近年のCorneliusのアンビエント的楽曲を収めた作品集『Ethereal Essence』。そのリリースのアナウンスに触れた際、意外な驚きがあった。
アンビエントポップを意識したアルバム『夢中夢 -Dream In Dream』(2023年)や、『AMBIENT KYOTO 2023』への参加、あるいは近年のアンビエントリバイバルの背景を考えれば自然な成り行きとも思えるけれど、Corneliusはアンビエントに対して慎重な距離感を保っていたようにも感じていた。
本稿では、Cornelius=小山田圭吾がどのようにアンビエントミュージックに親しみ、その音楽性に取り込んできたかについて話を訊いている。そしてそれは同時に、ミニマルミュージックを通過した独自のサウンドデザインの美学を紐解くことにもつながっている。インタビューは旧知の間柄で、『STUDIO VOICE』の元編集長・松村正人を聞き手に迎えて実施。共通の友人である中原昌也の話をひとしきりし終えたところで、取材は和やかにはじまった。
INDEX
これまでCorneliusは、どのようにアンビエントを意識してきたのか?
―Corneliusとしてアンビエント的な楽曲を制作するようになったきっかけを振り返ると、どういったところだったのでしょうか。
小山田:企業CMだったり、商業施設の音楽、『デザインあ』みたいなテレビ関連の音楽、ウェブ系の広告とかでアンビエント的な曲を作ることが多かったんですよね。そういう機会では映像とか、視覚情報があるので音楽でそこまで説明する必要がないし、本当に背景の音楽として作っていました。
―『AMBIENT KYOTO 2023』で販売された小山田さんのカセット作品『Selected Ambient Works 00-23』に入っているのは『POINT』(2001年)以降の楽曲ですが、『POINT』以前 / 以降といった意識はご自分のなかでも明確にありますか?
小山田:そうですね。『POINT』以降は基本のスタイルをその時々で変えていく、みたいな感じになりました。
―そこから少しずつ変遷していきますよね。『POINT』と『SENSUOUS』(2006年)も違うし、『Mellow Waves』(2017年)も全然違う。その変化というのは、その都度作っているときの気持ちの変化ということですよね。
小山田:時代だったり、自分の状況だったり。
―そのなかでアンビエント的な響き、ミニマルな感覚というのは、パラメータとしてどれくらい意識されてきたのでしょうか?
小山田:常にうっすら入っている感じはありますね。
―アンビエントミュージックにおけるCorneliusのあり方として、何か意識されることはありますか?
小山田:何ですかね……「静閑」とか、あとは音の響き、サウンドのテクスチャーが重要というか。アンビエントって旋律やリズムよりも、テクスチャーが前に出てくる音楽だという気はします。今回、自分のアンビエント的な楽曲をまとめたとはいえ、元がポップスの人間なので、どうしてもポップス的な構造になってるなと作ってみて感じますけどね。
―そんなに「アンビエントミュージックを作っている」という自己認識はあまりない?
小山田:純粋なアンビエントミュージックではないとは思いますね。