってたけど、今はどこか別の場所から俯瞰して「こういう瞬間は特別だから、真面目にやれよ!」と腕組んで見てる自分もいる、みたいなところがあって(笑)。

祐輔:そんな自分、いたんだ(笑)。

本村:いる、スタジオの隅っこくらいに(笑)。タイミングや巡り合わせみたいなものも、やっぱりすごく強く感じるし。自分も、他のメンバーも、タイミングや環境、精神状態、健康状態とか、いろんなものがぴったりハマってたまたま集まることができているから。もうとにかくありがたいという気持ちに尽きますね。

『フジロック』も、お風呂も。「大事」に優劣はない

―そういった想いからも「この瞬間を大事にしたい」という気持ちが強くあって、まさに瞬間を残すような音源ができている、ということなのだなと思いました。お待たせしました、岳さんはどうですか? それこそ岳さんは7つバンドをやってる中で、Hedigan’sに何を感じているのかを聞いてみたいです。

大内(Dr):Hedigan’sに限らず、特にロックをやるようなバンドは、自分の弾いた音とかライブの感覚で自分の音楽がどんなものかを知ると思うんですけど、今年『Chance』を作りながらライブをたくさんやった経験は、このバンドの解像度をものすごく上げてくれて。もちろん『2000JPY』を作ってるときから、このバンドはかなり最高な状態でやっていたと思っていたんですけど、なんて言ったらいいんだろうな……『2000JPY』は、各々のアイデアを集結させて、できあがったものは「具の入ってないスープ」みたいな。ひとつの音楽にみんなが栄養を注入して、スッとした飲み物ができてる感じ。

YONCE:素の出汁、みたいなね。

大内:そうそう。それに対して『Chance』は具入りの感じがするんですよね。「あ、もっちゃん(本村)の臓器が入ってるじゃん」「将治の腕が入ってるぞ」みたいな(笑)。人間の身体を感じる。これは、みんなでライブを乗り越えたからだと思う。自分らで考えた曲を人前で弾く経験がなかったら生まれなかったニュアンスがあるし、それはロックバンドに必要不可欠なものだと思うから、真っ先に思うことは「とにかくいっぱい演奏させてくれてありがとう」で。『Chance』ではとにかく素晴らしい曲がいっぱいできて、それこそ何を狙うでもなく「無邪気に音楽を作ったらこの曲ができたよ」みたいな10曲になっていると思います。

あと思うのは、大事なものが増えたし、それらにレベルの差がない、というか。たとえば『FUJI ROCK FESTIVAL』に立った時間は、人からしたら最大の喜びかもしれないけど、STUDIO DIGに向かってる途中のサービスエリアでちょっとしゃべったことやそのとき空気とか、苦戦したミックスが全部終わったあとにみんなでお風呂に入って死んだように眠りについた時間とか、どっちの方が重要とかもない。もっとどうでもいいような日のことも思い出すんですよ。「この日はこうだからよかった」っていうことでもなくて。それら全部が順番に組み合わさってないと、この作品はできてないなと思います。

―いい空気、いい時間、すべてを封じ込めたのがこの作品で。しかもそれを「こうだから、いい日」みたいに頭で考えてるわけではなく、ただただ心で感じたことに自分たち自身が気づけているという。


大内:このバンドをどう思っているかにもつながるんですけど、「いろんなことが大事」ってどういうことかなと思うと、「今過ごしているこの時間がすごく有意義なものである」って、自分が信じたいということだと思って。その願いをHedigan’sに込めているんじゃないかなと。どのバンドに関してもそれは一緒なんだけど、特にHedigan’sではそう。この5人で「理想的な暮らしをみんなで叶えようぜ」っていう共通認識を持っていることを再確認できたというか。

あとひとつ、大きな変化があって。ライブをやって、目の前にいる「お客さん」と呼ばれる人たちのことを「人間なんじゃないか」と思えるようになってきた。目の前に自分みたいな生き物がいてくれていて、共有できている魂がいっぱいあるという。一応僕らのキャッチコピーが「soul-friendly-music」なんですけど、聴いてくれているお客さんの魂を感じる経験が重なって、ライブに対するこだわりのレベルがまた上がりそうだなと思います。

バンド=得手不得手を補い合う関係

―5人で過ごす時間をパッケージして、みんなの臓器や腕も見えるような作品を作る上で、具体的に制作や録音の仕方について前作から変えたところはありますか? わかりやすいところで言えば、たとえば前作収録の“敗北の作法”はレコーディング後に本村さんがエディットを施してコラージュ的な音源として完成していたけれど、今作の10曲はすべてバンドサウンドとして仕上がっていますよね。

https://open.spotify.com/intl-ja/album/2rq5oAmQDU2qoqyd9Ljntp?si=pnHwZun1R3yCo_84YhayIw

本村:『2000JPY』を振り返って聴いて、フィジカル感、生演奏感がほしいなと。実際『2000JPY』はせーので合奏することがそんなになかった作品だったから、アルバムを作るなら、5人が横並びな感じの作品にしたいなとは思っていましたね。

大内:でも録ったまま、勢いのまま、という制作でもなくて。むしろ前より強烈に破壊してイジってるところもあるんですけど。

本村:生っぽく聴こえる曲も実はそんなことなかったり、ということがありますね。

大内:でも結果、生より生っぽい感じになった。

本村:不思議だよね。「生を拡張するためのポストプロダクション」みたいなことをやった気がする。

―今作も、エンジニアのテリーさんの存在が大きい?

YONCE:そこを完全にあてにした制作の仕方だったと思います。

将治:今回の制作で、全員、各曲に対して大正解を求めてるわけじゃないことがわかった。「こうすれば曲が洗練されていくし、よくなっていくよね」っていう方向だけを目指すわけじゃないというか。ロックの長い歴史の中で誰もがやってることだと思うけど、場合によってはミスってるテイクを採用したり。「それがYONCEらしいよね、本村くんらしいよね、岳ちゃんらしいよね」っていうところに気づいて大事にしていった感じです。

大内:お互いのいいところに気づく力が上がったような気がする。

YONCE:本人は難しい顔をしてるけど、「むしろそれいいよ」みたいなことがいっぱいあったね。「まあみんなが言うんだったらそうなんだろうな」みたいな感覚が、今回はかなりあった。

祐輔:お互いの感性の信頼度が高いので、自分では「今のはダメだったかも」みたいなテイクでも、誰かが「いい」って言ったら簡単に流されるというか。「君がそう言うなら、いいんだと思う」というふうに思えるバンドです。

―最高ですね。音楽に限らず、人生や人との関わりにおいて大事なことが、Hedigan’sに詰まってる気がする。

大内:バンドはいいぞ〜!

―「バンドはいいぞ」、それがHedigan’sの一番のメッセージかも。

大内:今までで一番嬉しかったライブの感想が、ベーシストの井上真也が言ってくれた「今日でギター50本売れたな」。何か望むなら、深刻な気持ちになるっていうよりは、音楽始めたくなるようなものにしたいですね。

本村:この作品を聴いたり、Hedigan’sの活動を見てくれたりして、バンドを始める人がいたらいいなと思います。まず人がいて、それぞれ得意なことやできることが違う中で「その人たちで何をするか」みたいな考えのコミュニティがあったらいいなと、自分は思っていて。それはバンドに限らず、仕事でも友達でも。各々を尊重し合って、できることをする、できないことはさせない、もしくは手伝いながらやってあげたり。そもそも「バンド」の語源を、前にYONCEから聞いたんですけど「結びつき」というか。

YONCE:得手不得手を補い合う関係、みたいな。それが「バンド」。

本村:そういう意味も込めて、音楽じゃなくてもいいから、みんな「バンド」を始めてくれたらいいなと思います。

YONCE:バンドって、円満、潤滑であるとか、風通しがいいとか、開かれているとか、やっぱりそういう状態じゃないと作るものに絶対出る。Hedigan’sは別に心がけてそうしてるわけでもなくて、それが無理なく、普通のことのように叶っているから、これはすごいことだなと我ながら思っていて。音楽グループという意味での「バンド」以外でも、それをどんどん当てはめていったら世の中にとっていいのでは、ということは真剣に思います。

本村:もうおじさんのアドバイスみたいになるんですけど(笑)。精神状態とか、家庭や職場の環境とかが理由で、なかなかそういうつながりを作れない人とかもたくさんいると思うから、難しいことだとは思うんです。ただ、1人になるとロクなことにならないなというのは、いろんなシチュエーションで思うことなので。だんだん時代が変わってきて、「つながる」という言葉の意味も変わってきてる気がして。SNSで「◯◯さんとつながったわ」みたいな言葉に、本村はちっちゃい違和感を覚えるんです。「結びつき」「つながり」というものに対して何かちょっとでも意識が変わったらいいなとも思うし、別にそんなこと何も考えないで聴いてくれてもいいし、というふうに思いますね。

「簡単に生きちゃダメだ、って」

―作詞のクレジットは「Hedigan’s」になっているけれど、基本はYONCEさんが書いてますか

YONCE:そうですね。“ふしぎ”と“再生”は俺が書いた詞だけの状態であって、将治に「これに曲つけてみてくれるかしら」って言ったらすぐ作ってくれて。“Mission Sofa feat. 井上真也”は、詞を祐輔に渡して。今回はそういう感じの取り組みもあって面白かったです。

―今話してくれたことは、作品の中で歌っていることにもつながると思うんですよね。行き過ぎた文明の中で人間は何を大事にすべきか、「こういうことを見つめ直してもいいんじゃない?」といった提案、とか。

YONCE:「こうやって過ごす姿が理想的だ」とか。自分や自分の周りの人たちは運よくうまく過ごせてるけど、それが叶わないシチュエーションに目を向けることが、僕は最近多くて。そういうことを歌にしていたら曲たちになっていた、という感じでしょうね。生き方にうるさいんでね。

大内:生き方ソムリエだ(笑)。

YONCE:“マンション”なんて、説教くさいおっさんのルンバですよね。「地球の管理人」「社会生活の管理人」みたいな目線の歌なんですけど、偉そうですよね。

https://open.spotify.com/intl-ja/track/0OCnSvhG6eJvSUI5YGP1rD?si=412b94e063a04a1c

―いや、“マンション”はすべてがパンチラインですよ。

祐輔:僕はYONCEの歌詞がすごく好きで。未来に向けて明るいメッセージを歌っているわけではないと思うんですけど、“マンション”とか他の歌詞でも、勇気づけられる部分がたくさんあるし、暗くて棘のある歌詞だけじゃなくて優しいところがたくさんあるなと思います。

YONCE:スタンスとしてはポジティブなつもりで書いてるんだよね。過程に大事なことがあるから、いきなり明るい部分を言ってしまっても意味がないというか。要は「川魚の肝まで食えよ」みたいな話というかね。美味しい身だけ食ってちゃダメだよと。人間以外も同じく苦いもんを食ってるから、そこは同列でみんなやるんだよ、っていう話ですよね。簡単にやろうとするな、簡単に生きちゃダメだ、って。……だから説教くさいおっさんのルンバなんですよ。「今から説教するぞ!」っていうことを音楽でやってる(笑)。

https://www.youtube.com/watch?v=M2ojedjGLRc

―それはロックバンドとしてすごく大事なスタンスだと思うし、いろんなことを経験してきて、農作業を通して人間や自然、地球を見ているYONCEさんからしか出てこないメッセージも、たくさん伝えてくれているなと思います。しかもここまで話してくれたようにHedigan’sの音や5人で過ごした時間があって、そこに導かれるように自然と歌えた言葉だと思うから、メッセージがひとり歩きしてるわけではなく、まったく説教くさい音楽ではない。そういった表現の仕方もこのアルバムを素晴らしいものにしている所以だと思います。そんなアルバムに『Chance』というタイトルをつけた理由は?

大内:自然と降りてきたワードが、いろんなものにハマって。

将治:昔からの友達で、いい大人になってバンド組んで、音楽作って、ツアーして……こんなの「チャンス」以外何物でもないよね。

本村:「サクセス」とか、そっちではなくね。

YONCE:「生きてるだけで丸儲け」的な。

大内:「チャンス」って、「成功への足がかり」「掴まなきゃいけないもの」みたいな意味でも言われるけど、どちらかというと「一期一会」の「期」に近いというか。偶然に生じた一瞬が「チャンス」だと思う。

祐輔:歌詞を読み込んでいくと、風刺的な皮肉っぽい意味での「チャンス」もあるなと思って。“O’share”でいう<淘汰のレースの最後の一匹の席>を争ってる人たちにとっての「チャンス」と、俺たちにとっての「チャンス」は違うから。

―「チャンス」とは、誰かを出し抜くことではなく、誰かと一緒に過ごす中で訪れる思いもよらなかった瞬間に気づくことである、といったことが込められているタイトルだと思いました。最後の“ふしぎ”も、Hedigan’sとしては新しい形のポップスで、詞も素晴らしくて。

祐輔:わかります、“ふしぎ”は泣きそうになる。

本村:俺、泣いた。

―これはどういう気持ちの表れなのか、聞いてみたいなと思って。

YONCE:これはサービスエリアでガチで寝ようとしているときに書きましたね。ちょっと打ちひしがれた気持ちだったような気がしますね。僕は友達がけっこう多いんですけど、「友達」という中に、是が非でも会いたい友達から、会うのは年1回でいいなっていう友達とか、いるじゃないですか。全部、大事じゃないわけではなくて。それに応えられる自分じゃないときもあるし、応えられる自分のときもあるし、ということを考えていた気がしますね。

https://open.spotify.com/intl-ja/track/5m3RAoGt9RB77MhNCBju1s?si=e7c49d6bf43742af

―1月から始まるツアーではどんなことを感じさせてくれるのか、非常に楽しみです。ライブでは今、どういうことを大事にしていますか?

本村:ここ1、2ヶ月でセットリストが変わってきて、「ライブの運び方にこういう選択肢もあるんだ」みたいな気づきがあったので、自分でもどんなライブになるのかがまだまだわかってないんだな、っていうことがわかりました。だから、わけわかんなくなりたいです。

YONCE:着実に、演奏とかパフォーマンスのギャグセンは今かなり高い。

―(笑)。Hedigan’sが言う「ギャグセン」とは?

YONCE:よくて笑っちゃう、みたいな。

大内:そう、生じゃないと起こらないこと。

将治:ギャグセンというか、自分らで笑ってるだけ(笑)。

祐輔:今は「こいつら5人と音を出すのが楽しい」というところが一番大きくて。そこに「お客さんとコミュニケーションできて楽しい」とかが加わっていったら、もっと楽しくなるんだろうなと思う。お客さんと「心が通じ合った気がする」という瞬間が増えていったら、この5人で音を出す楽しさみたいなものに加えて何かが生まれてくるんじゃないかなって思います。

本村:いわゆる一個の喜びに収束するようなライブではないというか、みんなが同じ気持ちになって終わるようなライブではないとは思うし、そもそも自分らもライブがどう運ばれていくのかわからないところがあるので。祐輔が言ったようにお客さんとコミュニケーションしたいと思っていて、「コール&レスポンスする」とかそういう話ではなく、お客さんと互いにわかり合おうとする関係性でライブができたらいいなと。ツアーでは特にそういうコミュニケーションができたらいいなと思ってます。

YONCE:音楽そのものの宣伝をしたいですね。「ギターってやばくね?」「バンドってすごくね?」みたいなことをずっとやっていたいですね。

『Hedigan’s “Warehouse Session”』

配信ライブ
YouTube『Hedigan’s “Warehouse Session”』
2024年12月13日(金) 22:00~
https://www.youtube.com/@Hedigans

Hedigan’s『Chance』

2024年11月20日配信リリース

1 地球(仮)
2 マンション
3 その後…
4 グレー
5 再生
6 Mission Sofa feat.井上真也
7 But It Goes On
8 O’share
9 カーテンコール
10 ふしぎ
https://fcls.lnk.to/Chance

CD
2025年1月15日リリース
¥3,950

[DISC 1]
1. 地球(仮)
2. マンション
3. その後…
4. グレー
5. 再生
6. Mission Sofa feat.井上真也
7. But It Goes On
8. O’share
9. カーテンコール
10. ふしぎ

[DISC 2「Live at SPACE SHOWER MUSIC Presents “EPOCHS Music & Art Collective 2023″」]
1. 夏テリー
2. LOVE(XL)
3. サルスベリ
4. 説教くさいおっさんのルンバ
5. 敗北の作法
6. 論理はロンリー

CD予約リンク
https://hedigans.lnk.to/Chance

『Hedigan’s “TOUR Chance”2025』

2025年1月25日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
2025年2月1日(土)福岡県 BEAT STATION
2025年2月9日(日)埼玉県 HEAVEN’S ROCK Kumagaya VJ-1
2025年2月11日(火・祝)宮城県 darwin
2025年2月15日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2025年2月16日(日)大阪府 BIGCAT
2025年2月23日(日・祝)北海道 cube garden
2025年3月2日(日)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)

チケット一般発売中
https://lit.link/hedigans

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