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SNSから離れ、1日を睡眠・音楽・娯楽に3分割して制作 DOMi & JD BECKインタビュー

2026.8.31

#MUSIC

現代の私たちは、スマートフォンやSNSがもたらす情報の濁流の中で、つい「自分のペース」を見失ってしまう。

Z世代を代表する超絶技巧のデュオ・DOMi & JD BECKが約4年ぶりに放つ新作『WHO ASKED?』は、そんな社会のスピード感から意図的に距離を置き、純粋に「自分たちのための音楽」を極限まで突き詰めた末に産み落とされた。

アメリカ・テキサス州のダラスでのミニマルな生活、数か月に及ぶ狂気的な楽譜制作、そしてアンサンブルの「錨」として自身の脆い声を導入するまでの過酷なプロセス。他人の評価や期待を一切遮断し、絶対的な自信とピュアな遊び心で我が道をゆく2人の現在地に迫った。

「8時間睡眠、8時間音楽、8時間娯楽」。自分をコントロールし「余白」を作る

DOMi & JD BECK(ドミ・アンド・ジェイディー・ベック)
2018年のNAMMショーでの出会いを機に結成された、ドミ(Key)とJD・ベック(Dr)による2人組ユニット。SNSでの演奏動画をきっかけに即座に高い評判を呼び、ハービー・ハンコックやサンダーキャットなど数々の名だたるアーティストと共演を重ねる新世代デュオ。2020年の「Adult Swim Festival」でアリアナ・グランデらと共演したほか、シルク・ソニックのシングル「Skate」を共作し大きな話題を呼ぶ。2022年にはアンダーソン・パーク主宰レーベル「APESHIT Inc.」および名門「ブルーノート・レコード」と契約し、デビュー・シングルをリリースした。

ー前作の後、SNSから少し距離を置き、ダラスで「8時間睡眠、8時間音楽、8時間娯楽」という規則的でミニマルな生活を送っていたそうですね。現代の私たちはスマホやSNSのスピード感に疲れ、「自分のペース」を見失ってしまうことがよくあります。この生活スタイルは、あなたたちの心の平穏や、音楽をつくるモチベーションにどんな良い影響を与えてくれましたか?

DOMi & JD BECK:スマホやSNSなんかに邪魔されないようにしていて。音楽を作ることが地球上で一番好きなことだから。

結局のところ、「自分をコントロールすることができるかどうか」は自分たち次第。8時間しっかりと仕事をして、8時間たっぷり寝たとしても、まだ毎日8時間も自由な時間が残っていて、好きなことができる。

とはいえ、アルバム制作のためにこれほど細かくスケジュールを組んだのは、初めてのことで。4か月で、アルバムにおけるすべての「音符とリズム」を楽譜作成ソフトで書き上げたり、本当にたくさんのことをやることができました。

マイナス面を挙げるなら、頭をリフレッシュさせるための十分な「休み」の重要性に気づいていなかったことで。2年間ぶっ続けでやったせいで、完全に燃え尽きた時もあって、良い教訓になりました。

ー過去に「音楽が金儲けの道具になっている現状を変えたい」と語り、今作を「完全に自分たちのために、利己的に作った」とおっしゃっていましたね。純粋な楽しさを守り抜き、他人の目を一切気にせず「これで完成」と決断を下すために、日々の生活や制作で意識しているマインドセットを教えてください。

DOMi & JD BECK:僕らは直感に従って、道徳的に正しくないと思うことから距離を置くようにしていて。特定のルールがあるわけじゃないけど、大抵は直感で「これだ」ってわかる。

でも、「これで完成だ」と決断するのは、僕らにとっても常に戦いで。今回の制作で学んだのは、何度も試してうまくいかない時はもっと早く方向転換しなきゃいけないし、1つのアイデアに固執しすぎないように、十分な「余白」を作らなきゃいけないってことです。

2年間の過酷な制作と燃え尽き。完璧な計算の中に宿るピュアな遊び心

ー今作は事前に楽譜ソフトで音符とリズムを書き切り、肉体的な手癖を排除するストイックなプロセスだったとおっしゃっていましたね。極限まで「完璧な計算」を突き詰める2年以上の過酷な作業の中で、ストレスをどう乗り越えて、メンタルのバランスを保っていたのか教えてください。

DOMi & JD BECK:制作を始めた2024年は、ストレスフリーで最高にクリエイティブな1年だったから、それだけでも価値がありました。でも、次の2025年はずっとストレスを抱えたままで。メンタルなんて全然保ててなかったし(笑)。

・2024年2月中旬〜6月中旬:Sibelius(楽譜作成ソフト)での作曲
・2024年8月〜10月:JD(ベック)がドラムを、ドミがキーボードを録音
・2024年11月〜12月:テイクとサウンドの選定
・2025年1月:DOMiがチェレスタを録音
・2025年2月〜3月中旬:ザック・ヒルとのサウンドデザイン
・2025年3月8日〜4月10日:オーケストラ奏者を1人ずつ録音
・2025年4月中旬〜6月中旬:オーケストラの編集
・2025年7月:作詞
・2025年8月〜9月:ボーカルを録音
・2025年9月〜10月:ボーカルの選定・プロデュース(途中で『SUMMER SONIC』に出演するため2週間日本へ)
・2025年10月〜11月:最終調整
・2025年12月〜2026年3月:ミキシング / マスタリング

ー2人で1つの巨大で複雑なパズルを作り上げるような作業だったと思いますが、制作中にお互いの意見がぶつかったり、苛立ったりすることはありましたか?

DOMi & JD BECK:なぜか僕らは常に同じ波長にいるから、お互いにイライラすることは全くなくて。

ミックスの時にJD(ベック)が「もっとドラムの音を大きくして」って言ったり、ドミが「ここの私のソロ、もっと前に出して」って主張したりする時くらいです(笑)。

ー完成したアルバムには、ゲーム音楽のようなワクワク感や、“EXiT”のようなグリッチ感など、ピュアな「遊び心」がたっぷり詰まっていますね。ストイックに「完璧」を目指す作業と、子供のように「ふざけて楽しむ心」を両立させるための、2人なりの秘訣は何ですか?

DOMi & JD BECK:僕らの音楽に対する最高に素敵な表現ですね、本当にありがとうございます。

なぜそのコード進行が好きなのか、なぜそのフレーズを加えるのか、なぜこの変な拍子が心地よくてグルーヴィーに感じるのか、自分たちでもさっぱりわからなくて。

でも、自分たちの耳と直感に従って、自分たちが心地よいと感じるものを追求することを決してやめない。僕らは「居心地の良い場所」から抜け出して、自分たち自身を驚かせるのが大好きなんです。

人間の声はカオスのための「錨」。複雑な拍は数えるよりも感じる

ー今作は、ほぼ全曲で2人のボーカルが収録されていますね。「自分の声」という、とても人間らしくて脆い部分をあえて見せることに、ためらいや恥ずかしさはありましたか?

DOMi & JD BECK:作曲しているうちに、僕らの楽曲って実はほとんどが「Aメロ、Bメロ、サビがあって、ブリッジ(展開部)からアウトロへと向かう」という典型的な構成で、すごくシンプルだってことに気づいて。

それなら「自分たちの声で歌おう」って、自然な流れでそうなりました。人間の声って一番古くからある楽器だし、人とダイレクトに繋がれる手段だから。

ボーカルはメロディーと歌詞を伝える役割があるから、どうしても注目が集まりがちだけど、僕らの意図はボーカルを主役にすることじゃなくて、アンサンブルがもたらすカオスのための「錨」として、役割を果たしてほしくて。

人間の声も独自の音色や質感、能力を持っていて、他の楽器と同じ「1つの楽器」。声を使って探求するのは楽しかったです。

ー複雑なコード進行や変拍子の上で歌う“CLiMBiNG HiGH”などは、演奏しながら歌う難易度も相当なものだと思います。ボーカルというアプローチは、2人のグルーヴにどんな新しい感覚をもたらしましたか? また、今作では“RAiN”や“SMALL EYES”のように具体的な言葉でパーソナルな想いを表現する「作詞」のプロセスも加わりましたが、それによってお互いの関係性に何か変化はありましたか?

DOMi & JD BECK:技術的な面で言うと“PUZZLE PiECES”のボーカル録音は本当に難しかった。変拍子なだけじゃなくて、曲中でボーカルの音程が大きく跳躍するから。でも、その過酷な作業のおかげで、拍は「数えるよりも、感じる方がいい」っていう確信がさらに深まりました。

https://youtu.be/bUUZmia_BAw

DOMi & JD BECK:関係性の変化については、僕らはお互いのことをもう知り尽くしてるから変化は何もありませんでした。

「他人がどう思うか」はすべて遮断する。『WHO ASKED?』なマインドセット

ーアルバムタイトルの『WHO ASKED?』は、「誰もそんなこと聞いてない=他人の意見なんて知ったこっちゃない」という痛快な意味を持っているように感じます。他人の評価を気にすることはなく、絶対的な自信を持って「自分たちが作りたいもの」を貫けるのはなぜですか?

DOMi & JD BECK:「他人がどう思うか」なんて考えは、本当にすべて遮断しようとしたんです。

ドラムンベースのファンはポップなボーカルを気に入らないかもしれないし、ジャズやクラシックのファンはディストーションを嫌がるかもしれない。ポップスのファンは今作のようなスピード感やハーモニーが苦手かもしれないし、前作『NOT TiGHT』(2022年)のファンはただ『NOT TiGHT』の続編を求めているかもしれない。

https://youtu.be/IBAJCUcxQlE

DOMi & JD BECK:だから、最も純粋な作品は自分自身のために創ることから生まれると信じて、自分たちがその時に作れる「最高のものだ」と心から思えるものを作ることに集中しました。すべての人を満足させることなんてできないから。

ただ、いざリリースされると「自分たちのキャリアを台無しにしちゃったかな」って不安になる瞬間もあります(笑)。

ー『WHO ASKED?』というスタンスを貫くためには、周囲に流されない強さと、2人の絶対的な信頼が必要だと思います。もし2人の間で意見が割れたときは、どのように解決しているのですか?

DOMi & JD BECK:意見が割れるとしたら、10回あったら10回とも、僕らが一歩引いて全体像を見れていないのが原因で。同じ音楽を長く聴きすぎたり、同じ作業を長くやりすぎたりすると、冷静に考えられなくなってしまう。次の日にフレッシュな状態で戻ってくるのが、常に最善の解決策だと思うんです。

自分たちの脳をどうコントロールすればいいのか本当のところはわからないし、頭の中で起きていることはすごくミステリアスだから、何度もリセットしなきゃいけない。

ー明日からすぐ実践できる『WHO ASKED?』なマインドセットがあれば教えてください。

DOMi & JD BECK:自分のために行動すること。新しいことに挑戦して、安全な場所から思い切って抜け出すこと。自分の強みを見つけて、それをさらけ出し探求すること。

ワクワクすることと幸福感こそが一番大切だから、たとえ直感に反するように思えたとしても、それを最優先するのを忘れないで。

自分が選んだ人生を心から楽しんでいると、心に余裕が生まれてポジティブになれる。そうやって自分が幸せでいることが、結果的に自分自身や他人を愛し、思いやることにも繋がるんです。

DOMi & JD BECK『WHO ASKED?』

SHM-CD:UCCQ-1230 ¥3,300(tax in)
https://domi-jdbeck.lnk.to/WhoaskedPR

収録曲:
01.エピファニー/EPiPHANiE
02.ハド・イナフ/HAD ENOUGH
03.イグジット/EXiT
04.シルエット/SiLHOUETTE
05.グローイング・オールダー/GROWiNG OLDER
06.サム・シングス・ネヴァー・チェンジ/SOME THiNGS NEVER CHANGE
07.レイン/RAiN
08.スモール・アイズ/SMALL EYES
09.ラヴリー・マスカレード/LOVELY MASQUERADE
10.パズル・ピーシズ/PUZZLE PiECES
11.ファントム・スレッド/PHANTOM THREAD
12.アウト・オブ・シンク/OUT OF SYNC
13.コンサルティーノ (フォー・ピアノ、ドラム&オーケストラ)/CONCERTiNO (FOR PiANO, DRUMS & ORCHESTRA)
14.クライミング・ハイ/CLiMBiNG HiGH
15.エピローグ/EPiLOGUE

来日公演情報

東京 12月15日(火)豊洲PIT
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS|オールスタンディング9,900円(税込・別途1ドリンク) ※未就学児入場不可
<問>クリエイティブマン 03-3499-6669

大阪 12月17日(木)Yogibo META VALLEY
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS|オールスタンディング9,900円(税込・別途1ドリンク) ※未就学児入場不可
<問>キョードーインフォメーション 0570-200-888

愛知 12月18日(金)名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS|オールスタンディング9,900円(税込・別途1ドリンク) ※未就学児入場不可
<問>名古屋クラブクアトロ 052-264-8211

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