日本中を熱狂させた話題作『VIVANT』(TBS系)が3年ぶりに帰って来た。
表の顔は冴えないサラリーマンでありながら、裏の顔は自衛隊の非公認部隊「別班」の諜報員であった主人公・乃木憂助(堺雅人)の国をまたいだ壮大な冒険を描いた本作。
第1シーズンの第1話から第10話までの、タイムシフトを含む総視聴人数は6000万人を超え、『東京ドラマアウォード2024』では連続ドラマ部門グランプリを、『第117回ザテレビジョンドラマアカデミー賞』では最優秀作品賞をはじめ主要部門を多数受賞するなど、2023年を代表するドラマとなった。
満を持しての第2シーズンは、『半沢直樹』『下町ロケット』など数々の人気ドラマを手掛けてきた監督・福澤克雄が原作・演出・プロデュースとして続投し、堺雅人のほか、数多くのドラマや映画で主演を務める阿部寛、二宮和也、松坂桃李、二階堂ふみら豪華キャストも再集結した。
第2シーズンの第15話までについて、ドラマ・映画レビュアーのuriがレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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堺雅人主演の社会現象となったドラマが第2シーズンへ

日本中を熱狂させたあの壮大な冒険が再び動きはじめた。
2023年7月期に放送された日曜劇場『VIVANT』待望の続編がついに開幕。謎が謎を呼ぶ予測不能なストーリーやノンストップで駆け抜ける展開が多くの視聴者を惹きつけ、第1シーズンの最終回(第10話)世帯平均視聴率は19.6%を記録。社会現象と言えるほどの大きなムーブメントを起こし、近年のドラマ界に強烈なインパクトを残した。
これほどの熱狂を生み出す背景には日本のテレビドラマの常識を覆すような異例の試みがあった。第1シーズンでは架空の国である「バルカ共和国」を再現するため、モンゴルで約2か月半の大規模な海外ロケを敢行。続く第2シーズンでは、アゼルバイジャンやタイへとロケ地を広げ、さらなる臨場感と没入感を演出している。このような現地での撮影による映像の説得力が物語の迫力を一気に引き上げていると言えるだろう。
さらには、葬儀シーンにおける約4000人のエキストラを動員した大規模撮影をはじめ、CGなしで3000頭の羊と山羊を走らせる圧巻のシーンや、大量のパトカーの上をキャスト陣が実際に駆け抜けるアクションなどリアリティを追求する製作陣の熱量が、唯一無二のエンターテインメントへと作品を昇華させている。
第2シーズンは日曜劇場枠で初となる異例の2クール(3か月間、四半期の放送期間)連続放送を実施。より多くの人々を熱狂の渦に巻き込みながら、テレビドラマの歴史を塗り替える一作となりそうだ。
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AI描写などに見る過去の映画へのオマージュ

第1シーズンの最終回・第10話直後からはじまる第11話では、父であり世界規模の秘密組織「テント」指導者のノゴーン・ベキ(役所広司)との決着をつけた主人公・乃木憂助(堺雅人)のもとに新たな任務が届く場面から物語は動き出す。乃木が世界医療機構の医師・柚木薫(二階堂ふみ)、第1シーズンの舞台となった国・バルカの少女・ジャミーン(本間さえ)と再会を果たす裏で、乃木の弟分である黒須駿(松坂桃李)を含む5人の別班員が拉致される事件が起こる。第2シーズンからの新キャラクター・AIハヤト(声:高山みなみ)が導き出した容疑者は、元々は警視庁公安部に所属し、実はテントのモニター(=スパイ)であった新庄浩太郎(竜星涼)だった。乃木と協力者・ドラム(富栄ドラム)は新庄が潜伏するタイへ行き、「別班流」の尋問を新庄に仕掛けるが、新庄は海外へ逃亡しただけで別班員の拉致事件とは無関係であった。
この完全無欠に見えるAIハヤトのミスは、映画『ミッション:インポッシブル デッドレコニング』および『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』で最大の敵となった「エンティティ」の危うさを彷彿とさせる。「エンティティ」は、あらゆるネットワークに潜り込んで世界中のあらゆるデジタルインフラやシステムを掌握し、世界の均衡を揺るがす自我を持ったAIだった。AIハヤトも同じくAIだ。今回のミスは偶然なのか。予期しないエラーや人間の悪意ある画策により、これから新たな脅威となる可能性を秘めているのかもしれない。
このように、本作は過去の映画へのオマージュが随所に感じられる。たとえば、ドラムなどのキャラクターは『スター・ウォーズ』シリーズからの、また、第1シーズンの第3話で「死の砂漠」をラクダで横断中に仲間の一人(薫)を見失い、探しに戻る一幕は映画『アラビアのロレンス』のオマージュであると原作・演出・プロデュースを担当する福澤克雄も明かしている(※)。また、第2シーズンでは、別班の隠し部屋に陳列した拳銃や、新庄がタイへ逃亡を図る際につけていた変装用の顔マスクなどのギミックからは『ミッション:インポッシブル』(『スパイ大作戦』)シリーズや『007』シリーズなどへのオマージュも感じさせる。こうした過去の映画を思い起こさせる演出も、見る者の胸を熱くさせているのだろう。
※【VIVANT】福澤監督に聞く「スター・ウォーズ」ほか「VIVANT」に込めた名作映画へのオマージュとは? – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=o9Wb-suGJEI
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野崎(阿部寛)の気になる動き……第15話までの「謎」を整理する

『VIVANT』といえば、放送終了後にSNSを中心に繰り広げられる「考察合戦」も視聴熱を高める要因となっているだろう。『あなたの番です』(日本テレビ系 / 2019年)を皮切りに、「考察」を意識したコンテンツが増えている昨今。『VIVANT』も、令和を代表する「考察ドラマ」と言えるだろう。しかし、福澤克雄は「考察がこんなに出てくるドラマになると思ってなかった」と語っている(※)。作品の中に意図的に配置された余白や、回を追うごとに謎が増していくスリリングなストーリーが、視聴者の考察欲を掻き立てているのかもしれない。
※宮崎陽平(本作演出)によるXの投稿 / X:https://x.com/ist_yohei/status/1694996097733980430
ここで、第15話までの「謎」を整理してみよう。
第14話で新庄はベキの脱獄を手引きした罪から「あなたはもう、光のもとで生きられません」と乃木に告げられる。乃木の言葉を受けた新庄はタイ警察による護送中に拳銃を奪って逃走、それを追うタイ警察との銃撃戦の中で身体に多くの銃弾を受け、搬送された病院で命を落としてしまう。しかし、護送前に新庄の首元に付いていたピンク色のガムのようなものが歯や顔などの型を取る印象材に似ていることや、日本へ移送された新庄の遺体が、新庄の元上司で公安部部長・佐野(坂東彌十郎)による判断で検死を回避されたことからも、新庄の死にはまだ秘密がありそうだ。

また、新庄の無実発覚後、更なる捜査の結果、別班の情報を売ったのは新庄の先輩で公安の野崎守(阿部寛)だと判明する。野崎がつながっていたのは、中国版の別班「Xinxi(シンシー)」の責任者ハン・リンシン(宮下今日子)だった。ハンは、別班の存在を証明した野崎を歓迎しながらも「孤児院」などテントの情報を執拗に聞き出そうとする。シンシーが野崎を仲間に迎え入れた真の目的はテントの情報を得るためなのかもしれない。別班拉致事件の背景にはテントへとつながる重要な真相が隠れていそうだ。
さらに、第15話では公安部長・佐野により、野崎が別班の拉致に関与したのはシンシーへの潜入捜査の一環だったことが明かされる。さらに、公安内部にシンシーが仕掛けた大量の隠しカメラが設置されていたことも発覚。これにより、第12話で野崎が「ブルーウォーカー」こと太田梨歩(花岡すみれ)に顔や声を隠すよう促したのは彼女を守るための提案であったことも判明する。ということは、第11話で野崎が乃木の伯父である乃木寛道(井上順)と密会していたことも、この先に待ち受けるであろう乃木の窮地を救う一手となるのかもしれない。
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「何が正義か、何が悪か」大きな渦の行方は

「“π”のような永久に割り切れない世界に身を置いている。何が正義か、何が悪か、永久に答えが出ない世界だ」
第15話で野崎がバルカ警察のチンギス(バルサラハガバ・バトボルド)に打ち明けたこの言葉のように、本作は、「正義」と「悪」が混濁した世界に身を置く登場人物たちを通して「何が正義か、何が悪か」という答えの出ない問いに向き合い続けていく物語である。
作中では、乃木が所属する自衛隊の非公認部隊「別班」が国防のために非情な制裁を下す一方で、世間からは「テロ組織」とされていた「テント」が犯罪行為で得た資金でバルカ共和国において孤児救済を行っていた。
圧倒的なスケール感とスリリングな展開の中で「何が正義か、何が悪か」という普遍的なテーマを問い続けることも、多くの視聴者の目を離さない魅力になっていることだろう。

第15話では、佐野部長の証言により野崎の裏切りの理由が明かされ、過去に野崎の下で働いていた2人のエージェント、リュウ・ミンシュエンとチョウ・ケイシの名前が挙がったところで幕が閉じる。野崎の目的とは一体、何なのか。はたしてそれは正義なのか、悪なのか。野崎が言うところの「大きな渦」の行方をしっかり見届けたい。乃木の冒険はまだ始まったばかりだ。
日曜劇場『VIVANT』

TBS系にて毎週日曜よる9時から放送中
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/