メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

オウガ主催の野外イベント『””DELAY 2024″”』レポ。坂本慎太郎、ジム・オルークがゲスト出演

2024.6.18

#MUSIC

OGRE YOU ASSHOLE(オウガユーアスホール)による野外イベント『””DELAY 2024″”』が5月11日(土)に長野・八ヶ岳自然文化園 コンサート広場にて行われた。

これまでも国内外のゲストを迎えて開催されてきた自主企画『””DELAY 2024″”』。今回はバンドの地元・長野にて坂本慎太郎、ジム・オルークを迎えての開催となった。

正午から日暮れのマジックアワーまで、自然と音楽が溶け合ったひと時をライターの松永良平がレポート。

会場は『悪は存在しない』の舞台でもある八ヶ岳

会場となる八ヶ岳自然文化園のコンサート広場に足を踏み入れて、一瞬だけたじろいだ。ステージと、その前方に小さめのフロア、さらにそのスペースを取り囲んで半円を描きながら配置された石段の座席。想像していたよりずっとこじんまりしている。ただ、「コンサート広場」という、なんとなく朗らかな名称には不自然さがない。そういう慎ましやかなかわいさがある。エンジニアたちが陣取るテントとステージまでの距離も近い。

今日はここに1300人が入る(チケットはソールドアウト)と聞いた。え? そんなに人が入るの? だが、ステージに近づくにつれて、それは無用な心配だとわかった。席のある場所の後方に広がる木立にも座れるスペースはあるし、前日からの晴天に恵まれたこともあって、ほどよく刈り込まれた草むらに座り込んでライブを楽しむこともできそうだ。この場所のキャパシティは、人をぎゅうぎゅうに詰め込むのではなく、思い思いの場所で演奏と音響を楽しめるように設定されているのだとわかった。

八ヶ岳自然文化園がある長野県諏訪郡原村や鉄道の富士見駅周辺は、濱口竜介監督の最新作『悪は存在しない』の舞台となった土地でもある。もともと石橋英子のライブで使用する映像を濱口監督が依頼されたところから、ひとつの独立したストーリーを持つ映画にまで発展した。映画で印象的に登場する野生の鹿を、今日来るときは見かけなかったが、これほどの静かで豊かな自然に恵まれているのなら、すぐ近くで鹿が音楽を聴いているとしても不思議とは感じなかった。

そして、今日のイベント『””DELAY 2024″”』を主宰するOGRE YOU ASSHOLEにとっても、このあたりは彼らの生活拠点であり、ある意味ホームゲームであると言える。これまでも彼らは「DELAY」を冠したイベントを何度かおこなってきたが、物理的な意味で身近な場所を選択しての開催は、特別な機会だろう。その記念すべきイベントに、ジム・オルーク、坂本慎太郎が共演者として登場することになった。ジム・オルークは石橋とともに『悪は存在しない』のサウンドトラックをはじめ、多くの活動を行っているが、今日はソロの電子音セットでの出演。坂本慎太郎がソロでのライブを開始してからオウガと対バン的な形でステージに立つのは今回が初めてだ。

ジム・オルークが奏でる電子音の優しさと緊張感

まだ太陽も高い時間帯だったが、ほぼオンタイムでジム・オルークが登場。即興的にも聴こえる電子音の連なりだが、かつてのソロアルバム『The Visitor』(2009年)のように綿密に構成されているようにも感じられる。曲から曲へというような継ぎ目を持たせない。その音は、揺れる木立や鳥の声、ゆっくりと集まってくる人々の動きやざわめきと溶け合って聴こえた。電子的に発生するその音は自然界には存在しないし、本来なら対立し合ってもおかしくないのに。

ジム・オルーク

ジム・オルークのアプローチは、モート・ガーソンらが提唱した植物に向けた音楽の優しさとも違っていて、時にこわばったり、緊張もする。それは、この場を借りて生きる侵入者としての人間が取るべき態度と率直な実感を反映しているようにも思えた。

ジム・オルーク

ジム・オルーク

坂本慎太郎の音楽が、ゆっくりと空気に溶け込む

続く坂本慎太郎は、夕暮れどきというにはまだ早い時間帯。フェスに出たとしても昼間に登場する機会は稀だが、ぼくは去年、姫路でゑでぃまぁこん主催の『ぎゃふん!at シロトピア記念公園』(2023年11月18日)でも、明るい時間帯の坂本慎太郎は体験済み。それでも、見る側にとってはこの明るさと近さは新鮮さがあったようだ。その意識が坂本自身にもあったのか、ライブのオープニングが“ツバメの季節に”だった。これまでライブのアンコールなどで演奏されることが多かったメロウでグルーヴィーな曲だが、この日は少しイントロを長めにした新しいアレンジで、音楽が空気に溶け込むのを待っているような、その淡々とした導入がとても印象に残った。

坂本慎太郎

“幽霊の気分で”“君はそう決めた”“仮面をはずさないで”“物語のように”など、1時間のステージでしっかりとやるべき曲を演奏し、最後は“ディスコって”でエンディング。徐々に照明が存在感を増してゆくなか、想像上のミラーボールが木立を照らしていた。

坂本慎太郎
坂本慎太郎

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS