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シャッポにインタビュー 細野晴臣に出会わされ結成し、歪で面白い音楽を完成させるまで

2025.4.23

シャッポ『a one & a two』

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小説家・柚木麻子が朗読として参加。その制作過程とは?

―“めし”がシャッポとして最初に作った曲という話がありましたが、アルバムでは朗読が入っていて、小説家の柚木麻子さんの文章がフィーチャーされていますね。

福原:もともと成瀬巳喜男の『めし』(※)の台所が見えるシーンを繰り返して、そこに曲をつけたのが始まりです。リズムが変わるところは夕暮れどきにご飯を待ち侘びた子どもたちが公園から戻ってくる感じを出したいと思ったり。

もともと5年前くらいに作っていて、当時はベースラインとかも基本僕が書いてたんですけど、5年経ってみんなにもう一回自由にやってもらいました。

※成瀬巳喜男監督、原節子主演による1951年の映画。朝日新聞で連載していた林芙美子の原作を井手俊郎と田中澄江が共同で脚本化した作品。

ー映像的なイメージから曲になることが多いんですか?

福原:そうですね。もともと学生映画の劇伴から曲を作り始めたし、「あのときの気持ちはこんな感じだったかなあ」みたいな、自分の中になんとなくある映像から作り始めることが多いです。

よく「これはブギウギのリズムから作りましたか?」とか「これは細野晴臣&イエロー・マジック・バンドの“ジャパニーズ・ルンバ”のリズムを参照したんですか?」みたいに聞かれることが多くて、僕が研究者っぽい話をしちゃうからそう思われがちなんですけど、作曲はイマジネーションだけでやっていて、後から「ニューオリンズビートっぽいな」って気づいたり、そういう順番なんですよね。

細野:“めし”は初めて録ったときはリモートだったんですよ。ドラムの海老原(颯)くんと僕が同じスタジオに入って、音くんはそのときコロナで地元に帰っていたので、愛媛から電話で「こういうふうに録って」みたいなことを指示してくれて。あのときは3人だけの音で、それも勢いがあって良かったんですけど、今回はよりパワーアップした感じがありますね。

福原:僕は最初アルバムに入れるつもりなかったんですよ。でも悠太くんが「入れたい」ってはっきり言ってきたんです。僕はあの3人で録った5年前のテイクからどうするか思い浮かばなくて、結果的にはマンドリンとスティールギターとバンジョーを自分で弾いたんですけど、当時「無理かも」って言ったら、「なんとかなる」って。

細野:何も考えてないんですよ(笑)。とりあえず入れたいから。

福原:でも実際本当になんとかなって。僕が弦楽器を弾くときは悠太くんが録りをやってくれるんですけど、僕が弾いて、「どっちがいい?」とか言って、悠太くんのディレクションで決めていく感じでやれて、本当にやりたかったんだなって、そのとき思いました(笑)。

ー柚木麻子さんの朗読が入ったのはどういう経緯ですか?

福原:最初は曲に自信がないこともあって、環境音で埋め尽くそうと思ったんです。中華屋さんで鉄鍋の音とか録ってきて、それで埋め尽くそう、みたいな。そんな話をしてる中で、「レシピを朗読したらいんじゃないか?」みたいなアイデアが出てきて、でもただレシピを読むのもなと考えてたときに、柚木さんのことが浮かんで。

僕、柚木さんの家によく行くんですよ。“めし”の話をしたら林芙美子の話に広がって、フェミニズムの話とかも普通によくするんです。柚木さんになら僕が思ってるようなことも含めて書いてもらえると思って、そこからトントン拍子に進んだ感じです。

ーもともとインストと歌ものの境界もないし、環境音とか朗読とか、いろいろなアイデアが詰め込まれていますよね。

福原:基本的に悠太くんに最終決断を委ねるんです。僕はアイデアがポンポン出てくるタイプだけど、逆にそれですごい悩んじゃうので、それに対して悠太くんが乗ってきたら採用というか、悠太くんがやりたいことが僕のやりたいことかなって。

“めし”が一番そうだったかも。「本当はアルバムの最後の方にバラエティーっぽい感じで入れた方がいいと思うんだけど、2曲目に持ってきたらいい感じがするんだよな」と思って相談したら、「2曲目でしょ。だって声から声だし」みたいに言われて。

―たしかに、1曲目の“a one”もいろんな人の声をフィーチャーしてますもんね。

福原:アルバムを作る途中で思ったのは、曲というものはこの数年で出会った人とか起きた事柄に作らされるものだなって。「あれはやりたくない、これはやりたくない」でできたものが自分なんじゃなくて、そのときの状況によって、もともと自分の中にあったものから選び取らされる。

それこそが自分たちらしさなのかなと思って、だから1曲目“a one”には自分たちの周りにいるいろんな人の声を入れたり、そういうことがアルバム自体のテーマになった気がしますね。

ー話を聞いてみると、アイデアは音くんが出すけど、フィクサーは悠太くんなのが面白い(笑)。

福原:一回怖いこと言われたことあります。「音くんが面白い曲を作らなくなったら見限ろうと思ってた」みたいな。こいつ怖! と思って(笑)。

細野:それは怖いなあ。

福原:でもこういう話をしても本人覚えてないんですよ。だから僕がわがまま言ってるようで、実は悠太くんが筋道を立ててる感じですね。

ー悠太くん的に思い入れの強い曲を一曲挙げてもらうとどうですか?

細野:“スタンダード”かな。

福原:本当? 意外だった。

細野:“スタンダード”も結構昔に作った曲で、5年ぶりぐらいに録った曲ではあったんですけど、その曲に(野村)卓史さんのシンセとか、いろんな人の音を入れられたのは感慨深いなって。

ーホーンを入れるのはもともとやりたいことだった?

福原:僕は今回ホーンは禁じ手にしようと思ってたし、“スタンダード”ももともと歌もので、僕が人生で初めて作った曲だから、普通に自信ないし、アルバムに入れる気もなかったんですよ。自分の中ですごく大事な曲で、弾き語りとかでもやってて、でもアルバムに入れるならインストにしなきゃいけないから、どうしていいかわからなくて。

この曲“フランキー堺”っていう仮タイトルだったんですけど、悠太くんから「もちろん“フランキー”はアルバムに入れるよね」って言われて、「いや、入れません。あの歌詞を僕は人前で歌えないから」って言ったら、「インストにできるでしょ」って言われて、何かアイデアがあるのかなと思ったら、この曲に関しては本当になくて(笑)。でも結果的にはすごくいい形にまとまってよかったです。

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